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図書委員のおすすめ本①~元祖図書委員📖~

こんにちは。志高塾です。

志高塾に図書委員制度なるものが誕生したのは、3年前のちょうど今頃です。その経緯については、2019年11月5日掲載の「志高く」Vol.421に記されています。
※全文はこちらでご覧頂けます。
Vol.421 私の役割 | 志高塾 | 西宮北口校・豊中校・高槻校 (shiko-juku.com)

中2の男の子のお母様が「読書をしないので学校で図書委員をすること  で少しでも本に触れて欲しいのですが、やってくれません」と嘆いておられた。じゃあ、と言うことで、志高塾の11月の図書委員に任命した。そんなものは存在しなかったので新設である。
 
半年に1回行われている面談での出来事でした。つまり、彼がいなければ、そして彼のお母様がそのようなお話をしてくださっていなければ、図書委員制度はそもそも生まれなかったかもしれず、生まれるとしてもそれはずいぶん先の話になっていたかもしれません。

その後、彼は図書委員長として隔月で紹介文を書き続けることになり、委員長の座を他の生徒に譲ってからも、特別顧問として定期的に執筆してくれています。

そんな彼が初めて作成した紹介文が、こちらです。
 
『敗者たちの季節』あさのあつこ

僕はこの本を読むことによって、甲子園のグラウンドに入るだけでも難しく、そこに行くまでの球児たちの熱きドラマがあると分かった。そのドラマとは、負けたチームは勝ったチームに頑張ってほしいとお願いし、前までライバルだったが応援するというものだ。
僕がこの本を読んでほしい理由は、一球や一つのことでも真面目にしないといけないと分かるからだ。例えばこの失投をしていなかったらホームランを打たれることはなかったなどだ。この本は、焦る気持ちはよくないと教えてくれた。

最初からこのように書いていたわけではありません。授業の中で講師と会話を重ね、加筆修正を繰り返してできあがりました。どのようなやりとりを経てここに至ったか、詳細な資料はもう残っていませんでしたが、本人(と講師)が相当苦しみながら書き上げたのだろうということは、ぎこちない言葉や手探りのまとめ方から、ひしひしと伝わってきます。

それから3年後。今や高校2年生の彼が直近で書いてくれた紹介文を、以下に再録します。

『店長がバカすぎて』早見和真

みなさんはバカな目上の人がいたことがありますか。これは書店員の谷原京子が題名の通りバカな店長に振り回されている話です。毎朝の朝礼で店長は感情豊かでにぎやかだけど、天然で的外れのことばかり言うところに笑ってしまいました。そんな中、店で覆面作家のサイン会という「覆面」の意味を理解していないイベントをすることになりました。それでも、果たしてその正体はだれなのか、推理小説のようにドキドキするストーリーとなっており、最後には意外な結末が待っています。
店長は真のバカなのか、それとも策略家なのか、その判断はみなさん次第です。ぜひ読んでみてください。

先のものと読み比べてみて、みなさんはどのような印象をお持ちになりましたか?

ずいぶん、言葉が生き生きとしている。そんな風に思われませんか?

もちろん、表現にはまだまだ工夫の余地がありますし(月間報告でしっかり指摘されていました)、最近は冒頭で読み手に問いかけるという手法が続いているので、新しい書き出しも練るように今後求められるはずです。
 
それでも、3年前と比較すると、間違いなく言葉が生きています。書き手の思いがもっとやわらかく、自由に、弾むように飛び出しています。褒めすぎていたらすみません。いや、ですが、こうして今までの作文を振り返ってみて、確実に成長していることが窺えるのは、やはり嬉しいことです。

先日、ある歌人の方からお話を伺う機会がありました。その際に教えて頂いた「言葉が動かなくなる」という表現が、強く印象に残っています。言葉があるべきところにすべて収まり、もうこれ以上動かなくなる。そして作品が完成する。そのような瞬間を指しておられたと理解しています。なんて美しく、尊い瞬間だろうと思いました。

「言葉が動かなくなる」その瞬間を味わえる人は、ごく限られているはずです。少なくとも、ひたむきに言葉を動かし続けてきた人だけではないでしょうか。

今回紹介した作文も、そんな風に、何度も何度も言葉を動かしてできあがったものです。ということは、それを書き上げた彼もまた、もうこれ以上動かないというような、自分だけの言葉を見つける可能性を確かに持つ人です。遠い未来の話でしょうか。案外、次回の紹介文にその兆候が表れたりして。いずれにせよ、これからの成長も楽しみに見守りたいです。


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