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2023年10月の記事一覧

詩 「月影」

詩 「月影」

夕日のしんと終わる音を
はっきり聴いたつもりでも
気づけば真っ暗闇
私は光を求め、渇いてる

月影の街でひとりの夜を泳いでる
ひらひらと舞う白い手は鬱血の予感
しあわせなんてきらいだよ。
鈴が鳴った、祝福だ

角部屋の小春日が
じんわり蝿を殺すように
私は身動きがとれない
手首だってもう青い

心臓には穴が空き風が吹き抜ける
これがいつかの私
ほかのハラワタもさらそう
・・・
みんなの笑顔を愛せる

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詩 「水粒(みつぼ)」

詩 「水粒(みつぼ)」

知らぬ間にできた痣は
知らぬ間に消えていくが
引っ掻き傷は年輪となり
深く私に刻まれる
生まれつきの斜指(しゃし)
生まれつきの刺青(しせい)
全ては何かのシグナル
そして何かのアンテナ
天藍色の送受信
Hello, I am nothing.

私は私と出逢うために
この世に生まれてきた
私は皆と出逢うために
この世に生まれてきた
私の存在の危うさに
どうにもままならぬ時
皆が442Hzで教え

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詩 「匂い」

詩 「匂い」

あなたの首筋は夕焼けの匂い
燃えていて、懐かしくて
優しくて、事実だった
たしかにつかまえたその匂い
あなたの首に私の鼻先、本当だよ
きりきり走り回る風
ついさっき思い出した
だって今日は寒かったから
あの日も遠い秋だった
あなたの放つ甘美な情緒に
夢中になった私だから
シュガーを入れそびれたカフェラテは
なんだかひとり苦かった
だからよく覚えている、きっと

あなたの首筋は夕焼けの匂い
あらゆる

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詩 「潤い」

詩 「潤い」

あなたは寝息を立て
あなたは頬杖をついて
あなたは悪夢を見て
あなたはため息をつく
私に何ができる
私は何も知らず
花屋の花を愛でている
じつは抱きしめたいけれど
今の私じゃだめみたい

あなたもひとりであるように
私もたったのひとりで
ずっとずっとひとりなんだ
今の私を見てほしいように
私は今のあなたを見ていたい
現と夢の山の端で
あなたの愛を受信し続けたのも
良い思い出とはまだ言えない
与えら

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詩 「無題」

詩 「無題」

あなたへの恋は
叶わぬ夢たちのパッチワーク
完成しないつぎはぎなの
話したいことも
やりたいことも
並べてみたよ、星座のように
どれも実現されないものばかり
あなたの対応が
私を静かに傷つける
低温やけどのよう
その傷ももはや快楽の象徴だよ
現在地を教えて
中間はどこ
終わりのない綱渡りをするの
あなたに辿り着くという錯覚を抱いて
いまの私じゃだめだから
本当は何も思い描けないよ
眠りたくない夜

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詩 「金無垢」

詩 「金無垢」

蛍のように繊細な明滅を
あなたの澄み切った瞳に見た
ああ、生きている
瞳の奥にもまた瞳があって
その色は御射鹿池の静謐だった

原石のような未完成な愛に
狂気と正気の狭間に私は喘ぐ
ああ、生きている
手を伸ばせど届くことはなく
あなたは遥か遠くで微笑んでいる

焼きたてのベーグルのような
その手に自らの手を重ねたい
ああ、生きている
追えば追うほど私は逃げ腰
あなたはいつも泰然と優しい

あなたの

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詩 「名前」

詩 「名前」

その濃紺の小春日は
わたしの背中を静かに焼いた
幾度となくあなたのお名前を
心のうちで呼んでみては
わたしは冷却を試みる
それが熱を高めることを知らずに

枯葉の道の清い風
人肌の揚げパンはざらついて輝く
あなたはわたしの名前を
その声で呼んでくださった
その刹那、そのとこしえ
わたしはわたしの名前をすきになった

夜雨とまじわる木犀の香り
わたしの名前を確かに呼んだ
あなたの手より与えられる

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詩 「ふあふあ」

詩 「ふあふあ」

わたしずっとふあふあしてます
しりあってずっとゆめのなか
しおさいはとおくねこののど
ふあふあはあまいのです
あおいろのふかいきゃんでーです
ごほうびにもらえるやつです

わたしずっとこげてます
くれーむぶりゅれのてらてらです
はくばのかがみにかぜのおと
おてがみをてでわたしたとき
やっとわたしはわたしがみえた
あなたはなにをみましたか

わたしずっとふるえてます
おまっちゃあいすのつめたさで

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詩 「マグマ」

詩 「マグマ」




マグマ
ワタシ
スベテ
アナタ
マグマ



マグマ
アナタ
イチブ
ワタシ
マグマ


詩 「美しい訓示」

詩 「美しい訓示」

「青いランプを探してご覧」
噫なんて美しい訓示だろう
こんなに温かい言葉の山脈を
私一人が享受する
また小さな罪を作ってしまった

死の鼻息が私にかかるたび
私は青いランプを探す
プラットフォームの端にすら見つからず
錯乱した私はあなたを青いランプにした
罪がまた増え、私は救われる

青いランプは私の希望
消えることのない灯り
何よりも信じられる虚ろ
あなたと私の縁(よすが)
知らぬ間にできた痣

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詩 「鼻を触る」

詩 「鼻を触る」

「あなたに嫌われても構わない」
そう心で呟いて
私は私の鼻を触る
「あなたとの縁は切れない」
私は私の髪をほどく
「あなたはいつか許してくれる」
私は私の胸を撫でてやる
「あなたは私を面白いという」
私は私の目を擦る
「あなたは私を信じている」
私は私の首を引っ掻く
「あなたは私に愛を与える」
私は私の靤(にきび)を潰す

詩 「ほんとう」

詩 「ほんとう」

ほんとうのさよならは
じつのところありませぬ
でもむじょうでしょう
そう、むじょうなら
はじめましてがありまする
はじめましてとさよならは
いっしょのうんめいなのです

ほんとうのあなたは
いつしにますか
わたしがしねばおわりなの
よくわかりませぬ
でも、もうえんはきれぬから
しんでもいきてもかわらない
またあうひまでがあるのです

ほんとうのわたしは
まゆげをまちがえてそる
ひともじぶんもきずつ

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