見出し画像

鹿田、夏の白光に噎せる

肌寒い春にいて、なんだか目の覚めた様な気もするのだが、一体目覚めたところで広大な無意味の世界にぽつねんと落とされ、前後不覚で路頭に迷う鹿田である。羽織るものも一応持ってきたのだが春向きの薄手の上着で、体を両手で抱いてはクシュンクシュンとくしゃみをする始末である。勿論花粉もいる、おまけにも1つクシュンッ、だ。

ただ、悪いことだけという事でもなく、おかげで桜はもう少し持ちそうだし(世間的には)、鹿田とて、もう、ここまで来てしまえばその位は呑気に構えていられる程度のズレである。夏が待ち遠しいというだけで、花自体が決して嫌いと言う訳でもないし。

花も葉っぱも美しいと思うよ。
そんな自然の移ろいを肌に感じながら過ごせるこの日々に幸せを感じない訳でもない。これほど寒いのも、もうほんの数日で、あっという間に平均気温は20℃を超えるだろう。ならば貴重な数日間、春の名残をゆっくり味わおうという次第だ。

あ、鹿田です、よろしくね。

そんなこんなで僕は今、ストーブの効いたとある部屋の中で寛いでいる。右手に窓があり、白いレースカーテン越しに白い空が、見えている。白日だ。時には誰かを知らず知らずのうちに傷つけてしまっていると反省している。あ、白々しくて嘘がバレた?嘘なんてついてないもんねー!と、鹿田はしらっぱくれる。知らんぷりする。うそ、ごめん、白状する。僕は潔白だ!

鹿田は無意味が好きで困る。そう、今日もまたなんの計画性もなくただただ書き連ねていくよ、執筆欲のままにね。計画書などいつも白紙だ!すごいだろ。

みんなに白けられても困るのでここら辺で話題を変えよう。う、夏の白光が眩しい、それをまた跳ね返す、白いTシャツも眩しい。ああ、空には輝くほどの白雲。白菜くおう。


ネタも尽きたので本当に話題を変える。しつこくやり過ぎてみんなに嫌われちゃったら顔面蒼白どころじゃないからな。

お茶を飲む。
コンビニで買ったおーいお茶のほうじ茶だ。少し落ち着けと自分に言い聞かすようにゆっくりと読む。

それでも、ひっそりと、実は桜の花が散り始めたのだよ。まだ数日は保ちそうであるが、確かにピークは越えて、所々の小枝が緑化しているものもある。

季節は、もうなにを跨ぐことなく直結して、時期に初夏なのだ。

あの青田風に吹かれて空を見上げたいね。
僕はひと足早く麦わら帽子を被り、まだ心地良いくらいの天気のその初夏の日の下、そっと額の汗を手ぬぐいで拭うよ。本当は汗なんて1つもないんだ。人に知られず涙を拭くためなのさ。なんで泣くのかだって?そんなの、鹿田にもわからないのさ。

夏が好きすぎて困る。
夏が愛しくて愛しくて仕方無い。
夏がいなければ鹿田もいないよ。
蝉よ啼け!鹿田の嗚咽を消しておくれ。
蛙よ啼け!賑やかに煽てておくれよ。

蝉はまだ、だけど蛙は鳴き出したね。あの初夏の夜を賑やかに、それでいて落ち着いた雰囲気にしてくれる蛙鳴。実はなんの蛙か知らない。アマガエルなのかな?ま、なんでもいいんだ、その蛙が、鳴いては響き合う夜な夜な青田の合唱会を、今から待ち遠しくて仕方無い。賑やかな夜が、楽しみで楽しみで、しかたない。


僕も今年は、参戦しようかな。
毎夜毎夜、歯磨きのとき縁側に出るよ。
コロナの予防も兼ねてさ、うがいをするんだ、外で。
ガラガラガラガラガラ。
ゲコゲコゲコゲコゲコ。

しかし今一つ腑に落ちず僕はうがいをやめ、蛙に謝罪と言い訳をする。

「ごめん、僕、上戸なんだ」


そんで胸いっぱいになり、もう一本、ビールで夏に付き合う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?