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ピエール・エルメと書体“Caslon”そして“Futura”

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


映画またはファッションと書体

書体と映画またはファッションとの関係の記事はこちらのマガジンにまとめています。


「ピエール・エルメ」というブランド

香港のピエール・エルメ
画像出典:Wonderwall
ピエール・エルメ氏(2017)
By Georges Biard, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=62329783

ピエール・エルメ(1961年11月20日生まれ)は、フランスのパティシエ、ショコラティエ。14歳の時にガストン・ルノートル(Gaston Lenôtre)に弟子入りし、キャリアをスタート。エルメは2016年「世界のベストレストラン50」によって世界最優秀パティシエの称号を与えられました。 また雑誌「ヴァニティ・フェア」によって世界で最も影響力のあるフランス人第4位に選ばれています。

ピエール・エルメは、4代続くアルザスのパティシエの家系に生まれました。14歳のとき、ヴォーグ誌に「菓子界のピカソ」と呼ばれたパティシエ、ガストン・ルノートルの元で修業を始めます。

1998年(37歳)にメゾン ピエール エルメ パリをシャルル・ズナティ(Charles Znaty)と共同で設立。同年、東京赤坂のホテルニューオータニ内に出店。2001年(40歳)には、パリのサンジェルマン・デ・プレのファッション地区、ボナパルト通り72番地にブティックをオープンしました。

東京でもパリでも、店舗はすぐに成功を収めます。毎日、熱心な美食家たちがピエール・エルメのペストリー、マカロン、ショコラを求めて、来店しました。

2004年末(43歳)には、斬新な内装デザインのパリ2号店が、ヴォギラール通り185番地にオープンしました。2005年初頭、東京にピエール・エルメ・パリの最新コンセプト店「ラグジュアリー コンビニエンスストア」と「チョコレートバー」を東京、表参道にオープン。

2012年(51歳)からは全日空で彼のデザートが提供されています。

ピエール・エルメのスタイル

控えめなパティスリーデコを好み、「砂糖を塩のように、つまり他の味を引き立てるための調味料として使う」、そして自分の評価に甘んじることなく、常に自分の作品を見直し、新しい味の領域を開拓し、自分のレシピを見直すという姿勢がエルメ氏には見られます。

その結果、ピエール・エルメはしばしば賞賛を浴び、「パティスリーの挑発者」(フード&ワイン)、「前衛的なパティシエであり、味覚の魔術師」(パリ・マッチ)、「キッチン・エンパイヤー」(ニューヨークタイムズ)[5]、「モダン・パティスリーのキング」(ガーディアン)と呼ばれ、名誉や勲章とともに、そして何よりもグルメなスイーツの愛好家から称賛の念を受けています。

エルメは、フランスのパティシエ・オブ・ザ・イヤーに最年少で選ばれ、パティシエとして唯一、芸術文化勲章シュバリエを授与されました。2007年5月には、ジャック・シラクからレジオンドヌール勲章シュバリエを授与されています。(※1)

ピエール・エルメといえば「イスパハン」
名前の由来は、バラの生産地イランの地名。
画像出典:Pierre Herme


ピエール・エルメのロゴ

ピエール・エルメのロゴ
画像出典:https://www.86champs.com/les-gourmandises-de-pierre-herme.html

ロゴのPierre Hermeの部分のベースになっている書体は、Caslon(カスロン)

Caslon

Caslon

書体名:Caslon(カスロン)
カテゴリ:セリフ体
分類:オールドスタイル
デザイナー:William Caslon
ファウンダリー:Caslon Type Foundry
リリース年:1772年

Caslon(カスロン)は、ウィリアム・カスロン1世(1692-1766年頃)がロンドンでデザインしたセリフ書体。その後、Adobeなど、さまざまなところからバリエーションがリリースされて、現代でもよく利用されている書体です。

ウィリアム・カスロン1世
in an engraved portrait by John Faber the younger
By John Faber the Younger (1684–1756) - https://www.linotype.com/7-348-7/williamcaslon.html, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=390690

