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センパイ著者にききました#04/今村寛さん①(全4回)


2月に初の単著『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』を出版した私、島田正樹が、同じ地方公務員として先に本を出版している「センパイ公務員著者」にインタビューをするシリーズ。

四人目は、福岡市に勤める今村寛さんにお話をおうかがいしました。


今回お話をおうかがいする今村寛さんは、福岡市役所で財政担当課長時代に庁内で始めた「財政出前講座」が全国で人気となり、その内容をまとめた著書『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと? 』(ぎょうせい)を2018年に出されています。
著書出版後も「ビルドアンドスクラップ型財政の伝道師」としてご活躍の今村さんですが、実は本当に伝えたいのは自治体財政のことではなく……?
そんな今村さんが、このたび2冊目となる単著『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』ことを出すということをお聞きし、インタビューさせていただきました。

今回のインタビューでは、今村さんが発信や著書を書くことをどのように考え、ときに悩んできたのか。そして新著のテーマともなっている「対話」についてじっくりお聴きしました。


◆これは財政の入門書ではありません

―― 本日は福岡市役所の今村寛さんからお話をお聴きします。今村さん、よろしくお願いいたします。

今村さん:はい、よろしくお願いします。

―― 今村さんは、2018年に1冊目のご著書『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと?』を刊行されています。そして、6月10日には2冊目のご著書となる『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』が発売されます。
今日はそんな今村さんから、本を書いたり、SNSなどで発信を続けているその原点や想いについてお聴きしたいと思います。

今村さん:はい、何でもきいてください。

―― 最初に、1冊目の『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと?』についてご紹介いただいてもよろしいですか。

今村さん:私が財政担当課長時代に始めた財政出前講座というのがあるんですね。自治体の財政の状況、現状とかそもそもの構造とか将来見通しとか、どうして財政健全化に取り組まなきゃいけないのかといったことを、元々は職員向けに話す出前講座でした。


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それが2014年9月以降、全国的に人気が拡大していって、財政担当課長から異動した2016年度には1年間に30回を超える人気講座となったんですね。結局6年間で200回くらいやっているんですけれど、百何十回かやった頃に「この出前講座の内容を本にしませんか」とぎょうせい(株)さんから話があったんです。

じゃあ話している内容を書き起こす形で講義を聴いたことがない人に読んでもらえたら、あるいは一度聴いたことがある人に復習の意味で読んでもらえたら、そんな感じで書いたのが2018年ですね。

―― 公務員向けの財政に関する本って結構ありますよね。

今村さん:ありますね。

―― この『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと?』は、そういった財政に関する本とは違う?

今村さん:実は、財政のイロハを学べる本みたいなオーダーもいただきました。でも、「私が財政出前講座でお伝えしてしているのは自治体の財政の中の簡単なエッセンスなので、講座でお伝えしているそこの部分だけを本にさせてください」とお願いしました。

序章にもハッキリ書いてあるんです。これは財政の入門書ではありませんと。

―― 財政出前講座自体が、自治体の財政のお勉強とは異なるということでしょうか。

今村さん:そうなんです。自治体の財政が厳しいと言われているけど、お金がないっていうのはどういうことで、それはどうやったら乗り越えられるのか。

財政出前講座でお伝えしているのは、その問いに対する答えだけです。

「お金がない」ということを説明するために、そもそも財政はこういう構造になっていて、現状はこんなふうになっていてね、将来こうなるんだよ。だからお金がないんだよ、とお伝えしているんです。


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―― 実は私も2度、財政出前講座を体験させていただきました。座学で講義をお聞きする部分と参加者同士でお話をする時間がありましたね。

今村さん:そうです。講座の途中で、熊本県庁職員が創ったシミュレーション2030という自治体の財政運営をロールプレイングで体験するゲームを挟みます。1時間講座を聞いていただき2時間ゲームを体験して、ゲームで気がついたことを振り返りながらもう1回財政の話を1時間聞いていただいて、4時間半くらいの長丁場の講座です。

『自治体の“台所"事情 財政が厳しい"ってどういうこと?』
◆目次
 Part1 財政課職員はなぜ嫌われる!?
 Part2 自治体は「お金がない」?
 Part3 限られた資源をどう使う?
 Part4 「財政健全化」って何だろう?
 Part5 全体最適を「対話」で導くヒトづくり

『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと?』の第1章と第2章が座学の最初の1時間の部分、第3章がゲームでわかることなど、第4章がゲームから得られた気づきと財政健全化の話、そして第5章は私の生きざまみたいなことが書いてある。そういう5章だてになっています。


◆「対立を対話で乗り越える」について話したかった

―― 1冊目の第5章は対話をテーマに書かれていますよね。その上で、2冊目は『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』をお出しになります。

今村さん:今度は対話がテーマになります。

―― どんな本なのでしょうか?

