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若手社員が会社を辞める本当の理由

竹内義晴の「これからの働き方」――この番組は、これからの働き方、組織作り、地域づくりの実務家、竹内義晴が「楽しく働く」をテーマに、組織づくりやコミュニケーション、マーケティング、キャリアデザイン、複業、テレワーク、ワーケーションなどの視点でゆるゆるとお話をしていく番組です。

いま、noteさんの #創作大賞2024 #ビジネス部門 という企画に参加しています。『「仕事っぽいシゴト」が社会の課題を解決する』というタイトルの本を作るイメージで毎日お話しています。1本目、目次はこちらです。

昨日は、「リスキリングをすれば「キャリア不安」はなくなるか?」というお話をしました。

今日は、「若手社員が会社を辞める本当の理由」というお話です。

音声はこちらです。

若い世代は、すぐに辞める?

このテキストを書いているのは2024年5月です。この季節は、新入社員のみなさんが会社に入るという時期もあって、よくメディアで「最近の若手社員はすぐにやめる」みたいな記事を、ひょっとしたらみなさんも読んだことがあるかもしれません。

「最近の若い世代はゆるいんじゃないか?」とか、「忍耐力がないんじゃないか」みたいな、世代論で語られるケースも少なくありません。

厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」では、学校を卒業して就職した人の離職状況を調べています。

令和5年10月のデータによれば、令和2年3月に大学を卒業した人の離職率は32.3%。大卒の場合、だいたい3割の人が、3年以内に辞めるという感じですね。

出典:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します | 厚生労働省

この数字が、すごく増えているのか……というと、実はそんなことはありません。少なくとも、ここ十数年は3割程度で推移しています。

出典:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します | 厚生労働省

それ以前の、平成一桁台の時は25%前後でしたが、ここを十数年は30%ほどです。なので、必ずしも現代の若い世代のみなさんの離職率が、「特別多いか?」というと、そんなことはない、ということになります。

「辞める理由」の変化

一方で、「やめる理由」というのが、「変わってきているのかもしれないな」とは思っています。なぜならば、近年「キャリアに関して不安を感じてやめる人が多いんじゃないか」という意見があるからです。

ひとつは、もとDeNAで、いまは組織基盤の構築に関する仕事をされていらっしゃる坂井風太さんのお話です。

坂井さんは、「なぜ人が会社を見切るのか」という理由について「いても無駄」と「言っても無駄」という2つの言葉で説明されています。

僕の言葉でまとめますと……

「いても無駄」とは、必ずしも、居心地が悪いわけではないのだけれども、「いまのまま、このキャリアを積んでいっても、ひょっとしたら、将来まずいんじゃないか?」とか。

あるいは、特に若い世代だったら、先輩の背中を見て、山登りをしていくフェーズですが、山登りをするための「ロールモデルになるような人がいない」から、「このままで大丈夫か?」とか、ちょっと物足りない感じがして、会社を辞める……とおっしゃっています。

職場がゆるくて、キャリアが不安

リクルートワークス研究所の古屋星斗さんも、同様のことをおっしゃっています。古屋さんは、若手社員が辞めることに関して「キャリア不安」という言葉を使って説明されています。

「近年の若手社員は、職業生活における不安が高まっているのではないか?」と。つまり、「自分は、この仕事をし続けていて本当に大丈夫なのか?」ということです。

以下、Point of view - 第225回 古屋星斗 ―キャリア不安と向き合う若者たち――「若者だけに考えさせてはいけない」二つの理由から引用します。

 筆者は、若手の能力や期待に対して仕事の負荷が著しく低い職場を「ゆるい職場」と呼称している。そして、職場環境が大きく変わった後における若手の職業生活における不安の高まりを「キャリア不安」と呼ぶ。その背景にあるのは、終身雇用、終身一社という幻想がなくなった後の労働社会でどう生きるのかという問いだ。
 昔の、といっても10年ほど前までの日本においては、会社、特に大きな会社に入れば職業人生の安心・安全を会社がある程度保証してくれるという認識は一般的だったように思う。しかし、現代の大手企業に入社する新入社員のうち、その会社に定年までいるイメージがあるのは実に20%程度にすぎないという調査もある。いつかは転職するのだ、という気持ちの中で、自分はこの仕事をし続けて本当に大丈夫なのか?と感じることがキャリア不安の根っこにある。

出典:Point of view - 第225回 古屋星斗 ―キャリア不安と向き合う若者たち――「若者だけに考えさせてはいけない」二つの理由 | WEB労政時報

というのも、近年はパワハラ・モラハラみたい関わり方が、以前に比べると問題視されるようになってきて、上司が、「できる限り優しく接するようにしよう」とか、「肯定しながら接しよう」とか、「できればトラブルにならないように、関わるのを避けよう」とか、そういったコミュニケーションを重ねられることによって、若い社員が「成長している実感がない」とか、「会社がゆるく感じる」とか、そういったことが起こっているのではないか? と。

この、「ゆるく感じる」ということについて――要は、その若手の能力や期待に対して、仕事の負荷が著しく低い職場――を古谷さんは「ゆるい職場」とおっしゃっています。

職場環境がゆるいことによって、「将来、このままで大丈夫なのか?」という不安を感じるということですね。

その結果、最終的には「会社を辞めてしまう」と。

こうしたことが、企業で起こってるいんじゃないか? という指摘です。

本当に、若手社員は「キャリアが不安」で辞めているのか?

それが「実際、どうなのか?」ということなんですけれども。

厚生労働省が令和5年3月に出した、離職理由のデータがあります。これ、面白いのでそのまま引用します。

転職者が直前の勤め先を離職した主な理由をみると、「自己都合」が75.5%と最も高くなっている(表15)。
「自己都合」による離職理由(3つまでの複数回答)をみると、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が27.2%で最も高く、次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.7%、「賃金が低かったから」が24.9%となっている。男女別にみると、男は「会社の将来に不安を感じたから」が31.0%、女は「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が27.0%と、それぞれ最も高くなっている(表16)。

出典:雇用動向調査 | 厚生労働省

個人的には、ここにある「男女別にみると、男は「会社の将来に不安を感じたから」が31.0%」がポイントだと思っていて。つまり、キャリア不安が会社を辞める要因の、大きなひとつになっているということですね。「会社の将来に不安を感じる。だから辞める」と。

もちろん、会社を辞める理由のすべてが、キャリア不安だとは思いません。何かしらのストレスがあったり、条件面といったことも当然あるでしょう。

けれども、以前の右肩上がりの時代や、一度会社に入ったら、ずっとその会社でキャリアを積むことが前提だった時代と比べると、いまは、多くの人がキャリアに不安を抱えているし、それが退職をする理由の大きな一つになっているということです。

これは、特に人事の方など、人に関わる仕事をしていらっしゃる方は、知っておいた方がいい情報ではないかと思います。

なぜならば、いま、現状の課題として「会社で起こっていること」についてお話ししてますが、キャリア不安は個人だけの問題ではなく、会社の問題でもあると思うからです。

というわけで、今日は「若手社員が会社を辞める本当の理由」というお話をしました。

では、今日の話はこれで終わりにします

次の記事:世代間ギャップは「コミュニケーションの問題」だけじゃなかった

#創作大賞2024 #ビジネス部門

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