カスロンは、金属活字を鋳造するための型や台紙に刻印するためのパンチの彫刻家として活躍しました。彼は、ペンで書いたような比較的有機的な構造を持つ文字を生み出しました。

このカスロンという書体は、現代でいうオールドスタイルに分類されるセリフ体の代表的な存在です。カスロンは、それまで一般的ではなかったロンドンで、活字を彫る伝統を確立しました。

カスロンの字形には、左上に凹んだくぼみのある「A」右下に下向きの突起のない「G」などがあります。「M」の側面は直線的。アセンダーとディセンダーは比較的短く、本文サイズでは、ストロークコントラストのレベルは控えめです。

イタリック体では、「h」は内側に折れ曲がり、「A」は鋭く斜めになっています。 またイタリック体の「J」はクロスバーがあります。

CaslonのAGHとイタリック体のhAJ

カスロンがこの書体を発表したのは 1722 年。書体Caslonは当時流行していた、17 世紀のオランダのオールドスタイルのデザインをベースにしており、イギリスでも広く利用されました。

書体Caslonは、その実用性の高さから、瞬く間に成功を収め、ヨーロッパとアメリカ植民地全域に普及し、印刷業者でもあったアメリカ合衆国の政治家、ベンジャミン・フランクリン( Benjamin Franklin) はこれ以外の活字をほとんど使いませんでした。アメリカ独立宣言や憲法の初版は、「Caslon」で組まれました。

ベンジャミン・フランクリン( Benjamin Franklin) (1706-1790) , North American printer, publisher, writer, scientist, inventor and statesman 79 years old.
After ジョゼフ・デュプレシ - http://www.npg.si.edu/exh/brush/ben.htm, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=52076による

AdobeのCarol Twombly は、「Caslon」を現代によみがえらせるために、William Caslon が 1734 年から 1770 年にかけて印刷したページを研究しました。


ピエール・エルメのシンボルマーク

ピエール・エルメのイニシャル「P」と「H」が一体化したシンボルマーク
Image source: Pierre Hermé Paris's Twitter


ピエール・エルメが使っている書体

ピエール・エルメのウェブサイト
Image source: Pierre Hermé Paris's Website

ピエール・エルメがウェブサイト(英語やフランス語)で使用している書体は、Futura(フツラ)です。Futuraは、今まで何度か触れてきましたが、欧文書体で世界一使われているんじゃないというくらい人気の書体です。例えば、ルイ・ヴィトンのロゴもFuturaがベースになっています。映画にも、しこたま使われています。


書体名:Futura(フツラ)
カテゴリ:サンセリフ体
分類:ジオメトリック
デザイナー: Paul Renner
ファウンダリー: Bauer Type Foundry
リリース年:1927年


Made in ピエール・エルメ

Image source: Pierre Hermé Paris's Website

東京、丸の内にピエール・エルメによる、日本各地から⾒つけたこだわりのある⾷品や、⽣産者とコラボレーションした商品などを販売するコンセプトショップが2018年にオープンしています。

「Made in ピエール・エルメ 丸の内」のインテリアデザインは、ワンダーウォールの片山正通氏。アートディレクションは、平林奈緒美氏、サウンドディレクションは、山口一郎氏と青山翔太郎氏。そして、ショップ全体の監修はmethodの山田遊氏が担当。

Made in ピエール・エルメの商品デザイン
画像出典:ELLE 


まとめ

ピエール・エルメ氏は、一号店を日本にオープンしています。その上、2018年にオープンしたMade in ピエール・エルメは、ユニークなほど日本らしさを全面に出しています。フランス人によるパティスリーにしては珍しい展開であり、しかもばっちり成功しています。すごい。

書体に関しては、Caslonをロゴに、そしてその他の書体には、Futuraを使っています。この2つの組み合わせは、王道とも言えるかもしれませんが、多くのブランドが持つ使命、「歴史と革命の共存」をかなりの直球で魅せています。

「歴史と革命の共存」という課題は、何かと出てきますので、なんとなく覚えておいておくと良いであろうテーマでもあります。

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参照

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※3


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