今村さん:1冊目の財政の話の結論は、財政課と現場でお互い対立してもしょうがない、対話でお金がない状況を乗り越えていかなきゃいけないということです。対立を対話で乗り越えることに気がつき、私が対話に目覚めた経緯を1冊目の最後の第5章で書かせてもらっています。

ただ、あの部分は1冊目ではメインディッシュにしなかったんですよね。財政の本でしたので。

でも、1冊目の『自治体の"台所"事情 "財政が厳しい"ってどういうこと?』で「財政の本ではない」と序章に書き、その第5章では「私は財政の話をしたくて出前講座をしているわけではありません」と書いちゃっているんですよ。


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要するに、私は対立を対話で乗り越えることについて伝えたくてこんなことをやってるんですっていう”ネタバレ”をしているんですね。この「対立を対話で乗り越える」というテーマでもう1回話をしてみたいなーとずっと思っていたんですよ。

―― そうだったんですね。 

今村さん:ちょっとぶっちゃけると1冊目の第1章から第4章までがいわゆる講座の中身の話なんですけれど、第5章は講座が終わった後の懇親会で話している話なんですよ。

―― 懇親会? 

今村さん:終わった後に懇親会に行って、お酒をついで回って話すときに「今村さんて昔からこうだったんですか?」とか「どうして財政にいた時に対話に目覚めたんですか?」とか訊かれて、毎回同じようなことを話しているわけですよ。

で、懇親会で毎回話しているこの話をどこかでちゃんとまとめたいなと思っていて、それが1冊目の第5章で一応まとまったんですよね。

でも、やっぱり書き足りなくて。私が対話に目覚めた経緯とか、対話から得たものとか、こんな風にやったらうまくいくよという話をみんなに伝えたかったんですよ。

そこへ今回、公職研さんからお話があって、2冊目になる『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』を書かせていただくことになったんです。


◆「対話」に対するただならぬ想い

―― 今村さんは「対話とは」って、どんなふうにお考えですか。

今村さん:2冊目では対話のことを「相手のことを理解しようとして交わす言葉のコミニュケーション」と定義しました。だから雑談ではなく、どっちが正しいかを決める議論とも違うんです。

―― なるほど。

今村さん:本の中では「対話」と「議論」と「雑談」の違いについても書きました。

―― その「対話」についての本を書くことになった、きっかけは何だったのでしょうか。版元の公職研からお話があったということでしたが。

今村さん:茨城県庁の助川達也さんが『公務員のための場づくりのすすめ: “4つの場”で地域・仕事・あなたが輝く』(公職研)を書く際に、既に場づくりを実践している5人の公務員にインタビューをしたんですね。私もその1人としてインタビューを受けたのがきっかけでした。

―― インタビューがきっかけ?

今村さん:オンラインで助川さんからインタビューをお受けしたのですが、そこで初めてお話する内容がたくさんあったんですね。というのも、助川さんからは「今村さんのオフサイトミーティングとか出前講座の話はもう結構あちこちで聞いていて知っている。それを仕事でどう活かしたのか聞きたい」と言われたんです。


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その時、既に経済の部長を4年間やっていて、財政を卒業してから仕事で取り組んだことが結構蓄積をしていたので、その話をしたんです。そうしたら公職研の編集の犬飼さんが「今村さんて仕事でそういうことに取り組まれていたんですね」と響いたようで。私の「対話」に関するただならぬ想いを感じたそうです。

そこで、「公務員向けの対話本を今村さんが書いたら面白いんじゃないの?」という話になったんですよね。

―― ただならぬ思い!

今村さん:「出前講座とかオフサイトミーティングだけじゃなくて、仕事でもやっているんだ!?」って思われたんですね。

―― お仕事でも対話に向き合っておられることが、そのインタビューのときに垣間見えたんですね。

今村さん:実は、この4年間の経済の部長時代に仕事で対話をどう活かしたかって話したことがなかったし、あまり深掘りして考えてこなかったんですよ。助川さんに訊かれるままに答えている中で気がついていくことが多かったんですよね。


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―― 今村さんくらい日々発信していても、そうやって他の人の視点で光を当てられて初めて明らかになる部分があるんですね。

今村さん:ありますね。だから2冊目の方が書いていて面白かったです。新しい自分に出会う感覚が。

>>「センパイ著者にききました#04/今村寛さん②」に続きます。



★ご報告★

おかげさまで初の著書を出させていただきました!

主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。

そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。

よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。

また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。


★連絡先

原稿の執筆や勉強会の講師、仕事や働き方のお悩み相談(キャリアカウンセリング)等のご相談・ご依頼については、下記のフォームからご連絡ください。




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