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バンダナに隠れた目

このサイト(mixi)をまた使い始めて三日目で思うのは、当時やり取りしていた殆どの人がもうどこかへ行ってしまったということだ。アカウントを残している人が大半だけれど、ログインしている形跡がない。今更このサイトで日記を書く意味はあまりないだろう。しかし意味のないことをやらないという理由もない。

最近の私は赤羽の回転寿司屋で大声で土下座したくなるほど慌てふためいていたり、御徒町のラーメン屋で静かに怒ったりしていた。

調子に乗って替え玉までお願いしてしまったが、意外とこんもりある麵を見て箸が進まなくなったのは、数年のうちに私の胃が小さくなったのか、怒りによるものか分からない。
「どうしてそんなに搾取されなければならないの。あなたは少しも大切にされていない」
と私は一緒に食べている、左隣の相手に言った。
「自分だってやられっぱなしじゃない。言い返したりする」
とその人は言った。言い返すくらいでは事態は変わらないというのは本人が一番分かっている。やり場のなさを抱えて生きている。他人の人生に口出しするのは柄ではないと私も自分について心得ている。相手にやり場のなさを改めて認識させるのが良いのか悪いのかも分からないうちに口に出している。久々に会ったのだからもっと楽しい話がしたいと思っているのはどちらもだ。私が相手のコップにお水を注ごうとすると、相手は手を滑らせてコップが倒れて水がこぼれ落ちた。すかさずお店の人たちがペーパータオルを持って来てくれ、私たちは謝ったりお礼を言ったりしながら周りを拭いた。

学生時代、大きな駅の構内にあるラーメン屋でアルバイトをしていた。働き始めの頃、洗い場でどんぶりを洗いまくっていると、京都弁の副店長の若い男性が来て名前を呼ばれ、
「タウパー取って」
と言われた。タウパーとは、飲食店で利用される業務用ペーパータオルの商品名である。私は名称を知らなかったので「カウパー取って」と言われているのかと思って、この人はどうして真顔でそんな卑猥なことを言うんだろう、あるとしたらご自身の下半身にお持ちなのでは、とどんぶり片手に固まったのを思い出しながら、深刻そうな面持ちをして、横にいる相手との会話に戻った。



*この文章は2024年02月17日にmixiに記載したものです。読んでくださる人があまりにいなかったものですから、こちらに再掲いたします。

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