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センパイ著者にききました#04/今村寛さん③(全4回)


2月に初の単著『仕事の楽しさは自分でつくる! 公務員の働き方デザイン』を出版した私、島田正樹が、同じ地方公務員として先に本を出版している「センパイ公務員著者」にインタビューをするシリーズ。

四人目は、福岡市に勤める今村寛さん。

今回のインタビューでは、今村さんが発信や著書を書くことをどのように考え、ときに悩んできたのか。そして新著のテーマともなっている「対話」についてじっくりお聴きしています。

>>前回「センパイ著者にききました#04/今村寛さん②」


◆1冊目の評価が高かっただけに心配

―― 1冊目と2冊目では、周囲の反応やそれを受け止めるご自身の心境などに違いはありますか?

今村さん:全然違いますね。1冊目のときは、自分の本が初めて世に出るということでただならぬ緊張感がありました。それは島田さんも多分そうだったんじゃないかな。

私が幸せだったのは、1冊目で書いている「財政出前講座」の内容はもう100回以上人前で話していたこと。内容自体は恥ずかしいものではなくて、みんなに受け入れてもらえている内容だったので何の心配もありませんでした。

ただ2冊目の『「対話」で変える公務員の仕事: 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』は、2冊目の安心感があるんだけれど、人前で話したことがない内容なので、実は1冊目の評価が高かっただけに心配でした。今でもまだ心配ですけどね。

―― そうなんですね。


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今村さん:「今村さんの2冊目は期待しています。ぜひ買います」ってみんな言っているけど。「いや1冊目とはちょっとテイストが違うんで」と言いながら、結果的に同じテイストになったんですけどね。

―― それが今村さんの強みですね。

今村さん:そうなんですよね。アマゾンのレビューだったかな、「自分のことを書きすぎてる」って星が1つか2つしかつけてくれなかったレビューもあるんですよね。私のことをあまり知らない人が、財政の入門書だと思って読んだら「なんだこいつ自分のことばっかしか書いてないじゃないか」と。その人はそう思ったんでしょうね。

そういう人はちゃんとした財政の入門書を買って読みなさいと持っているので、ショックでも何もないんですけど、多分今回もそんな感じになりますよね。


◆議員は職員よりもっと悲惨

―― 1冊目『自治体の“台所"事情 財政が厳しい"ってどういうこと?』を出したときの、周りの反応はいかがでしたか。

今村さん:本を書いたこと自体は、出前講座を知らない人も「あ、今村ってこういう活動をやっているんだ」と知ってくれて。「本まで書くくらいすごいんだ」みたいな。なんかそういう本の魔力ですよね。出版するのはすごいんだみたいな。もともと知っている人から本を出したことだけで高い評価を受けたというのは、世間の反応としてはありましたね。

内容の反応としては、自治体職員向けに書いたつもりだったんだけど、どんどん議員さんとのつながりが増えましたね。「ぜひFacebookでつながりたいです」っていう友達申請だったり、「今度講座があったら行きたいです」っていうメッセージを地方議会の議員さんからいただくようになりました。こんなに地方議会の議員から有り難がられるっていうのは珍しいなと思って。隠れたニーズを掘り起こした気がしましたね。

―― 地方議会の議員さん達のどんなところに刺さったのでしょうか。

今村さん:ちゃんと教えてもらってないんですよ、みんな。自治体の財政とはどういうものかと言うことを。

もちろん職員もちゃんと教わってないから、私の出前講座を聞いて初めて「あーそうなんだね、分りました」と言う人も多いんですけど、実は議員も同じなんですよね。

でも議員は職員よりもっと悲惨で、「今さらこんなことを聞けないよ」みたいな感じがありますよね。「収入と支出で同額でないといけないんですよ」と聞かされて、「あーそうなんですね」って相槌打つわけにいかないんですよね。

そういう意味で、入門書ではないんだけれど「なんでお金がないか知っているか」みたいな単純な問いの答えをあの本で理解できて、すごく良かったと言ってくれている人が多いですね。

―― そういうことなんですね。

今村さん:今、私がチャレンジでやっているnoteの「自治体財政よもやま話」は、実はそこにフォーカスをしていて。入門書じゃないんだけど、きっとこの例題でみんな困っているんじゃないかなと思うことを「これってこういう事なんですよ。皆さん知っていました?」みたいな形で書いています。


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―― 財政の話で、あれだけ様々な角度から書かれている記事はありません。

