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“デザイン”と“アート”の違いとは?

“デザイン”と“アート”の違い

このブログでは、デザインもアートも取り扱いますが、両者の違いについては、世間一般でははっきりと認識されていないようです。それは、両者の違いをわける必要に迫られる場面が少ないということを意味しています。どっちでもいいですものね(笑)。どっちでもいいことを明確にする理由は、対峙するとき、つまりデザインを必要とするときやデザインに接するとき、アートを観るとき、生み出すときに向ける注意が濃くなるからです。分散された光がレーザーのように集中するとき、次への展開が実り在るものになっていくのではないでしょうか。

それでいて、定義をすることで、感受性を限定させることにはならないとも考えます。それほど狭義なものにするつもりもなく、ただ本質をあらわに(revealって英語がぴったりです)していきたいと思います。

“デザイン”とは

Steve Jobs
https://www.helpscout.com/blog/why-steve-jobs-never-listened-to-his-customers/

デザインとアートの違いを明確にする言葉を、世界的に有名なアントレプレナーが口にしています。

“Design isn’t just what it looks like and feels like — design is how it works.”
"デザインとは、単なる見た目や触り心地ではない、デザインとは、どう機能するかだ "

https://radahl.no/steve-jobs-and-design-what-the-legacy-of-innovation-means-to-ux-e890d5cd5832/

というわけで、デザインとは「機能」です。機能ということは、Apple Watchにおける歩数や運動を計測することができるそれと同じものです。テスラなどの自動運転と同じ。機能とは、それそのもの以外の何かの目的のために存在するものです。だからデザインとは、その存在意義は、その中にではなく、外にあります。まとめると

デザインとは、機能であり、その存在意義はデザインの外にある。

ということになります。一方、アートとはどんなものでしょうか?

“アート”とは

ジョットの絵画

アート(Art)の語源は、ラテン語の「芸術作品、実技、事業、工芸」を意味する「artem」だと考えられています。平たく言えば、「人の手が作りしもの」ということになります。13世紀初頭ごろには「学習や練習の結果としての技術」と定義されました。人工知能(AI)は「Artificial Intelligence」と英語で表記されますが、このArtificialは「人工の」という意味で、Artの派生語です。リベラル・アーツ(英: liberal arts)という7つの学問がありますが、「人を自由にする技術」というのが原義です。ちなみに7つの学問とは、文法学・修辞学・論理学の三学(トリウィウム)と算術・幾何学・天文学・音楽の四科(クワドリウィウム(英語版))です。

人の手がつくりしもの、ということであれば、デザインも同じですが、デザインは機能であり、暫定的であれ、一度完成されたものであるのに対して、アートは「技術」です。素晴らしい彩色でプリントされたパッケージは機能であるのに対して、それを印刷するのは技術。

とはいえ、アートは技術、ということで、定義は終わりということではありません。アートとは、自然(外界)に触れて感じたものをアウトプットしたものです

しかし、なぜ人は自分が感じたものをアウトプットするのでしょうか?

その理由は、難しく言うと「自己の拡張と他者との融合」です。簡単にいうと「自分が感じたものを他者に伝えて、なんらかのリアクションをしてもらい、世界とつながりたいから」です。

アートというものがまだこの世に何もないとき、あなたが草原を走ったり、草をはむ野生の馬の群れをみたとします。それをみて、馬の筋肉の動き、風になびくたてがみ、親馬が子を甲斐甲斐しく扱う姿に、わけもわからず心動いたとします。この心の動きはまだ自分のなかにありますが、それを自分以外の人間にも伝えたいという気持ちが湧いたとします。そのとき、自分のうちにあるそれをなんとかして自分の外に出そうとします。これがアートです。このとき、この行為の目的は、

「わたしはこう感じたんだ。この感じをあなたにも伝えたい(そして、同じように感じるのか、違うのかを知りたい。知って、他者と自分のつながりを感じたい)」

というものです。もちろん、アートは発展していくことで、それを得意とするものが農耕生活を端とする貨幣制度のなかで生き抜くために、アートを生きるための手段とすることにもなってきます。しかし本質は、「わたしが感じることを外に出してそれを人に伝えたい」というものです。

アートとは、閉じた内なる世界を外に持ち出したものです。そして自分と世界をつなげるものです。

そのコアの場所が違う

デザインとアートの違いについて、具体的なイメージをみなさんと共有したいと思います。デザインは、その本質的なその存在意義がデザインの外側にあります。デザインという塊がぼやっーーとあると想像していただきたいです。そして、その生命のようなコア(赤くてまるくてつややかなイメージ)は、そのぼやっーーとした塊の外にあるのを想像してください。これがデザインの有り様です。いっぽうでアートというぼやっーーと塊があるとき、コアはそのなかにあり、それはぼやっーーとした塊のなかでゆらぎながら輝いています。これがアートです。

デザインは、そのコアが外に有り、アートはコアがその中にあります。これがアートとデザインの違いです。


まとめ

いかがでしょうか?この話が機能するのは、主にデザインに対峙するときかもしれません。なぜなら、デザインに接するとき、わたしたちは、何らかの機能を享受するか、利用されるか、利用しようとしているときだからです。その本質を忘れると狙いが行為とぶれてしまいます。

またアートと接するときにもやはりこの話は機能すると思います。投資としてのアートであれば、また異なってきますが、自分の世界を発展させるため、教養のためにアートに接するとき、それは機能ではなく、作者の声だという本質を理解しやすくなるからです。その声をより良く理解するためには、時代や制作の背景の知識はあったほうが良いでしょう。しかし何よりそれは「何かを伝えようとしている声」だということを理解していると、わたしたちはアートに触れるとき、耳を傾けようとするはずです。

そんなわけで、アートとデザインの違いを理解していると、ビジネスにも人生にもちょっと役立つはずです。


参照


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