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「レシートより領収書」という迷信~正しい領収書の保存方法~


はじめに

こんにちは、島田(@mshimada_tax)です。

いまだに飲食店のレジで、

領収書をください

と店員さんにお願いする人を見かけます。

その目的は経費にするため。

個人事業主であれ法人の経営者であれ、経費にすると税金を抑えられるので、その証拠書類として領収書は有効です。

ただ結論からいうと、それは無駄な行為である可能性があります。

つまり、店員さんが当初渡そうと思っていたレシートをそのまま受け取っておけば問題ないことが多いということです。

今回はその理由と、領収書の保存の注意点を解説していきます。

領収書保存の税法ルール

領収書の保存期間

まずは領収書の保存の基本ルールからおさらいしていきます。

受け取った領収書の保存期間は、個人事業主であれば7年(5年の場合もあります)、法人であれば7年(10年の場合もあり)が基本です。

会計ソフトへの入力が終わっても保管しておきましょう。

その後、税務調査が来た時に必要経費の根拠資料になります。

ただ、ここで注意していただきたいのは、領収書の存在が必要経費の要件にはなっていない、ということです。

なので、支払日、支払金額、支払先の住所や名称、商品やサービスの内容が確認できれば経費と認められる可能性はじゅうぶんにあります。

とはいえ、発行された領収書を意図的に破棄している場合は、仮装・隠蔽(いんぺい)行為に該当して多額のペナルティを払わなければいけない可能性があります。

領収書がなければ税務調査のときに疑われるのは事実なので、渡されたものは保存しておくようにしましょう。

所得税(法人税)と消費税の違い

ここまで話していた、領収書がなくても経費できます、と言う話は所得税(個人事業主であれば所得税、法人であれば法人税)の計算のルールです。

いっぽうで、消費税はちょっと違っていて。

インボイス制度が絡んでくるので話は少し複雑になります。

原則的には、帳簿とインボイス(正確な法律用語では「適格請求書」や「簡易適格請求書」といいます)がないと、消費税の計算で不利になります。

どういうことかというと。

消費税の原則的な計算方法は預かった消費税から支払った消費税を差し引くことで納税額が決まります。

計算式で表すと、

消費税の納税額=預かった消費税ー支払った消費税

です。

つまり、支払った消費税が多ければ多いほど消費税の納税額は少なるわけですが、この支払った消費税は要件を満たしていないと預かった消費税から差し引くことはできません。

その要件のひとつが、インボイスの保存です。

ですので、支払った消費税の証拠書類になるインボイスを破棄してしまうと、納税額が増えてしまいます。

税務調査では、インボイス(インボイス制度開始前は請求書や領収書など)の保存がされているか確認されます。

消費税でインボイスが不要の場合も

さらにいうと、消費税の計算であってもインボイスが保存されていなくても影響がないケースもあります。

簡易課税制度や2割特例を採用しているケースです。

あとは、少額特例が使えるならインボイスの保存がなくても消費税の計算で不利になることはありません。

この辺りの話は、こちらの記事で詳しく解説しているので、参考にしていただければと思います。


領収書を発行してもらうときの注意点

ここまでで、税法の世界における領収書の役割をお伝えしてきましたが、ここからはレシートや領収書の保存に関して、より具体的に注意点をお伝えしていきます。

結論としては、わざわざレシートとは別に領収書をもらうのはあまり意味がありません

理由は、領収書は正しい申告に必要な情報が欠落している可能性が高いからです。

もしレシート代わりに領収書を保存している人は、次の情報(消費税法上の記載事項)が書かれているか確認してください。

  1. 発行者の氏名又は名称とインボイス登録番号

  2. 日付

  3. 商品やサービスの内容

  4. 金額

  5. 適用税率(簡易適格請求書の場合は5又は6)

  6. 消費税額(簡易適格請求書の場合は5又は6)

  7. 書類をもらう側(支払側)の氏名又は名称(簡易適格請求書の場合は不要)

重要なのは、レシートの代わりに領収書を発行してもらったときに、これらの情報が網羅的に記載されているかどうか、です。

レシートはインボイス制度開始にあたって、レジシステムや会計システムで印字対応している可能性が高いです。

が、別途発行してもらう領収書が手書の場合は、これらの情報が漏れている可能性があります。

つまり、必要経費の証拠書類としての説得力が乏しかったり、インボイスの要件を満たしていなかったりするリスクがあるということです。

疑われやすい領収書

税務調査では次のような領収書は怪しまれやすいです。

  1. 日付がない

  2. 内容が不明

  3. 発行者の氏名又は名称がない

  4. 納税者の手書きが多い

特に、足りない情報を納税者が後から手書きで追記している場合は、税務調査官の心象としてはあまりよろしくありません。

それなら、既に印字済みのレシートを受け取って保管したほうがよっぽど安全です。

というか、そもそもレシート=領収書です。

レシートとは別に領収書を発行してもらう必然性がなければ、レシートをそのまま受けとった方が得策だと思います。

まとめ

インボイス制度の開始で、より領収書や請求書の保存に関して、IT化などシステマチックな対応が必要になったのは事実です。

あとは、電子帳簿保存法もそうです(蓋を開けてみると、あまり影響のない改正となってしまいましたが)。

であれば、なおさらシステムで出力されたレシートのほうが必要情報が担保されている可能性が高いので、今回紹介した記載事項が保存してある書類に書かれているか、今一度確かめていただければと思います。

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