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厳しいからやめる、緩いからやめない、ではない。

22年4月いわゆる「パワハラ防止法」が全面施行された。

大企業のミドルとマネジメントについて議論する時、

まず出てくるのは

「パワハラがこわくて厳しくできない」

である。

一方で、参照した記事からの引用では、

新入社員期に職場の上司・先輩から叱責される機会が「一度もなかった割合」は、1999-2004年卒でみると9.6%。この割合は入社年が最近になるほど高くなっており、直近の新入社員では25.2%になっている。

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とのこと。

陰湿ないじめや不当な圧力が組織内に一定数存在するのは事実だが、適切な指導とパワハラの線引きを行わない限り、チームパフォーマンスをあげることはできない。

どうやらこの記事のように、ようやく経験のない若年層サラリーマンにも、本能的にゆるい組織が危険であることを察知できるほどに、日本の多くの企業組織が、自らを成長せしめ自身の価値向上にはつなげていく土壌になっていないということだろう。

成長は、不足の認識からはじまるが、ゆるい組織では明確な超えるべき目標もあいまい、明確な目標があってもパワハラを恐れて不足を指摘しない、カイゼンを求めない、ときたら成長の”機会”すらも奪われる。

つまり、成長意思のあるポテンシャルある若手ほど、早々にゆるい環境は危険だと察知し、離脱することになる。

ちなみに、目標すら不明確である場合、みんな大好きなモチベーションにも影響する。本来の意味である「内発的動機(付け)」は内発なのだから、明確な目標の設定とそのハードルのクリア以外、”内発的”に動機を発生させることはできない。

巷で使用されているモチベーションは「やる気」「やる気の源泉」を”外的に”上げるとか与えるといった意味合いで使っているが、そもそも誤用である。

単なる”テンション”程度の気分の浮き沈みをマネジメントの重要な要素として使ってはならない。

最後に、適切な指導とパワハラの線引きについて。

境界線は「感情」や上司の「個人的見解」が指導に介入するか否か、である。

白バイ隊員に交通違反でキップを切られる時「国家のパワハラだ」とはならない。あくまでルールに基づいた、ルールからの差異を指摘しているに過ぎない。

よって、求める成果に対しての差分を指摘し、(上司部下がともに)改善策を考える場合、パワハラにならない。

時間とセットで物事を考える時、厳しいマネジメントは”今”という時間では嫌なこと、ゆるいマネジメントは楽なこと。通常、上司部下の時間感覚は一致することなく認識として利益相反する。マネジメントは未来を見据えた、適切な指導を展開しなければならない。

現代のゆるい組織は経験のない若手にも長期的に見て成長できない⇒スキルがつかない⇒糧が増えない、とわかるほどに危険な状態なのだ。


■この記事を書いた人
冨樫篤史
2002年、立教大学経済学部を卒業後、株式会社ジェイエイシージャパン(現ジェイエイシーリクルートメント)に入社。おもに幹部クラスの人材斡旋や企業の課題解決を提案。12年従事したのち2015年10月に識学に入社。大阪支店の支店長、人材開発責任者などを経て、現在は出資先支援に従事。識学主席研究員。