『エレファント・マン/デイヴィッド・リンチ』"The ELEPHANT MAN/David Keith Lynch"(映画)【1660字】
1)ストーリー.
デイヴィッド・リンチの真髄か、はたまた異端か?
19世紀末のロンドン。外科医のトリーヴスは見世物小屋で"エレファント・マン"と呼ばれる青年、ジョン・メリックに出会う。メリックの容姿に衝撃を受けたトリーヴスは、見世物小屋の主人バイツと交渉し、メリックを自分の研究対象として病院で預かることにした。彼が知性のある心優しい青年であることを知った病院は、メリックに病院の永住権を与えた。やがて新聞にメリックの紹介記事が載り、一躍有名人となった彼を上流階級の人々が訪ねてくるようになった。そんなある日、見世物小屋の主人バイツが、メリックを病院から連れ去ってしまう…。
──DVD背面の紹介文より抜粋──.
※この「エレファント・マン」は、実在の人物を元にした映画作品です↙️
ジョゼフ・ケアリー・メリック(Joseph Carey Merrick 1862年8月5日 - 1890年4月11日)は、ヴィクトリア朝時代のイギリスで、今日では主にプロテウス症候群が原因と推測されている身体の極度な変形、膨張から「エレファント・マン」(The Elephant Man)として知られた人物。彼を最初に診察した医師フレデリック・トレヴェスがまとめた回想録を基に作家のバーナード・ポメランスが戯曲にした事から世に広まり映画化され、広く知られるに至った。
──『Wikipedia』より──.
2)所見.
非常にキャッチャーな音楽、白黒ながら華やかさを感じさせる映像が先行して観るモノを画面に引きつけ、その合間合間に不気味さ、不穏さを差し込んでくるような構成。
華やかさな雰囲気をまず提示していくことにより、後に続く退廃的かつ禁忌的、見てはいけないモノを見ている感覚を、より強烈に感じられるようになっている。
映画のどのタイミングで画面を切り取ったとしても美しく、不気味なシンメトリーが見出せるような、緻密な画面構成がなされているように感じられた。どの画面においてもセンスが溢れ、洗練されたバランス構成がなされている為、白黒映画ながら、まるで古さを感じることはなかった。
「外科医トリーヴス」が、不気味な姿をもってして生まれてきた「エレファント・マン」に否応なく引きつけられてしまう感覚、感情をこれでもかというほど、この映画を観ているモノに伝染させてくる作品だ。
※かなり個人的な感覚によるものだが、『素晴らしき哉、人生/フランク・キャプラ』と近い精神性が感じられる一作でした。
3)まとめ.
「エレファント・マン」は、化物のような外見から常に己を否定されてきたが故に、自身が人間であることを見失ってしまった哀れな存在だ。
だが「トリーヴス」は、《人間としての》「エレファント・マン」に執着する。
《人間》と《象》、二つの相反するモノを己の内外に抱えた「エレファント・マン」……彼を人間の側に引き戻すには、彼を人間だと信じ続け、さとし続ける導き手が必要だったのだ──。
自己存在を信じる為には、誰かたった一人でいいから、完全に己を信頼し切ってくれる存在が必要だ。
《愛》無くして、人は人になり得ない。
そうしたメッセージが伝わってくる、うつくしい映画でした────。心揺さぶられます。泣けます、泣きました。素晴らしい映画です。
『その醜悪な容姿に、女性や気の弱い者は一見して悲鳴をあげる程で、職を得て生活するのは困難だが、豊かな知性を備え読み書きもできるし、その心は清く美しい』
『人間は理解できないものを怖れます』
すべてを理解しようと努めれば、わかり合えない相手など、この世にはいないのではないだろうか────。喩えその先に待つものが死であったとしても、後悔はない。それくらい常に理想の自分を体現して生き、自己の在り方に満足できるようにしておけば、きっと人は死の恐怖を克服できるはずだ。
──Thank You For Reading──.
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