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入れ歯か、インプラントか迷ったら…【①インプラントのメリットー歯科医師100人に聞いた】

 プライベートの場で、「日本歯科新聞社に勤めています」と言うと、「入れ歯にするか、インプラントにするか悩んでいるのですが…」と、相談を受けることがよくあります。

 しかし、残念ながら、私たちは医療者ではないので、責任を持ってアドバイスすることができません。

 また、インプラント治療については、歯科医療者の間でも、「すでに確立された、有効性の高い技術」という推進派と、「侵襲が大きい外科治療で、その後の周囲炎なども心配」という慎重派と、今でも大きく見解が分かれています

 日本歯科新聞社では、「インプラント・バブル」と呼ばれていた2012~2014年、読者モニターの歯科医師100人を対象に、メリット・デメリットについてのアンケートを行いました。
 今回は、メリットについてご紹介します。

 入れ歯か、インプラント治療かで迷っている患者さんにお役立ていただければ幸いです。



メリット① 他の歯に負担をかけずにすむ


○第二の永久歯と言えると思う。欠損部の隣接歯の天然歯を削らないですむ

イラスト:関口紀子

○ブリッジのように欠損部の隣の歯を破壊しなくても、確実な咬合、咀嚼能力の回復が得られる

○近年のシステムでは、どれを用いても審美性にも優れている。補綴処置のオプションとしては一種の「理想形」と言えると思う

○すれ違い咬合が避けられることで、残存歯への負担が軽減できる

○将来的に、すれ違い咬合のような咬合崩壊が予測されるような症例では、インプラントはその進行を止めることができる可能性が最も高い手段


メリット② 見た目が良い


○入れ歯のように、周りに気づかれずにすむ

○義歯に比べると審美的(見た目の美しさ)に勝り、心理的にも自信が得られる

○義歯のわずらわしさ、審美性の問題などは、比較的若い年齢層(特に女性)での欠損症例で顕著であり、インプラントにはそのような問題が存在しない。心理的な面でも、インプラントに期待する中年女性が多いのは当然だと思う

○将来、さまざまな問題が発生する心配がないわけではないが、「若々しさ」を取り戻すには、大きな意義のある補綴様式であることは間違いない。ただ、そんな患者さんもいずれは老いていくのだが…


メリット③ 噛み心地が良い


○違和感がない。天然歯と同じように噛める

○義歯(入れ歯やブリッジ)では難症例になる欠損様式でも、インプラントではそれほどのテクニカルセンシティビティ(技術的な感度)なく咬合回復できる。ただし、咬合をちゃんと勉強した先生が施術した場合だけ!


メリット④ 咬合力が上がる


○義歯より咬合力が上がり、天然歯の噛み応えに近く、手術の負担に耐える価値のあるQOL(生活の質)が得られ、アンチエイジング効果もある

○私自身、患者としてインプラントを埋入したことがないので、「天然の歯と同じように噛める」とまでは実感として断言できないものの、従来の様式では回復不可能と判断された症例でも、固定性の補綴によって咬合回復ができるのはたしかだと思う。条件にもよるが、天然歯よりも噛めるようになる可能性もある

○入れ歯などのように、顎堤の形態に影響を受けることなく、咬合支持を回復することができる

○骨に直接咬合圧を伝えられる唯一の方法


メリット⑤ 会話での違和感なし


○形態、機能に違和感がなく、発音障害も防げる。食事、会話での違和感がないため、QOLを大幅に改善できる

イラスト:関口紀子


その他のメリット


○義歯を取り外したりするわずらわしさがなくなる

○インプラント治療を受けたことがきっかけで、メインテナンス受診をきちんとするようになったり、禁煙したりと、生活習慣改善のスタート地点になることが多い

○入れ歯を使っていると顎堤が吸収されてしまうが、インプラントでは顎堤の吸収が防げると思われる

○歯列弓の曲がり角である3番は、ブリッジで隣在歯とつなげてしまうと、呼吸が苦しくなったり肩甲骨が開きにくくなるなどの弊害が出ることがある。それを防げるのが利点

○デンチャーやブリッジよりも、患者さんの満足度が高いのは事実。費用の高さ、手術という痛み(実際には抜歯よりも軽いとされるが、患者さんの多くがかなり重大なことと捉えている)を覚悟の上で、インプラントを希望する患者さんの切実な思いを考えれば、インプラントという補綴オプションを安易に遠ざけるのは妥当ではない

○骨を削る処置がリスクやデメリットと見なされる場合もあるが、その分、初期固定不良などの短期的な失敗では、リカバリーのオプションがいくつもある。リカバリーの難易度はパーシャルデンチャー(部分入れ歯)より難しく、ブリッジより容易と感じる。インプラントの外科的側面を過大に考え、自分の医院では対応できずに専門医療機関に紹介する歯科医院が多いが、それでもなお、患者さんの信頼をつなげられる関係性があるのであれば、歯科界の一部で過剰に強調されているような「不可逆的損傷」の部分は、それほど大きく捉える必要はない

○患者さん、歯科医師ともに、欠損補綴、矯正治療、残存歯の保護、予後不明な病態の歯牙に対する治療選択肢が増えたことが良い

○予測が難しい、いわゆる「インプラントの失敗」さえなければ、インプラントが補綴様式として有している特徴は全部がメリットと言える。つまりは結果がすべてであり、それはう蝕治療、歯冠修復、矯正なども同じではないか



★インプラントのデメリットを知るには…
     ↓   ↓   ↓
https://note.com/shikashinbun/n/nf0e978f274a8


【出典】歯科医師100人に聞いた ―インプラントのメリット・デメリット
      ↓   ↓   ↓



この記事を書いた人
水野麻由子【日本歯科新聞社制作局】
制作局ディレクター、歯科出版アドバイザー。歯科医院経営・総合情報誌『アポロニア21』の企画・編集に25年以上携わり、経営書を中心に50冊以上の書籍を企画・取材・編集。
ヒトの「肩書」と「顔」がなかなか覚えられないが、才能は忘れない。ヒト、モノ、会社などの「ここがすごい!」という光っているところを見出すのが得意かも。
〔主な担当書籍〕
『「歯科プロサポーター」24人に聞いた・よくある経営の悩みと解決法』
『歯科医院のラクわかり経営学』
『100円グッズから始める 歯科医院の整理・収納アイデア集』
『事例に学ぶ・歯科法律トラブルの傾向と対策』
『歯科医院デザインCatalog』シリーズ
『歯科医院のためのTHE指導・監査』
『食べる・飲むメカニズム』
『歯科医師100人に聞いたーインプラントのメリット・デメリット』





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