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詩 「匂い」

あなたの首筋は夕焼けの匂い
燃えていて、懐かしくて
優しくて、事実だった
たしかにつかまえたその匂い
あなたの首に私の鼻先、本当だよ
きりきり走り回る風
ついさっき思い出した
だって今日は寒かったから
あの日も遠い秋だった
あなたの放つ甘美な情緒に
夢中になった私だから
シュガーを入れそびれたカフェラテは
なんだかひとり苦かった
だからよく覚えている、きっと

あなたの首筋は夕焼けの匂い
あらゆる季節に埋没したけれど
また何度目かの秋が
私の六感を刺激してる
あなたに触れたことない、本当だよ
あなたに触れたくて
宙を弄ったこの指は
からっとした空を虚しく切る
もうずっと口渇にあえぐ
死に怯えるほどの乾燥は
簡単に着火してしまうだろう
ずいぶん疲れたみたいだし
ずいぶん遠くまで辿り着いた
私は秋に巣食う化け物、きっと

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