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優秀なプレイヤーは、優秀な管理職になるのか?


結論は、多くの方がご存知のように「優秀なプレイヤーが優秀なマネジャーになるとは限らない」です。スポーツの世界でも「名選手が名監督になるとは限らない」なんて言われますよね。

今日は、この話題について、私の実体験も含め考えてみたいと思います。



◆最大の原因は、評価の仕組みと練習の機会

SNSのタイムラインでのやり取りや、居酒屋トーク(しばらく遠ざかっていますが)では「自分で仕事をするのと、部下に仕事をしてもらうのは全く違う仕事だよね」という分析が主流のように見えます。

その分析は概ね正しいと思います。


でも、「優秀なプレイヤーが優秀なマネジャーになるとは限らない」が真理だったとして、だから何なんでしょうか?


これを具体的な困りごととして、現場の問題として表現すれば、「優秀なプレイヤーから順にマネジャーになるんだけど、その人たちが必ずしも優秀なマネジャーにならないから困ってるんだよね。どうしたらいいかな?」ということですよね。


最大の原因は、評価の仕組みと練習の機会です。


プレイヤーとしての評価が高い人が早く係長になり、係長としての評価が高い人が早く課長になる。もしくは評価は関係なく年功序列で係長に、課長になる。

いずれにしても「しっかり係長・課長が務められる人ほど早く係長・課長になる」ということではありません

できる人がなるという評価と昇進の仕組みになっていないから、「優秀なプレイヤーから順にマネジャーになっていく→優秀なマネジャーになるわけではない」ということ。


練習の機会というのは、係長でも課長でも、その職位に就く前に練習する機会がないよねということです。

公務員でいえば係長になる前に主任とか主査の期間がありますが、そのときに部下のモチベーションを気にしたり、部下の作業の状況と事業進捗を管理したりする機会があるわけではありません。課長になる前も同様に、課長ならではのマネジメントを経験できる機会はありません。

やったことがない、事前に練習する機会もない、だから「どんなにプレイヤーとして優秀でも、マネジャーとしてのスキルや知識を得る機会がない」という現象が起こっています。


務まる人をマネジャーにするわけでもなく、務まるように練習する機会があるわけでもない。

だから、たまたまマネジャーが務まる人と、当然のように務まらない人が出てくるわけですが、プレイヤーとして優秀な人が「務まらない人」だとギャップがあるので注目を集めますよね。



じゃあ、どうしたらいいの?

原因の分析を読んでも、結局解決しないんだけど。


そうですよね。


これは処方箋を「そういう上司と働く部下」「そういう上司になりたくない人」という2つの観点から考えてみたいと思います。



◆そういう上司と働く部下の人のための処方箋

この上司には、2つの《やっかい》があります。

やっかい① 自分ができたことは誰でもできると思っている
やっかい② プレイヤースキルはあるがマネジメントに無知

下手をすると部下をつぶすタイプです。


この上司の下で働く部下の目標は「つぶされないこと」です。

業務上、必要な成績を達成することではなく、心を病んでつぶれないで過ごせれば目標達成です。

そのために同じ部署の部下同士でコミュニケーションを密にするのもいいでしょうし、その上司との間に先輩などがいるなら、その陰に隠れるのもいいでしょう。他の部署のマネジャーなどに、この困りごとについて話を聴いてもらうのもいいかもしれません。


そのうえで、逃げ回って自分の心を守るばかりでなく、学びたい、成長したい、貢献したいという意欲があるのなら、その上司の行動をよく観察し、その発言をよく聴くことです。

そこから「もっとこうしたらいいのに」ということを学ぶことができます。「精神論ばかりで具体的な指示がない」「部下と方向性を共有できていない」「部下を労ったり励ましたりしていない」など、いろいろ見えてきたら「私がマネジャーになったときにやること/やらないことリスト」なんてつくってみてもいいかもしれません。


また、こんな困難な状況でも、何とかチームを機能させたいという高い志があるのなら、最近はやりの「ボスマネジメント」じゃないですが、部下の立場からそのマネジャーが、マネジャーとして機能するようにサポートしたり、状況に介入することもできるかもしれません。

私は、「そろそろアレをやった方がいいな」ということは、「そろそろ○○について打ち合わせですかね」「あと1か月で○○ですね、何から準備するといいんでしょうね」などと、立ち話のような雰囲気の中で、つぶやくようにしていました。それでもパワハラに近い高い要求や強い圧は、なかなか扱いが難しいですが。


◆そういう上司になりたくない人のための処方箋

これはもう「自ら練習の機会をつくる」の一択です。

自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ

リクルートのかの有名な以前の社訓のとおりです。

自らマネジメントの機会を創り出し、
機会によってマネジメントができる人間になれ

こんなところでしょうか。


機会をつくりやすいのは、何かしらの事業の主担当を任されて、そこに担当者として後輩が一人以上配置された状況

そこで仕事のマネジメント人のマネジメントを実践してみるのです。

私は係長になる2~3年前から、主担当の事業で自分で3年間スケジュールや年間スケジュールをつくるところから、その定期的な到達目標を考え、必要なタスクに分解し、それを自分と後輩で割り振ったりといった仕事のマネジメントを実践していました。

