第5章 玉砕覚悟で
さて、登り坂の頂上にある展望台がチェックポイントになっていたわけだが、辺りは真っ暗で景色なんて見えるわけがない。見る余裕があるわけない。
只今の歩行距離は、58キロ/75キロ
残り17キロでございます。
下に敷かれた毛布に横たわっていると、サポートさんがマッサージを始めてくれた。
■第5章 玉砕覚悟で
「うわぁぁ。これはかなりキテルねぇ」
初めてサポートさんがオレの足の状態を認めてくれたっ!!!!
こちらのサポートさんは整体を生業としている方らしい。
だからやっぱり違うのよね。今までみたいに必要以上に痛くしない。身体の様子をじっくりと看てくれる。
少し余裕ができて辺りを見回すとさゆりがマッサージを受けているのが見えた。
ああ、いたんだ。良かった。食パンマンさん、ありがとうね。
んん、あっちにはかわけんとミッキーがいる。
ああ、たった今、栗と武田っちがチェックポイントに辿り着いた!!!
武田っち。頑張ったねぇ。
足が痛いと言っていた武田っちがオレのほんの少し後を歩いていたんだな。
スゴイなぁ。よくペースを上げてこれたなぁ。
オレが遅すぎたのかな???
そんなことをぼんやり考えていると、サポートさんが話しかけてくる。
「今さぁ、眠い???」
「いえ、全然眠くないんですよ。痛みのせいかもしれないですが。」
「もし、眠くないんだったらできればこのまま歩いた方がいいね。」
サポートさんが言うには、オレの足はもう限界を超えているらしい。
いつ動かなくなってもおかしくないとのこと。
ヘタにココで仮眠をとって休憩して出発するよりは、今のままで少しでも前に進んだ方がいい。ここから次のチェックポイントまでは約5キロの道のりで、しかも下り坂。
ふくらはぎに少し負担が来るかもしれないけれど、次のチェックポイントでスグにマッサージしてもらえば大丈夫だよ。
距離もさ、今の半分だからね。それを過ぎたら7キロ、5キロだから、ゴールはスグだよ
プロフェッショナルが言うのだったらまず間違いないだろう。想像以上にオレの足は無理を重ねてきていたんだな。
これから下りで5キロ。そして7キロ歩いて、最後の5キロ。
何だかそう考えるともうゴールが目の前にあるかのような錯覚に陥ってしまう。
今まで次のチェックポイントに行くことだけを考えてきたのだが、ココに来て初めてリタイアではなくゴールすることを強く意識した。
よし!!!!!行こう!!!!!
着合いも入って立ち上がろうとするが、その整体師さんに静止させられる。出発前にちょっと膝の屈伸をしておいた方がいいとのこと。
体育座りをしたまま、足を伸ばしたり、曲げたり・・・。
でも、それができない!!!!!どんだけやっても足が動かない。
足が「く」の字になったままピクリとも動いてくれないんだ。
それでも整体師さんはオレに屈伸を強要してくる。
仕方がないので、ゆっくりとうめき声をあげながら曲げたり伸ばしたりを繰り返す。
動かすたびに激痛は走るものの、少しずつ膝の角度も変わっていった。
「がぁぁあぁあっぁ!!!!」
はぁはぁ==33 伸ばしてぇぇ・・・
「うんぎぎぎぎぎ!!!!!」
ぜぇぜぇ==33 曲げるぅぅ・・・
何をするにも激痛&うめき声とワンセットのオレ。
「痛いだろうけど、ガマンして。これは後のことを考えても絶対に今、やっていた方がいいから。」
20回くらい曲げ伸ばしをしただろうか。許しは出なかったけど、勝手にやめて歩き出すことにした。休みたいけど、オレの身体は休むことも許してくれない。
だったら、行くしかない。ゴールを目指して行けるところまで行くしかない。
休憩しているかわけんやミッキー栗、武田っちを横目にスタートしようとする。さゆりと食パンマンさんの姿が見えないところをみると、どうやらもうスタートしたようだ。オレも頑張らないと!!!
「ハカイダー、もう行くの??そんじゃ、オレも行くわ!!!」
かわけんが声をかけてくれるが、正直、オレの足は誰かのペースに合わせて早く歩くなんてできやしない。その旨を告げるとかわけんは、
「あ、大丈夫。オレも足痛めて歩けないんだよ」と言ってきた。
そして、サポートさんから竹杖をオレの分まで借りてきてくれた。杖があるとホントに歩くのがすごくラクになるんだよ。さっき、この登り坂をガードレールに掴まりながら歩いてきたからすごーーーくよくわかる。
2本の竹杖を持って水戸黄門さながらに歩き始めた。第6チェックポイントスタートだ。
ビジネスパートナーでもあるTHE面白本舗の社長とともに歩く。いや、接待ウォーキングみたいなもんですわ!!!
追い抜いたら失礼かな???とかね。
・・・まったく考えません。そんな余裕はございません。
足の状態を最優先に歩けるところまで、歩けるうちに行こう。
この10キロ以上続いた長い登り坂も、やっと下りに。
やっと下り坂に・・・なってねぇぇぇぇ!!!!!!
