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3つのギャップを知って「対話」の解像度を高める



最近、「対話」という言葉をよく目にしませんか?


「対話」と「会話」の違いを語るブログやウェブメディアは多く見られますし、仕事における「対話」の重要性も徐々に浸透しつつある気がします。

部下との1on1、組織開発、まちづくり……「対話」が求められる現場も具体的にイメージができるようになりました。


では、質問を変えます。


皆さんは、「対話」を目にしたことがありますか?


言葉としての「対話」ではなく、現実のひととひととの間で行き交う「対話」という現象。


こんなにもキーワードとして日々スマホやPCの画面上を大量に流れ続けているのに、現実としての対話を目にしたり、体験したりする機会って、あまりないと思いませんか?


社会に対話という言葉は溢れている
でも、私たちの周りに対話という実体は乏しい


これが私が感じている「対話」についての現在地です。

皆さんは、どのように感じておられるでしょうか。



私は、この状況そのものをケシカランとまでは思いません。

でも、もし実体としての対話があればいいのにと思う人がいるなら、お伝えしたいのが対話にまつわる3つのギャップの存在です。


対話にまつわる3つのギャップ
1.理解のギャップ
2.知覚のギャップ
3.期待のギャップ


全編自戒を込めて、鋭利なブーメランを投げる気持ちで書く、大流血必至の記事です。


1.理解のギャップ


「そもそも対話って何でしょうか?」

その答えは、もしかしたら人の数だけあるのかもしれません。一番左端から一番右端まで、対話の意味の細かいグラデーションのうえに私たちは立っています。


私よりもずっと対話(DIalogue)について実践し、深い知見を有する友人から言われた

「対話とDialogueは違うんですよ」

という言葉が、いつも私の中で響いています。


私たちは“対話”と聴くと、つい

「気兼ねなく本音で話せるってことでしょ」
「否定しないで耳を傾ければいいんでしょ」
「価値観の違いを受け入れるんでしょ」

と思ってしまいませんか?

以前の私はそう思っていました。


日本語としての"対話"が"Dialogue"を訳したものだとしたら、デヴィッド・ボームの『ダイアログ(On Dialogue)』によれば、その本当の意味は以下のような要素から成り立っています。

・ギリシャ語「Dialogos」が語源
・「logos」とは「言葉の意味」という意味
・「dia」とは「~を通して」という意味(二つではない)
・これら語源から、人々の間を通って流れている「意味の流れ」という映像やイメージが生まれてくる
『ダイアログ(On Dialogue)』(デヴィッド・ボーム著)より引用)


つまりは、「言葉」が行き交うのが対話なのではなく、「意味」が行き交うのが対話だということ。


もう一つ、重要なのが、意味の流れから「何か新たな理解」「出発点には存在しなかったもの」「創造的なもの」が現れてくるという、対話(Dialogue)の本質。


それは合意や調停のためでは無いよ、ということ。


だから、私の中での対話(Dialogue)の定義は、

異なる意味を持ち寄り、新しい意味を創造する

こと。


「異なる意味を持ち寄る」というのは必ずしもサークル状に座って言葉で話す必要はないし、「新しい意味を創造する」というのは合意したり結論を導くことでもない。

それらはいずれも本質ではありません。


「対話とDialogueは似て非なるものだよ」

友人のこの言葉は、「話す」ことを前提に考える従来の私たちの対話のイメージでは、Dialogueの本当の意味を狭めてしまう可能性があるという注意喚起だったと私は受け止めています。

裏を返せば、本当の意味での対話はその場で交わされる言葉だけではなく、非言語でのコミュニケーションや互いの関係性(コンテクスト)までもが要素として含まれるということだと、今の私は理解しました。

気兼ねなく本音で話せることも、否定しないで耳を傾けることも、価値観の違いを受け入れることも大切だけど、それだけじゃなくて、その場にいる人の在り方も姿勢も互いの関係性も、そしてそれらを想う「意志」も、その場に対話が実現するために大切なことなんです。



2.知覚のギャップ


前項「1.理解のギャップ」でお伝えしたとおり

異なる意味を持ち寄り、新しい意味を創造する

これが対話なのだとしたら、サークル状に座る機会がなくても、日常の中のそこかしこに対話の欠片が散らばっていたり意識していないけれど対話がなされていることもあるのではないか、私はそんな風に感じています。


それを知覚できていない、それが対話だと受け止められていないことも、

社会に対話という言葉は溢れている
でも、私たちの周りに対話という実体は乏しい

私たちがこう感じる理由の一つかもしれません。


「対話をしましょう」と誰かが場を設けなくても、「そう言われてみると、あれは対話的な場だったな~」と思えるような経験を、皆さんもお持ちではないでしょうか?


