極寒の中、便器を抱えながら「もう独りはイヤ」だと思った。
死を目前にしたとき、人は己の最も内側に潜んでいる本音に気づく。
「どうして死ぬ前に〇〇しなかったんだろう」
「このまま〇〇しないで死んでしまうなんて」
元気なときは、すっかり忘れている欲望。願望。希望。
私の場合、それは「結婚」だった。
「女」を売ることの限界四十五歳の冬。自宅のトイレで便器を抱えた私は、死ぬほどの苦しみと戦っていた。当時、物書きの傍ら潜入取材としてホステスのバイトをしており、この日は飲み過ぎてしまったのだ。
女子大生の頃から、お金に困るたび「手っ取り早