登りが続いてるぅぅぅ!!!!
話が違うやん!!!!!
これは想像以上に堪えた。
下りだと思ったらまだ登りが続いているんだもんな。二人で愚痴を言いあっていたら、やっとこさ下り坂。これで少しは楽に。
少しは楽に・・・・なってねぇぇぇぇ!!!!!!
足が死んでるぅぅぅ!!!!!
足に余裕があれば、スピードも出て早く歩けるんだろうけど、今の足の状態では、この坂はかなり無理のある角度みたいで竹杖でスピードを殺しながら
ゆっくりと下るしかない。
下り坂っていうのも、結構キツイもんだな。スピードもさっきより遅いくらいだ。ただ、かわけんがオレのスピードに合わせて歩いてくれたのか、何とか彼に着いて歩いていくことができた。
さっきのコースの半分の長さっていうのも精神的にすごく助かったんだよね。
交わす言葉もなく、無口の状態が続いた。オレはかわけんに着いていくのがせいいっぱいだったんだ。
そして約5キロの道のりを2時間以上かけて歩き、第7チェックポイントに辿り着く。
さっきの4時間に比べればラク。すごくラクだったよ。
ただ、今の下り坂が足への負担を大きくしたのか、右足のすねの部分、弁慶の泣き所の下、足首の上がちょっと痛み出した。
何でそんなところが???
でもその痛みはイベントから一週間以上たった今現在でもオレを苦しめているんだ。そのせいで満足に歩くのも難しい。
第7チェックポイントに着くと、食パンマンさんがマッサージを受けているのが見えた。さゆりもテーピングをしてもらっているようだ。まだ頑張ってるんだね。良かった。オレも、もう少し頑張るよ。
サポートさんがやってきてオレの足をマッサージをしてくれる。年配の女性だったんだけど、優しく、ホントに優しくマッサージしてくれた。いや、マッサージじゃないね。単純にゆっくりとさすっているだけだ。それでもあまりの心地よさについウトウトしてしまったくらい。
ただ、逆にいえばすでに普通にマッサージもできないほどオレの足は痛みだしているってことだ。だって揉もうとした時点であまりの痛さに眠りから覚めて飛び起きてしまったくらいだから。
さするのが精一杯の状況。それでも何かしらマッサージらしきことをしてもらいたかった。優しく構ってもらいたかったのかなぁ。今となってはもうわからない。
そのとき、武田っちと栗が到着。ずっと前方にいるであろうしのとすーさん以外、みんなこの第7チェックポイントに揃った。
あともう少し。あとたった12キロ!!!!!
せっかくここまできたんだからゴールまであともう少しなんだから。
さっきのスネの痛みをサポートさんに告げるとテーピングの先生を呼んできてくれた。テーピングの先生のワンボックス車に乗り込んで足の状態を看てもらう。
この足の痛みは一体なんなのか???
「うーーーーーん・・・これは・・・足首が下がってるんだよ」
え????足首が下がる????
そんな日本語、初めて聞くぞ???
今の下りのコースで、前のめりになって歩くことで足首が下がりその分、スネの部分に負担がかかり痛くなるそうだ。くわしくはわからんが。
そんなわけで足首から膝までグルグル巻きのテーピング。そりゃレッグウォーマーか、ってくらい。
「今は動かないかもしれないけど、歩いているうちに動くようになるから。」
先生はそうやってオレを送り出してくれた。オレはぐったりと休んでいるかわけんに声をかけた。
「かわけん、オレ先に行くわ。」
「みんなで一緒にゴールを目指そうかって話していたんだけど???」
オレは無理そうだ。一緒に歩けばきっと迷惑をかけてしまう。
現時点で夜中の3時。ゴール締め切りが8時だから、あと5時間で12キロ歩かないといけない。みんなの状態なら問題なく時間内にゴールに行けるかもしれんが、今のオレにはちょっと無理かもしれん。
できるだけ、みんなに遅れないように今のうちから歩いておきたい。ワガママかもしれないけど、そのときのオレはそうするしかなかった。
彼らのペースに合わせ休憩してしまえばもしかしたら足が動かなくなる可能性もある。しかし、オレはその一方で歩く体力がもう残っていないことを実感していたんだよ。
正直にいえば「玉砕覚悟」です。
さゆり、食パンマン、かわけん、武田っち、栗、ミッキー。そして、遙か先にいるす〜さん、しの。
オレ、みんなに追いつけるように今のうちに先に進むよ。
みんなに負けないように歩いてみるよ。
こうしてオレは第7チェックポイントを再び独りでスタートしたのだ。
残り12キロ!!!!!
少しだけゴールが身近に感じられた。
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第1章 (35キロ地点まで)
第2章 (48キロ地点まで)
第3章 (53キロ地点まで)
第4章 (58キロ地点まで)
第5章 (63キロ地点まで)
第6章 (70キロ地点まで)
第7章 (75キロ地点まで)
最終章 (ゴール地点)
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