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【読書感想文】変な家2~11の間取り図~/雨穴 ※ネタバレ注意

今回の読書感想文はこちら。

話題になっているので、ミステリーを普段読まなくても知っている方も多いかも?
待望の続編です。


作者の元へ持ち込まれた、奇妙な間取り図たち

主人公は、【変な家】を執筆した筆者。
【変な家】が話題になって以来、筆者の元へはおかしな間取りが次々と送られてくるようになります。
大抵はオチがないもの、或いは特におかしくもないものばかり。けれどその中には確かに奇妙だと思えるものもあり、それらが結びついているような気がしてならない筆者は、調査へと乗り出します。

謎、謎、また謎…溢れ出る謎の数々

それらの建物はある地域もバラバラだし、建物の種類も異なります。
一軒家だったり、大きなお屋敷だったり、水車小屋だったり…でもそれらには、必ず奇妙なところがいくつか存在しているのです。
例えば、一軒家にある「行き止まりになっている廊下」。普通、廊下には必ずその先に部屋などの空間があるのに、その廊下は壁になっている。何故こんな廊下が存在しているのか?
違う家では、部屋をなくす減築工事が行われていたり、逆にスペースを加える増築工事が行われている。どうしてそんなことをしなければならないのか?
また水車小屋には、壁におかしなへこみがある。はっきりと意図的につくられたそのスペースは、何をするためのものなのか?

11の章の中でも核となるのは、とある宗教団体へ潜入取材を行ったレポートです。
それは『ある条件』を満たしていれば比較的簡単に入信できるという新興宗教。ですがその宗教が信仰するご神体は驚くべきものだし、行われている光景も意味のわからないことばかり。そしてこの宗教団体の建物もご多聞に漏れず、変な形をしています。
『ある条件』とは?その御神体の正体は?この建物の意味は?
謎が謎を呼び、果たしてどう解決へと導かれるのか。筆者はそれらを引っ下げ、友人である設計士・栗原の元を訪ねます。

鍵は『宗教』『親子』、そして『間取り』

栗原は前作にも登場し、謎を解明したいわば探偵役です。
今回もその力を惜しみなく発揮し、積み重なった謎を次々解決していきます。宗教団体の謎から始まり、そこからするすると他の謎も紐解いていってしまう。間取り図つきで説明してくれるので、非常にわかりやすくて有難い。
栗原の力で、謎はすべて解決…とはならず。
終わったと思ったら、そこからもうひとひねり、話はまた異なる方向へと進みだします。

先ほども書いたように、話の軸となるのは宗教団体の謎です。
そしてまた関係してくるのが『親と子』です。
と言ってもその関係性は様々ですが、作中では親と子の関係性がこの謎の元凶とも言えると思います。
ただ、ぶっちゃけ作中のどの親子もあまり幸せそうには見えません。特に『おじさんの家』は読んでいるのが辛くなります。あの男殴ってやりたい。
それに入信できる『ある条件』というのも、決して褒められたものではありません。「子どものため」と信者たちは藁にもすがる思いだったのかもしれませんが、自己満足からは抜け出せていない。結局は罪悪感からくる贖罪にしかならないのです。
何に対する贖罪か、鋭い方はわかるかもしれないですね。

11の間取りの謎が分かった時、それは一つの線になる

前編が11章あるので結構なボリュームなんですが、間取りやイラストが細かく差し込まれているので非常に読みやすくておもしろいです。
また宗教団体という怪しいワードも出てきますが、オカルトな雰囲気もあった前作と比べるとミステリー要素がより強いです。殺人犯を探すといういかにもなミステリーではないけど、真相を追っていく過程にわくわくしてしまいます。
前作を読んだ時も思いましたが、間取り図と一緒に小説を書けるって、本当に凄い技術です。感服します。
ではでは、また次の投稿で。

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