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虚構の傷を買う

時に鈍感になることで救われることもある。日常生活を生きる中で『鈍感化』のスキルは必須能力だ。

内田春菊さんの『南くんの恋人』を読んだ。南くんとその恋人、小さくなったちよみちゃんの日常生活を描いた漫画。喧々囂々のラストシーンと噂は聞いていたので、常に予防線を平行させて読んでいた。噂のラスト、心の平衡を保ったまま読み終える事が出来た。でも損した気分もある。フィクションの特権を蔑ろにしているような。

合法的に虚構の傷を買うことも悪くはない気がする。日常の中の負の堆積を、虚構の中で決壊させ、浄化する。泣くのは嫌だ。でも涙を嫌いにはなりたくない。繊細さと鈍感さ、その天秤を測りつつ、物事と向き合うこと。難しいし面倒くさいし、何より怖い。

リメイク作『南くんは恋人』ではチャレンジしてみよう。でも次は笑顔で読了したいな、なんて希望的観測。

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