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シカク運営振り返り記 第32回 千鳥橋に移転する(たけしげみゆき)

シカクが中津商店街から現在の千鳥橋へ移転する話が持ち上がったのは、2017年が明けて間もない頃だった。

私と初代店長Bは、その少し前から別の場所に移動するか倉庫を借りたいと考えていた。商品や出版物の在庫がどんどん増え、置き場所が限界に達していたからだ。
近所の不動産屋にいい物件がないか聞いてみたこともあったが、店舗兼住居の家賃が1万5千円というおままごとレベルの金銭感覚で生きて来た我々(詳細は第10回)が納得できる物件を見つけるのは容易ではなかった。

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そんな折、友人が「此花区の千鳥橋駅周辺で開催されていた『空き家紹介ツアー』という町歩きイベントに参加したらよさそうな物件があったよ」と教えてくれたので、管理会社に問い合わせをして内見に行ってみた。

その物件は2階建の木造家屋。以前は2階はアパート、1階はガレージとして使われていたらしい。
このガレージを改装して店舗にしたら、広さが今の店舗の約3倍になる。シカクの在庫を置くには十分の広さだ。
そして2階にはアパートの設備が残っているため、引っ越しも可能。中津商店街のオンボロぶりに辟易していた私は、少しでも綺麗な家に住みたくて仕方がなかった。この物件も築50年なので決して綺麗ではなかったが、推定築100年の中津商店街と比べたらはるかに快適そうだ。

……だが1つ問題が。現在ガレージは家主の倉庫となっているようで、建築関係の資材らしきもの、農耕具、大量のガラス板などなど、どうやって処分したらいいか想像もつかないものがぎゅうぎゅう詰めに置かれている。

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そして提示された条件は「現況ママ」。つまり、このわけのわからない大量のあれこれも一緒に押し付けるから、そっちで適当に処分してちょうだいということだ。改装は自由にやってOK。
また金銭面の条件も、中津の店舗と比べるとだいぶ現実的な金額。もしここに移転するなら、今までよりも収入は増やさないといけない。

とはいえ今の店舗のキャパはすでに限界なので、これ以上今の暮らしに安住しても生活レベルはずっと向上しない。幸い私の手元には夜勤バイトで貯めたお金があるので、事業の規模を拡大するための先行投資をする余裕はある。生活をよりよくするためにバイトと貯金に励んでいたのだから(第29回参照)、今こそ一念発起のタイミングであるような気がした。
そういうことを考え、協力してくれそうな人に相談もして、最終的にシカクの移転と我々の引っ越しを決めた。

改装工事は、前回の工事の時と同じくお抱え大工の田中さんに依頼した。前の持ち主のゴミの片付け、改装工事、移転作業をたった3ヶ月ほどでやって、7月にはシカクリニューアルオープンというかなりの突貫スケジュール。オープンの日は毎度のことながら深く考えずに決めた。かなりの無理が必要でどうなることかと思ったが、結果的にはどうにかなった。

改装や移転作業にまつわるあれこれは後にして、まずは写真でお店のビフォーアフターをお見せします。

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最初に先ほどもお見せした、意味不明なオブジェクトがゴッチャリ積み上がったガレージ部分。

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ゴミを片付けると、ようやく本来の広さが明らかに。

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壁を白く塗り、棚などを置いて、

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こんな感じになりました!
……ちなみに今はもっと綺麗です。

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入口から見て左奥のほうは、なぜか床がなく土がむき出しになっていたり、床があるところも床板がかなり傷んでいたりとエキサイティングな状態。

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むき出しになった土を固めて(「ヨイトマケ」と呼ばれるこの作業が全行程の中で一番しんどかった……)基礎を作り、

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床板と壁を貼り

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最終的にはギャラリースペースになりました!

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そしてお店の入り口は、ガレージだったのでシャッターしかないところに壁を作り

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こうなりました。

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ちなみに左側に写っている植木鉢の物体は、初代店長Bが作った自称現代アート作品。イーゼルにダンボールがくっついてるのは、私が「イベントの情報やお知らせを貼れる看板が欲しい」と言ったら「これでいいやん」と自信満々にBが用意したもの。どちらもBがシカクからいなくなった瞬間捨てた。

なお現在のシカクの入り口と、外から見た店内の雰囲気はこんな感じ。

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この写真1枚とっても、シカクが当時よりいい感じになっていることがお分りいただけるのではないだろうか。
おいおい書いていくが、Bがいなくなってから私が自分の裁量でガンガン設備投資できるようになり、そこに整理整頓や収納術に長けたあまみ・おだ犬夫妻の知恵が加わった結果、もはや別の店としか思えないほど空間が整い、商品も見やすくなった。あまりに雰囲気が変わったので、品揃えは変わっていないにも関わらずGoogleの口コミに「以前のほうがサブカルっぽい品揃えでよかった」と悪口を書かれたほどだ。

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……話が逸れたが、そんなこんなで2017年7月に新店舗を無事オープンしたシカク。だが実は新展開を迎えたのは、それだけではなかった。
かつてシカクがあった中津商店街の物件は引き払わず、そこをシカクの姉妹店ギャラリー「ハッカク」として同月オープンしたのだ。

夢の2店舗経営というわかりやすい事業拡大を成し遂げた我々。しかし結果的にこのハッカクが営業したのはたった4ヶ月だけで、ほとんど幻の店となった。
次回はそんなハッカクが誕生した経緯と、シカクの新店舗改装作業を経た私が、ついに「全然仕事をしてないBがまたいつかシカクの仕事をしてくれるようになるかもしれない」という望みを完全に捨て去った話を書く。

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