グッとくることば
二度目の爆音が鳴った時、思わず後ろを振り返ると、幻のように鮮やかな花火が夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら時間をかけて消えた。
久々に小説の文章に震えている。
言い回しや言葉選び、テンポ、完成度。
何度も同じところを読んで、スマホのメモに書き写している。
その小説とは、又吉直樹さん作『火花』。
いや、本当に今更感しかないのだが、いま読んでいる。(読み終わってから書けという話)
お笑いを題材にした面白いポップなお話かと思ったら(失礼)、全然違った。
もちろん内容は面白いし、登場人物のボケとツッコミが絡み合う掛け合いはさすがの面白さで、思わずクスッと笑ってしまう言葉が散りばめられているのだが、
この表現である。
人間達が交差し各々の人生を燃焼する、この風景には到底及ばない。
神谷さんが相手にしているのは世間ではない。いつか世間を振り向かせるかもしれない何かだ。
全員が他人のように感じる夜が何度もあった。
この言い回し。尊い。
さすがの芥川賞受賞作。
文学を愛する人が書いた文章、というのが伝わってくる。
そんな中で、こんな言葉があった。
自分とはこうあるべきやと思って、その規範に基づいて生きてる奴って、結局は自分のモノマネやってもうてんねやろ?
グサリ。
そうなんだよな、自分とはこうあるべきなんていう「檻(オリ)」は幻想で、どんな人かなんて他の人が評価することなんだよな。
自分に自信を持つことと、自分に固執して決めつけることは違う。
慣れない環境や新しい場所に行くと、反射的にこの感覚に陥ってしまいがちだけれど、
自分の中に考えを持っていればそれで良くて、自分はこういう人間なんだと頑なになることは、何も吸収できない硬まったスポンジみたいで逆効果だよなと思う。
柔軟に、でも自分の考えは持ちながら、刺激的な環境に身を置いていきたい。
柔らかいスポンジでいたい。
そんなことを思うのです。
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しほ
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