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The ALFEE "天地創造"から学ぶ”最後の晩餐”いろいろ その1

みなさん、”天地創造”聴きました? まだの方はぜひぜひお近くのCDショップでお買い求めください!最高傑作、と高見沢さんが発売前に宣言した通りの楽曲、アレンジ、演奏、歌、どれもが素晴らしいものです!

通常盤+特典がそれぞれ違う3形態が発売されていて、どれもジャケットがアルフィーらしくて素晴らしい!(↓Universal Music Japan様からお借りしました)

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先日の配信番組、Come On ALFEE season 4 の天地創造スペシャルでも高見沢さんが解説されていましたが、↑この限定盤Cの”最後の晩餐”の風景を思わせるジャケットはお3方の写真を取り込んだAIによって創られたデジタル画です。もちろん全体を作り上げたのは(どなたか存じ上げないのですが、すみません)デザイナーさんで、その隅々に色んな小物やそれにまつわる意味が隠されているようです。

奇遇ですね!!! 私はアメリカの高校で歴史を教えているのですが、専門分野は中世からルネッサンス期なんですよ!なので、このジャケットを見た時から

おおおおぅぅぅぅぅ! これは色々と考察したい! 

と思っていました。ので、今日はこのパロディジャケットから色々学んでいきましょう。ただのパロディじゃないよ、アルフィー愛満載のパロディジャケットです!

カモアルでも語られなかった隠された意味と愛をザックザック掘り起こしていきますよ〜

”最後の晩餐”とは

まず、”最後の晩餐” と聞くと15世紀の終わりに描かれたダビンチの作品が思い浮かぶと思いますが、このモチーフはダビンチ以前からとてもポピュラーなものでそれ以前の美術品にもよく登場します。

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12使徒とキリストがずらりと横並びになった構図が多いですが、丸テーブルを囲んでいたりするものもあります。奴隷となっていたユダヤ人が、モーゼの助けでエジプトから脱出した(出エジプト)ことをお祝いするパスオーバーの食事で、キリストが処刑前夜に裏切り者の存在を告白したり血(ワイン)と肉(パン)を使徒に分け与えたのちに、自らタライに水を入れ使徒たちの足を洗う、という話の場面を切り取ったものです。よく目にする絵画のほとんどは銀貨30枚でキリストを売った裏切り者(ユダ)のことを告発し、まわりが驚く様子を描いたものです。

でも、ダビンチの作品はアルフィーさんの”最後の晩餐”とはあまり似ていないですよね・・・・では”天地創造”のジャケットはどなたの”最後の晩餐”がベースになっているのでしょうか。

ベースになった17世紀の作品

フェリッペ・ド・シャンパーニュ(Phelippe de Champaigne)の”最後の晩餐”が全体像のベースになっています。ダビンチの作品から150年後の17世紀中頃に描かれた本作はリヨン美術館で見れますよ。

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お3方のポーズ、衣装の色や構図、卓上のワインの杯、テーブル前の水瓶やテーブルクロス(アルフィーのはユニオンジャック)のシワなどが一致しますね。

AIさんとデザイナーさんは、ここから色々と省いたり付け加えたりしてジャケットを作り上げたと推測します。

私はこのジャケットを見た時に”よくぞこれを選んだ!デザイナーさん!” と嬉しく思いました。というのも、この作品の人物はとても生身の人間っぽく描かれていて、その驚きと喧騒や空気感まで伝わるような傑作だからです。頭の上のHalo(光の輪っか)もないし、人物全員が均等にリアルに描かれているのも素晴らしい。それでも自然に真ん中の3人に焦点が当たるのもアルフィーっぽいではないですか!

背景は16世紀に描かれたこちらから

上の作品の背景は人物と物語を引き立てるために暗く、細かな描き込みもありません。アルフィーさんバージョンはそれに違う”最後の晩餐”の背景を取り込んで合成・編集してあります。

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16世紀の半ばに書かれた スペイン画家のフアン・デ・フアネス(Juan de Juanes)による”最後の晩餐”は背景の窓、柱やカーテンが同じですね。

デザイナーさんはお3方の後ろに向こう=未来が見える背景を描きたかったのだと思います。ストーリーの広がりを思わせる窓や暗い室内と対比した明るい青空を加えることで、アルバムのテーマの1つである”新しい世界”を見せてくれているのかな、と思いました。

これまでの2枚の絵には大きな水差しとタライもあり、食事後にキリストが使徒たちの足を洗うシーンが続くことがわかります。

おまけ:内側のシーンは18世紀の絵画

ジョバンニ・バッティスタ・ティエポロ (Giovanni Battista Tiepolo)の”最後の晩餐”。18世紀を代表するベネチアに深く関わりのあるイタリア絵画の巨匠です。ルーブル美術館所蔵のこの絵には犬が描かれています!

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↑ほら、白黒のワンちゃんが中央下で誰かのローブを引っ張っています。

似たような白黒のワンちゃんがこのアルバムカバー内面に登場しますね。配信で桜井さんが”ビールを狙ってるのかな”と言ってたワンちゃんです。(手元に公表できる写真がなくお見せできずすみません)

アルフィーさんのワンちゃんは何も引っ張っておらず、テーブルの下から出てきてちょっと斜め上を見上げているのですが、それにも意味があるような・・・。というのも、このティエポロさんのワンちゃんがぐいぐい引っ張っているのは”裏切り者”なのではないかな、と思うからです。

色んな画家が描いた”最後の晩餐”を比べて見るのが面白い理由の1つは”ユダはどいつだ!”と探すのが楽しいからです。それぞれの表現方法で”裏切り者”のヒントが描かれていて、聖書の話をよく知らずとも これかな〜 と考えるのは宝探しのようで面白いのです。1枚目と2枚目の”最後の晩餐”にももちろんユダがいますので探してみてくださいね!

で!アルフィー版のワンちゃんは何も引っ張っていない、というのがいいですね!だってアルフィーさんは世界一の仲良し3人組ですからね。裏切り者はいない!

そして私はデザイナーさんが 15, 16, 17, 18世紀と、広がった時代の絵画を使われたのも(意図的ではないにしろ)いいな〜と思うのです。その芸術的な普遍性や長きにわたり愛されている事実や音楽の幅や多様性なんかもまるっと表現しているようではないですか。まさに長寿バンド、The ALFEE!

どなたか存じませんが、100万パチパチを贈りたい!ありがとうございます。

その2は出てくる小物についての考察・解説ですよ〜!もっとザックザック行くよ〜!

シマフィー 

*著作権について:これを読んだ皆さんのなかには”あれ、他の画家の作品をパロディにして怒られないの?”と疑問が浮かんだかもしれませんね。作者の死後50−95(国・種類によって違う)年たった作品には稀な場合を除いて著作権はありません。ちまたで売られているモナリザのパロディとかもこれに当たります。この全ての絵画は著作権のないパブリックドメインからのもので、自由に参考・使用出来るものです。詳しくはこちらのサイトで簡単に説明されています。

*”天地創造”以外の画像の全てはWikimedia Commons からです(パブリックドメインです)



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