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2024年3月の記事一覧

詩「夜静か」

詩「夜静か」

夜は静か
何も聴こえぬ
空間に満たされる静か
コンビニのドリンク補充
嵐が去って草熱れは
春の芝に立ちこめる
浮いては沈み現れては消える
爪上の花畑に注ぐ星々よ
その発光信号で伝えるは
いよいよ春の訪れか
静かな夜は我の正体を暴く
何者でもない我という正体を
合わせ鏡に吸われた白い肌を
御伽話の山猫が喰らう定めに
呼吸を止めてただ慄けばよい

詩「不均衡」

詩「不均衡」

私は無鉄砲で貴方は思慮深い
私はうどん派で貴方はそば派
私は裸眼でもよく見えるが
貴方は洒落た眼鏡をかける
私はブルックナーが苦手で
貴方はブルックナーを愛していた

昔貴方は無鉄砲なうどん派のフリをした
でも眼鏡をかけてブルックナーを愛す
昔私はブルックナーを聴きそばを勉強した
でも視力は保ちやはり考え無しの無鉄砲
積み木のバランスで調和の構築目指した
過去世からのすれ違いを勘定に入れずに

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詩「花」

詩「花」

行き場のない人たちは
街角の掃き溜めに咲く
一輪の寂しい花のよう
寂しさの分だけ力強く
寂しさの分だけ美しい

お弁当箱のような庭で
出会った喜びに腰掛け
別れの挨拶に傾聴する
春の雨に唄えばそれ丈
人生それ丈で良いのだ

手放すか抗うか自問し
ただ通行人に微笑する
蜜をば蜂にくれてやれ
動けぬ場所で時は流る
誰人にも摘まれない花

詩「澱」

詩「澱」

今日もまた安い嘘を叩き売り
釦の掛け違いを繰り返す
わたしたち海の澱みたい
何もかも手放した澱みたい

誰かの落とした雨色のガラス片は
偽物の水晶みたいに鈍かった
わたしたち海の澱みたい
重油にまみれた澱みたい

鏡だと思うほど愛憎はシーソー
出会いも別れも透過した夢
わたしたち海の澱みたい
汚くきれいな澱みたい

詩「ゆくえ」

詩「ゆくえ」

瞬く間のすれ違いと
わたしの間違えた舵取りで
八分音符のフレーズがaccel
火花の柳が風に散り散り
あとは煙たさが頭に漂う

わたしはもう誰とも会うことがない
正面から衝突して差し違えたふたり
はなから何も望んではいけなかった
隣で笑った神様はかつてのまぼろし
喫茶店の角で温かなアールグレイを
臓器を潤すものがいつだって本物だ

加速した日々はただわたしを破滅に導く
もう会えない人よ
貰うばかり

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詩「つむぐひとへ」

詩「つむぐひとへ」

君の言葉が好きだから
多分君のことが好きなのだ
内容も君も常々鋭利なのに
温かなそば茶が臓器に沁みるようだよ
「いいね」がいくらあっても足りない
2回のタップで血も通わなくなるなんて
可笑しいなんてもんじゃない

人間は言葉を尽くすだろう
言葉は人間の先達だから
君が君でいていいのだから
私も私でいていいのだ
ただ君がかわいくて好きなのだ
どうか私を説明しないでおくれ
君の言葉の前に私はなす術もな

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