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知っておきたいデザイナー№5: 仲條正義

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


“知っておきたいデザイナー”×7

何のために“知っておきたい”のか、それは、デザインをなんとなくでもしっかり理解して、自分の武器にするために。デザインのみで何かの商品やサービスが売れるほどデザインは万能ではなりません。なれば、デザインをデザイナーではない方が武器にできれば良いわけです。そんなわけで、デザイナーではないかたでも「この7人は知っておきたいデザイナーたち」を紹介していきます。一人目は、スティーブ・ジョブズにも怒った巨匠、ポール・ランド氏。二人目は、日本のグラフィックデザインをがっつり底上げした、亀倉雄策氏でした。3人目は、映画のデザインを大きく前進させたソール・バス(ロゴの制作でも活躍)。4人目は、書体でもポスターでも後世に残す作品を作り上げ、アートからデザイン・広告への移行の道を作り上げたアドルフ・カッサンドルでした。今回は再び日本のデザイナーを紹介します。

今までの「知っておきたいデザイナー」の記事はこちらのマガジンにまとめています。


5人目の“仲條正義”さんはどんなデザイナー?

そして今回は5人目に、日本人の仲條 正義(なかじょう まさよし)氏を紹介します。この方のデザインも目にしたことがない日本人はほとんどいないのではないdしょうか。どんなデザイナーなのか。多くの方からたしなめられかねないのですが、わたしのなかでは、仲條正義氏はこんなデザイナーなんです。

東京のサブカルチャーからカルチャーまでの手がかり、足がかりを踊るようにして作り上げたデザイナー

仲條正義氏
画像引用:Numéro Tokyo

仲條正義氏は、1933年、東京生まれ。2回めに紹介した亀倉雄策さんが1915年生まれですので、亀倉氏の18年後に誕生した方です。2021年に肝臓がんで東京都内の自宅で死去されています。享年88歳。1933年は、第一次世界大戦(1914-1918)と第二次世界大戦(1939–1945)の間。東京藝術大学を卒業後,
1956年(23歳)に資生堂宣伝部に入社。ちなみに資生堂の創業は、1872年で銀座に「資生堂薬局」として始まっています。おしゃれで、ブランディングをしっかりしているこの企業は、150年の歴史をも持っているんです。仲條氏は、入社して3年で資生堂を退社し、1961年(28歳)で仲條デザイン事務所を設立。

以来、1968年から2008年まで、40年以上にわたり、資生堂企業文化誌『花椿』のアートディレクターを務め、資生堂パーラーのロゴおよびパッケージデザイン、銀座松屋のロゴ、東京都現代美術館のロゴなどを手掛けてきていました。以下に、仲條氏の作品を紹介していきますが、見たことがあるもの、手にしたことがあるものが出てくるのではないでしょうか。そんな仲條正義氏のデザインについて、アートディレクターの葛西薫氏は、

いつもデザインが踊っている

Casa Brutus デザイナー仲條正義とは何者か? 葛西薫と服部一成に聞きました。

と、その魅力を表現しています。以前わたしは、「デザインとは機能である」と定義していますが、仲條氏のデザインには、機能のほかに主体を持った表現の動因が含まれているように思えます。それは“不純”というより、魅了と捉えざるえない力がそこにあります。「踊る」という表現が、その定義を超えてうごめく、動的なニュアンスをうまく表現されているように思います。では、どのように踊っているのか、仲條正義氏の作品をいくつかみていきましょう。

仲條正義氏の作品

資生堂企業文化誌『花椿』のアートディレクション

「花椿」577号 1998年7月
画像引用:Numéro Tokyo
「花椿」500号 1992年2月
画像引用:Numéro Tokyo


資生堂パーラーのパッケージデザイン

資生堂パーラーのロゴとパッケージデザイン
画像引用:Tokyo Art Beat


ブティック「ザ・ギンザ」ロゴ(1975)

ブティック「ザ・ギンザ」ロゴ(1975)
画像引用:Numéro Tokyo


松屋銀座ロゴ(1978年)

銀座松屋ロゴ
画像引用:Tokyo Art Beat


東京都現代美術館ロゴ(1995)

東京都現代美術館のロゴは、ミュージアムという言葉の頭文字であるMを強調し、略称MOT(モット)という言葉からイメージされる積極性や上昇性(「もっともっと…」)を、Tの文字を+(プラス)にすることで表現いしています。

東京都現代美術館のロゴ(1995)
画像引用:Numéro Tokyo

このロゴに関して、仲條正義氏のインタビュー動画があります。


TORAYA AN STAND/トラヤあんスタンドの壁画

TORAYA AN STAND/トラヤあんスタンド新宿店の壁画
アートディレクション・クリエイティブ・ディレクション:葛西薫氏
クリエイティブディレクション:山本康一郎氏
画像引用:Casa Brutus

『暮しの手帖』の表紙イラスト

画像引用:暮しの手帖社Twitter


複合文化施設「スパイラル」のロゴ

画像引用:spiral


まとめ

撮影:若木信吾氏
画像引用:Tokyo Art Beat

いかがでしょうか。サブカルチャーとは、「一部の人々を担い手とする文化」と定義されています。東京の渋谷や銀座には、仲條正義氏が作り上げた気配がそこかしこにあります。これをサブカルチャーというフレームでくくるほうがわかりが良いのですが、一方で東京都現代美術館のロゴや資生堂が発信し続けきた花椿という情報発信メディアは、もっと広いカルチャーというフレームじゃないと収まらないものです。

いずれにしろ、仲條正義氏がどんなデザインを制作してきのかを知ると、わたしたちが彼が作り上げた世界と無関係ではないことを思い知ります。そして、たしかに踊っているように見える表現ばかりではないでしょうか。

わたしたちは、デザインのことなど知らなくても、デザイナーたちが作り上げきたものの恩恵をおそらく、たっぷりと受けて生活しているのではないでしょうか。デザインに限った話じゃありませんが。


仲條正義氏をもっと知れる本


仲條 正義 (著)『僕とデザイン』

すべて文のみ。ブックデザインは平林奈緒美氏と星野久美子氏。


仲條 正義 (著)『仲條 NAKAJO』英語版

仲條氏の作品を見たいならこちらの作品集。日本語版がなんか高くなっちゃっているので英語版をおすすめ。




参照

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