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詩 「水粒(みつぼ)」

知らぬ間にできた痣は
知らぬ間に消えていくが
引っ掻き傷は年輪となり
深く私に刻まれる
生まれつきの斜指(しゃし)
生まれつきの刺青(しせい)
全ては何かのシグナル
そして何かのアンテナ
天藍色の送受信
Hello, I am nothing.

私は私と出逢うために
この世に生まれてきた
私は皆と出逢うために
この世に生まれてきた
私の存在の危うさに
どうにもままならぬ時
皆が442Hzで教えてくれる
「大丈夫、あなたはこれからも存在する」
私は自らの存在を慈しむべく
麗らかな闘争の道をいく

唇の薄皮を剥いだ
滲んだ血の味で私を知る
滲んだ血の色で私を赦す
「私は私を赦します」
メタセコイアの並木道で
純な朝靄を吸い込んだ
呼応するように風が吹き
祈りのことばは水粒(みつぼ)となった
私は私として、私は皆として
私は皆として、私は私として

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