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人間の可変性を最大化させる/森 一貴さん

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第2回の講義noteです。


森 一貴さんについて

1991年山形県生まれ。東京大学卒業後、東京のコンサルティング会社を経て、福井県鯖江市のプロジェクト「ゆるい移住」を機に、同市へ移住。
「社会に自由と寛容をつくる」がテーマ。福井県鯖江市を舞台に、Capability=人間の可変性を最大化する営みを探索されている。来年よりPublicとDesignをフィールドに大学院に進学される予定。
https://note.com/dutoit6

これまでの取り組み

● RENEW
https://renew-fukui.com/about/

「RENEW」は、福井県鯖江市・越前市・越前町で開催される、工房見学イベント。会期中は、工房・企業を一斉開放し、見学やワークショップを通じて、一般の人々が作り手の想いや背景を知り、技術を体験しながら商品の購入を楽しめます。

<ポイント>
・「産地のエンパワメント」につながるイベント
地域の人たちにとって、人が訪れ、反応を直接感じられることは、内発的動機につながる。お客さんと接して、喜ぶ反応を目にすることで、「まだやれるかも」「もっと何かできるかも」と確信できる。例えば、自分の代で工房を閉じようと思っていた人が、「もっと頑張ろう」と変わるきっかけになるなど、”持続的で内発的な動機”が生まれる。

・日本最大級のイベントに発展し、出場者数32,000人、30名以上が移住、5年間で工房・店舗・宿など26社がオープンという結果。


● ゆるい移住
http://sabae-iju.jp/
・半年間、家賃無料。何をしてもいい移住プログラム。
・複数候補があるうち、どの都市に行くことになるのかは決められない。家具やネットは整備されていない。
日本には、「多様な生き方を、実験・模索するための場がない」という課題感から始まった。
”人生を模索できる余白のデザイン”


● ハルキャンパス
https://dutoit6.com/1174
・”ともにつくり、ともにまなぶ” がテーマの子どもたちのための学びの場
「何かやりたかったら、やっていいんだ!」ということを子どもたちに伝えることが目的
例えば、「YouTuber Project」。子どもが「将来なりたい職業としてあげたユーチュバー」にいつかじゃなくて今やろう!ということで、取り組んだ。

● 町の案内所としてのシェアハウス
https://liverty-house.com/directories/morihouse
・森さん自身が住みながら運営しているシェアハウス
・まちの関係案内所として、鯖江に初めて来た人を町や町の人々と繋ぐ出島としての役割がある。

【シェアハウス運営で大切にしていること】
「主客融解のデザイン(=無自覚な主体性を設計する)」
1. 案内しない、準備しない
2. 弱い、頼りないままでいる
3. ルールがない


消費者と生産者の二項対立を崩す「主客融解のデザイン」

この「主客融解のデザイン」で意識されていることが、とても良くて、取り入れていきたいスタンスだと感じました。

私は最近、コーチングスクールに通い始めたのですが、コーチ側をやっていると、「クライアントの想いを引き出したい」「コーチが頑張ろう」と、やや意気込むことがあります。
しかしコーチングは、双方の協力があって成り立つものなので、一方が過剰に主体性を持ちすぎると、良いセッションにはなりません。
そんな時に、コーチが「準備しすぎない」「弱さもさらけ出す」「ルール/既存の進め方に縛られない」といったことが大切になる気がしていて、森さんのおっしゃっていたスタンスは、「そのまま使える!」と感じました。こういったゆるさや余白がないと、固定観念に縛られたコーチングになってしまいますしね…!


余白の多いデザイン

そう。森さんのプロジェクトは、全て余白がたっぷり取られているのが印象的です。大きな枠組みだけ用意して、利用する人々は中で超自由に振る舞えます。
何をしても良い「ゆるい移住」、子どもたちがやりたいことをやれる「ハルキャンパス」、地元のあらゆる産業が参加できる「RENEW」。だからこそ、多様な人を巻き込むことができ、取り組みが広がったり、森さんの想定を超えるものが得られるんだろうな〜と思いました。
森さんが作られているものは、「協働的なまなびのプロセス」「無自覚な主体性の設計」「産地のエンパワメント(=持続的で内発的な動機をデザインする)」とすごく概念的なものが多く、それこそが「社会をデザインする」ということなんですよね。

私はどうしても、「自分の想定通りに着地させたい」「作り込みたい」という意識を持ちがちなので、もっと「余白をつくる」「手放す勇気を持つ(=他者を信頼する)」ということを意識的に取り入れていきたいと思いました。


無意識に教育を受けている状態をつくる

最後に、森さんが今後されたいことの一つとして、「Embedded Education」を挙げられていたことが印象的でした。
※Embedded Education=直訳すると「埋め込まれた教育」。教育を受ける側の人が無意識のうちに、教育されている状況を作り出すこと。

今まで森さんがされていたことは、どうしても尖った人/一部の人にしか届けられていない。もっと「家と職場の往復だけしているような人」に届けるにはどうしたらいいんだ?と考えられているとのこと。
これは、私もサービスを考える上でずっと悩んでいることです。「目的を押し出すと避けてしまう人」「それが必要だと気が付いていない人」にどうやってサービスを届けるのか?もっと具体的にいうと、「生き方に悩んでいるが、コーチングには抵抗がある人」にどうしたらコーチングのようなサービスを届けることができるのか?ということをずっと考えています。

その一つの解として、森さんが今考えられているのは、「目的に共感して集まる”目的のコミュニティ”」ではなく、「部活のように好きなことをベースにして集まる”関心のコミュニティ”」を作るということ。
この考えには、心から共感しました。私もそれを考え始めていて、「カフェ」や「クラフトワークショップ」といった切り口から、コミュニティを形成し、楽しい活動を通じて、「自分の生き方について考える人」&「生き方を考えるお手伝い」ができないかなあ?と模索しています。

まず6月に、東京の人形町でカフェをオープンさせる予定なので、本日のnoteを読んで興味を持っていただけた方がいらっしゃれば、ぜひ遊びに来てください!

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