対話は“話す”ことに限らないなら、

・人が集まって話す場でなくても対話がある
・耳だけでは対話は観測できない

ということです。


部下から上司への報告、住民からかかってきた電話、同期とのランチで聴いた相談。それらの中にも、「異なる意味を持ち寄り、新しい意味を創造する」そんな対話の時間が見つけられるかもしれません。


昔、「事件は会議室で起きてんじゃない、現場で起きてるんだ」という映画のセリフが流行りましたが、「対話は会議やワークショップ(だけ)で起きるんじゃない、日常の中で起きるんだ」といったところでしょうか。(もちろん、ワークショップなどで対話しやすくなるように技術的に仕掛けを施すことはありますし、それが対話との関係でのワークショップの意義とも言えます。この辺の話は長くなりますので……^^; )


3.期待のギャップ


「対話を最終兵器だと思ってない?」

最後は、組織での対話の意味や価値に関係することです。

最終兵器はさすがにあおり過ぎかもしれませんが、組織において対話の必要性を訴え、その導入を指示・支持する人たちの中には、対話によって組織が変わると期待している人が少なからずいるのを感じます。(期待するからこそ頼りたくなるので、それが間違ってるという意味ではありません)


でも、

異なる意味を持ち寄り、新しい意味を創造する

これが対話です。


言ってみれば、これだけのことです。


私のイメージはコンピューターのOS(オペレーティングシステム)。対話が組織の中に浸透するというのは、OSが変わるということ。

その動作が向上したり、使いやすくなったりはしますが、いいOSに変えたことでプレゼン資料をつくれるようになるわけじゃないし、イラストを描けるようになるわけではありません。


「対話の研修をしたけど、何も変わらないね」
(やっぱり対話って、我が社であんまり意味無いのかな)

そこには、あるべきアプリケーションは備えられていたでしょうか。

つまりは、対話を導入することで活性化させたり、スムーズにしたい機能はイメージされていたでしょうか。


社内に対話の文化を浸透させたい

そう思うことはとても尊いことですし、そういう担当者のことは応援したくなります!


だからこそ、

・それが組織の中のどんな機能を向上させるためで(プレゼン資料を作るためのパワポのように)
・対話の浸透・定着のためにどんな施策が必要なのか(例えばチーム単位で必要なこと、管理職に求められる役割等)

などは、整理しておく必要があるのかもしれません。

(私は組織開発とか、そちら方面の専門では無いので、想像も込めて書いています)


いずれにしても、対話そのものは組織に大きな成果をもたらす必殺技ではありません。

だって「新しい意味が創造」されても、腹は膨れませんよね。

そのことを忘れて、大切な何かを見落とさないように気をつけたいものです。


4.最後に


今回の記事では、

社会に対話という言葉は溢れている
でも、私たちの周りに対話という実体は乏しい

と感じることについて、私なりに考えていることを書かせていただきました。


全体のトーンとして、

対話はそこかしこに実在するけど、
私たちは、よく分かってないだけだよね

という書き方を選びました。


それは私が、対話があるかないかはゼロイチでは無いと考えているからです。


極めて対話的な度数98%な場もあれば、あまり対話的だと感じられない度数12%な場もあります。そこにおいて60%以上は対話だけど、59%以下は対話ではない、という線引きがあるわけではありません

また、ある場において、ある瞬間、あの人とこの人の今のたった2往復の言葉のやり取りと互いの表情が、急に対話的になって、そのあとはまた普通の議論に戻るような、刹那の対話が見られることもあります。
そこではその場そのものが必ずしも対話的でなくても、対話的な瞬間が観測できたりするのです。

対話とは、かくも脆弱で優しいもの。

私もまだまだ学んでる途上ですし、ちっとも理解し切れる気がしないので、これからも色々な皆さんと語り合い、学び合えたらいいな~と思っています。

よろしければ皆様、ぜひ今後ともお付き合いくださいませ~




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