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だからわたしは、今日も自分で歩き続ける。


今日、まったく真逆のものを見た。


彼と同棲を始めた。

そして、約1年暮らした。
 
結婚が前提で暮らしてたわけでもなく、偶然が重なり何となく始まったのだった。

そして、正式に結婚しようという話になった。

同棲していることは既に親兄弟に話してあったから、ちゃんと入籍をすることになったと伝えると、その家族はみな喜んだ。



─────── そんな、彼女。

実は、彼女ひとりではまともに暮らせない。

食事は、基本的にお菓子かコンビニで買ったお弁当。

夜遅くまでスマホをいじりゲームをして、朝はひとりでは起きれない。

職場を無断欠勤することも珍しくなかった。一時期上司から指導されたが、その生活はまったく改まることはなかった。


でも、偶然その彼に出会い、
拾われるように一緒に暮らし始めた。

優しい彼は、朝になると彼女を起こした。

彼女が遅刻しないようにと、職場まで付き添った。

そんな彼が仕事で帰りが遅い日に、さすがにお菓子やコンビニ弁当だけを用意するわけにいかず、彼女は平日に簡単な料理をするようになった。

週末の夜は、毎週二人で外食。
お金に余裕のある彼の方がいつもご馳走する。

一緒に暮らして彼女が払わなくなった家賃を貯金して、コロナで人々が家にこもっている間にひっそりと二人で沖縄旅行を楽しんできた。


入籍は、彼の方から提案したそうだ。


彼女の職場にも結婚報告をした。

すると、上司と同僚から、お祝いの寄せ書きと花束がサプライズでプレゼントされた。

とにかく、周囲に恵まれていた。


そんな彼女は、

「今日は珍しく、仕事の後に彼と待ち合わせてごはん食べて帰るんです」


と、幸せそうにわたしに告げたのだった。





彼と同棲を始めた。

そして、約1年暮らした。

正式に結婚するために、一緒に暮らしてお金を二人で貯めようという話になったのだった。

そのために、部屋の家賃はわたしが負担するから、その分あなたも無駄遣いしないで貯金してね、と彼に告げた。

まだ定職がはっきりとしない彼と同棲していることは、親兄弟には話せなかった。
でも、そのうちまともに報告できることを彼女は夢見ていた。

もちろん、職場にも彼のことは言えなかった。


──────── そんな、彼女。

しっかり者の気丈な子で、家事もほとんど彼女がこなした。

毎日、それなりに規則正しく過ごす。
ほぼ決まった時間に寝て、決まった時間に起きる。


仕事は、きちんと目標があって努力を重ね、確実にキャリアアップしている。

彼女の何がそんなに彼の気に障ったかわからないが、彼と彼女は喧嘩するようになった。
優等生の彼女が窮屈だったのか、その時なかなか定職につけなかった彼の劣等感が発端なのか。

喧嘩のあげく、彼は彼女に暴力的な態度をとるようになった。


別れ話は、耐えきれなくなった彼女の方から提案したそうだ。

そして、彼女は引っ越し、彼の荷物はモトカノの手により彼の実家へ送り返された。


彼女の方の気持ちは終わってるのに、彼は復縁したいといまだに連絡をしてくる。
彼はようやく就職したらしい。

彼女はたまらなくなり、弁護士を間にたてることにした。

しかし、それでも彼はしつように連絡を迫ってくる。


そんな彼女は、

「暴力のことも含めて、彼の方からせめて慰謝料を払っていただき誠意を見せてもらわないと、色々なことを許せないんです」

と、きっぱりとわたしに告げたのだった。




たまたま今日、この真逆の二人と話す機会があった。

もちろん、別々の場で。

二人は、お互いにお互いを知らない。


二人に共通することは、
同じ20代後半であること、
タイプは違うけれど美人であること。


一人目の彼女は、
何もしなくても救いの手がふってきた。

二人目の彼女は、
真面目に生きていただけなのに、戦わねばならなくなった。



ねぇ、
この謎解きを、誰か教えてよ。

知ってる、納得できる答えは
『 運 』でしかない。

真面目に頑張れば救われるわけでもない。

適当に生きても落ちぶれるとは限らない。



二人の話を聞いて、

その落差に疲れ果てたわたしは、

近くにいた55才の女性に聞いてみた。

「今、あなたは幸せですか?」

すると、彼女は

「そりゃあ色々あるけど、
プラスマイナスしたら、幸せかな」

と、迷うことなくわたしに答えた。

考えることなくそう言えることを、
わたしは羨ましいと思った。

その方は、子育てや介護で色々と大変な思いをされている。
でも、どんな時でも笑顔を忘れない。
絵に描いたような良い方だ。




わたしは、
プラスマイナスしたら、マイナスだ。


わたしにプラスがあるのは知っている。

それでも、

『 わたしらしく生きてはいない 』

というマイナスが大きすぎる。



布団にひとりでくるまって考える。


自分のプラスマイナスのうちのプラスを
限りなく過大評価して膨らませ、
マイナスを越えてるんだと本気で信じられる、そんな虚構の目。

それを持たねば、
わたしはシアワセだと
答えられないのだろうか。


わたしらしく、は許されず、
どんなに辛い時でも笑えるような根性を持たねば、わたしは救われないのだろうか。


わたしも、
そして、二人目の彼女も。


ねぇ、
誰か教えてよ。

真面目に生きようとすることだけでは、
シアワセはやってこない。


ねぇ、どうして?

……… 知ってる。

知ってる、一番すんなりと
納得できる答えは
『 宿命 』しかない。

あらかじめ命に宿りし、
どうしても抗えないもの。


そんなものが、必ずあるのだと
わたしは 知ってる。



でも、
そんなものにただ流されて
泣いてばかりいたくないから、
戦うのだ。


二人目の彼女も、
そして、わたしも。


二人目の彼女に
いつか、心から笑える日が来ますように。


わたしはずっと、
眠れず布団にくるまったまま。

そうして朝がきたら、
また、布団から出る。


悪い方へと流されないために、戦う。

そして、死ぬまでに
彼が待っているところまで
たどり着けるように。


辛いときの笑い方は、
よくわからない。

でも、
彼のところにたどりつけば
わたしはシアワセだと
心から笑えることは、知っている。


だから、
布団から出て、立ち上がって、
自分の足で歩き続ける。







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