また、人事評価こそできませんが、後輩と定期的な1 on 1 ミーティングを実施したり、育成・指導もそれなりに力を入れて取り組んできました。後輩の育成・指導は、実はスキル・知識の面では先輩になる段階で経験できています。ここで追加で取り組むといいのは、後輩の仕事の進捗管理とモチベーションの手当ての「仕組み」です。

単なる先輩・後輩の関係だと「遅れてるな」「元気がないな」と「気づいたとき」だけケアすれば許される面があります。

でも、マネジャー(係長・課長)にとっては必須なので、見逃さないように仕組み化するのが重要です。私の場合は1 on 1や、毎週係内で共有していた進捗管理シートといった仕組みを取り入れていました。


マネジメントの練習には、こちらの海老原嗣生さんの著書が大変おススメです。



◆おまけ

おまけで、そういう上司をつくりたくない人事部門や経営者のための処方箋も。

人事部門や経営者であれば、上で書いたような当事者(部下、上司になる人)が変えられないような環境も変えることができます。

前半で、このように書きました。

最大の原因は、評価の仕組みと練習の機会です。

マネジメントができる人からマネジャーになるような評価システムになっていないことも、マネジャーになる前にマネジメントの練習の機会がないことも、人事部門や経営者なら解決できるかもしれません。


本気で「そういう上司をつくりたくない」と思うなら、どうか、そういったことも本気で検討してみてください。


併せて、これも前半で書いたことですが。

優秀なプレイヤーから順にマネジャーになるんだけど、その人たちが必ずしも優秀なマネジャーにならないから困ってるんだよね。どうしたらいいかな?

これが現場で起きている問題だと書きました。

この解決は簡単ではありませんが、人事制度に手を入れるという選択肢もあるなら、「降格制度」を整備するだけでもかなり変わるはずです。

プレイヤーとしてはキラキラだった人材が、マネジャーになったらくすんでしまった。そうしたら、またプレイヤーに戻してあげたらいいんですよね。これ、行政だとあまり整備されている事例を聞かないのですが、とても大切な選択肢だと思います。

人事部門や経営者の方は、ぜひ現場の状況を直接その目で見て、考えてみてください。



◆最後に

採用されてからずっと、私は結構優秀な管理職の方と仕事をする機会に恵まれてきました。皆さん、プレイヤー時代も実績を残していたような人たちです。

でも、中には若くて活きのいい職員に強く当たる人もいて、結構追い込まれ、モチベーションもダダ下がりしてしまった若手もいました。

実はそういった管理職の人は、若手に対して

俺がいい経験をさせてやってる

と思っている節があります。


でも、一歩間違えば、病気になって休んでもおかしくありません。


私が目にしたのはギリギリのところで踏みとどまれた例かもしれませんが、公務員の世界では精神疾患を原因とした休職者が増える傾向もあり、その中の少なくない数の人たちが上司との関係で悩んでいるであろうことは想像できます。


誰かひとりが悪いわけじゃなく、人事のせいにしても、上司のせいにしても、何も生まれませんから、ここはひとつ、みんなでその場をケアする意識を持てるといいですよね。

うまくマネジメントできていない上司をサポートしたり、ちゃんと育成や動機づけしてもらえない部下をケアしたり、マネジャー手前の中堅に練習の機会を設けたり、それぞれの立場でそれぞれができることを


私自身も、「あの人、プレイヤーとしてはすごかったけど、偉くなっちゃって、何だか残念な上司になっちゃたよね」なんて言われないようにしたいな~と思います。



◆お知らせ

最後に《個別キャリア相談》についてまとめましたので、「ちょっとこのモヤモヤについて相談したいな~」と思ったら、いつでもご連絡ください。もちろん上司と部下のモヤモヤについても、お聴きいたします

《個別キャリア相談》
【内容】仕事を含む人生全般(=キャリア)の困りごとや漠然としたモヤモヤについてのご相談(考えていることやアイデア等に関する壁打ちなども対応可です)

【日時】平日夜または土日60分間/回(土日午前と水曜夜が比較的調整しやすくなっています)

【料金】無料(アンケートにご協力ください)

【場所】オンライン(zoom)

【予約方法】申込フォームからご希望の内容・日時をご連絡ください。日時は候補を複数いただけると日程調整がスムーズです。


★ご案内★

2021年2月に初の著書を出させていただきました!

主に若手公務員を対象に「公務員が充実した気持ちでイキイキと働くことが、住民の幸せにつながる」という信念のもと、「自分の人生のハンドルは自分の手で握ろう」というメッセージを込めて書かせていただきました。

そのあたりのことは、こちらの記事でもお伝えしています。

よろしければお手に取っていただけたら嬉しいです。

また拙著に関連する記事はこちらのマガジンにまとめて掲載していますので、併せてご覧ください。


★連絡先★

原稿の執筆や勉強会の講師、仕事や働き方のお悩み相談(キャリアカウンセリング)等のご相談・ご依頼については、下記のフォームからご連絡ください。



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