今村さん:自分でもあれは価値があるんじゃないかなと正直思っています。ここだけの話、カバー画像にジブリの絵を使うことにこだわって続けているんですけど、いつ辞めるんだろうっていうのは思いますね。

―― 辞め時が難しいですね。

今村さん:きついですよー。でも、もうこれなんか辞められなくて。



―― 財政のネタはまだまだ尽きませんか。

今村さん:ネタはいつも2、3本持っていて、その中で面白そうなものを深掘りしたり、どこかでいただいたコメントだったり、オンラインで対話会をやっているネタから引っ張ってきたりして。常に2~3本のストックを温め続けている感じですね。


◆「劣化」はしたくないから

―― 財政の現場を離れても、依然としてあのような明るさ細かさで語れる状態にあり続けるというのは、今村さんにとって普通のことなんですか。

今村さん:これはですね、ずいぶん前なんですけど、山形市の後藤好邦さんと「劣化」について話をしたことがあって。そのとき後藤さんと話したのは、元公務員が公務員だったときの経験を生かしていろいろなことをやっているけど、やっぱり少し劣化していくよねっていうことなんですね。

だんだん輝きを失っていって「昔、俺はこんなすごかったんだ」っていう話だけになっちゃう。講演会で話を聞いても「この話、前に聞いたなぁ」とか「いつも同じような話をしているな」とか。そういうようなことを感じるようになるよねと話をしていて、後藤さんとめっちゃ盛り上がったんです。


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で、それがなんでかというと、一時もてはやされたけど、やはり現場から離れて新しい情報を自分で手に入れることができなくなって、古い情報のままその貯金で食ってるみたいな感じになるんだろうと。自分たちはそうなりたくないよねって後藤さんと話してたんですね。

―― わかります。

今村さん:それから何をしているかというと、後藤さんは後藤さんでずっと仕入れを続けているわけですよ。いろいろなところでいろいろな仕入れをして言葉を集めて。いよいよ博士課程ですよ。すごいですよねー。

自分は、財政を卒業して4年間財政のことは出前講座しかしてなかったんですよね。だからもう財政のことは自分として語ることがないかなと、実は思っていたんです。

―― そんなふうに思ってらっしゃったんですね。

今村さん:けど、新型コロナウイルスの影響で出前講座に全然行けなくなったときに「noteを始めたらどうか」って言ってくれていた市役所の友達がいて、「今村さんのFacebookは文章が長くて後で読みにくいからnoteにしてって」。

その人の為というわけではないけど、出前講座も行けなくて暇だから、ちょっとnoteで書いてみるかなっていうことで、今まであっちこっち話していたこととかを少し細切れにして2,000~3,000字くらいで書いていくことにして。書いているうちに「あーこれも書いておこう」「こっちも書いておこう」って、どんどん思いついて。

その中で「もうちょっと事実を知らないと書けないな」みたいなことをちゃんと調べたりもします。だから昔より勉強していますよ。交付税のこととか。

―― すごい。

今村さん:書くために勉強したり、現役の職員に話を聞いたり、そんなことをしてますね。書くからには「昔の名前で出ています」じゃない形にしないとねと言っているから。それが今でも解像度がそれほど低下しない理由だと思います。

―― しっかりと取材をされているんですね。

今村さん:そうですね。それと、今まで過去に経験してきたことが、人より先んじてたんだろうなっていうのがあります。今みんなそこにいるんだねっていうのが見えるんですよね。

私自身がうまくいった経験がある中で、枠予算に進めないで困っている自治体があったり。経常収支比率が、経常の収入が下がって経常の支出が上がって、どんどん普段やっていることを普段の収入で賄えない状態になっていて困ってる自治体を見て、自分もそこを乗り越えてきているので「それはね、こうやったら乗り越えられるんだよ」って教えられるわけですよ。

昔の知識で喋るだけじゃなくて、自分が経験してきたから、みんなが進もうとしているその先の道を教えてあげられるっていうことなんですよね。そういうのが最近すごく多いかな、「自治体財政よもやま話」に関しては。だから、まだまだいけそうな気がしています。


>>「センパイ著者にききました#04/今村寛さん④」に続きます。




★今村寛さんの著書


★ご報告★

おかげさまで初の著書を出させていただきました!

主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。

そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。

よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。

また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。


★連絡先

原稿の執筆や勉強会の講師、仕事や働き方のお悩み相談(キャリアカウンセリング)等のご相談・ご依頼については、下記のフォームからご連絡ください。




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