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監査法人で働くシニアスタッフ向けにキャリア検討法を伝授する!

この記事の対象読者

修了考査も終え、会計士登録も無事に済んだシニアスタッフの方を対象にしています。監査法人で働き続けることにちょっぴり不安を感じ始めたシニアスタッフの方に、刺激は強めですが是非、読んでほしいです。

筆者の紹介

Big4大手監査法人に14年弱働き、今は退職したサラリーマンです。

自分がシニアのときは、正直あまりキャリアとか考えてなかったです。
自分自身の反省も込めて、Note書いてます。

なぜ、シニアスタッフでキャリアを考えるのか。

とても重要な話です。
シニアスタッフになられた皆様は、修了考査試験も無事合格し、対外的には、公認会計士を名乗れるようになったところではないでしょうか。
スタッフのときは、修了考査の試験要件(公認会計士登録の要件といっても良いかもしれません)に実務要件があったため、どんなにつらかったとしても、仕事がどんなにつまらなかったとしても、監査法人で働くしか選択肢がありませんでした。
シニアスタッフからは、選択肢は「ほぼ無限」にあると考えられます。

また、シニアスタッフになったとき、ライフイベントもある方は結構あります。
結婚、出産、育児、介護といった働きながらのライフイベントもこなし、キャリアを形成していく方が多い傾向にあります。

シニアスタッフの時期というのは、冷静に自分の周りを観察して、御自身の将来のために、どこのポジションに自分を置くか、したたかに考えていく必要がある時期といえるでしょう。
では一緒に考えていきましょう。

まず、パートナーを目指すか、目指さないか。自分の心に問うてみる

唐突な質問ですが、まず、「パートナーを目指すか、目指さないか」考えましょう。

パートナーを目指す覚悟のある方へ

パートナーを目指したいという方、パートナーに向けて、準備をしておく必要があります。パートナーを目指すには、監査法人にたくさん貢献していることはもちろんのこと(貢献には、たくさんの案件をこなす、稼ぐ(監査報酬、非監査報酬)、たくさん働く(稼働時間)も含みます)、シニアスタッフぐらいであれば、外部出向や海外駐在を積極的に狙ってみて下さい
他の会計士と十分な差別化ができなければ、パートナーになることは不可能であるためです。

また、パートナー、シニアマネージャーもそうですが、これらの役職になるには、上司(パートナー)の強い推薦が必要です。
実力だけで昇格できることは、ないです。
このため、社内政治といいますか、社内で自分を推薦してくれるような上司(パートナー)から頼まれ事をしたら、積極的にその業務を引き受けることも重要になってきます。かといって、意思決定権のない方からの頼まれ事ばかりこなしていても、意味はありません。
意思決定権のある上司(パートナー)から頼まれごとをされるような関係性を構築し、そして、実際に対応していく必要があります。
パートナーに最近なられた方の実績やどのような人物かをよく観察してみてください。
このあたりがわかると、それに向けてどのような準備が必要かわかってくると思います。具体的に把握すべきポイントは以下です。

  • 性別

  • 年齢

  • 学歴

  • 経歴(出向経験・海外経験含む)

  • 人間性(部下ですとか、周りからの評価含む)

  • スキル(英語力含む)

  • 働き方(労働時間、休日の過ごし方含む)

  • 担当していたクライアント、契約高

  • 誰と仕事をしていたか(その方をパートナーに推薦した方が誰か)

  • 参画していたプロジェクト

  • 日常的な立ち振る舞い(※)

  • どのようなことを日々考えているのか(※)

  • パートナー登用のプレゼンでどのようなことを話したのか(※)

  • なぜ、パートナー登用されたと御本人が考えたか(※)

※は、一度飲みに行ったり、仲良くなってからではないと聞き出せない話ですが、聞いてみるとよいと思います。
ただ、パートナーを目指すには、かなりのハードワークを長期間求められると思いますので、体調には気をつけて頂けたらなと思います。
そして、かなりの体力、精神力がないと、パートナーになってからの激務はこなせないです。よって、パートナーを目指すことができるのは、限られた方なんですよね。

パートナーを目指さない方へ

パートナーを目指さない方、目指してはいない方、は、まさにこのnoteの対象読者になります。
パートナーを目指さない場合には、いつか、監査法人を退職することになりますから、あとどれくらい監査法人で働いたら辞めるのか、監査法人で何を経験したら辞めるのか、のプランを決めておきましょう
漠然と監査法人に所属し続けることは、得策ではありません。
目的意識をもって、監査法人に所属するべきです。
そこで、次の質問を一緒に考えてみましょう。

次に、今の監査法人を離れたとしても、監査業務を続けたいと考えるか、考えないか。

監査業務を続けたいと考える方へ

パートナーは目指していないけど、今の監査法人を離れたとしても、人生の中で、今後も監査業務に携わるかもしれないという方(外部協力者のような形で携わることを検討している方含む)も、自分が得たい監査スキルを得るまで、今の監査法人で働くことをおすすめします
監査スキルには、概ね以下のような段階があります。

  • 監査基準及び監査基準委員会報告書に従って、ある程度すべての調書が作れるレベル

  • 会社法監査主査を担当できるレベル

  • 上場企業監査主査を担当できるレベル

基本的には、この3段階です。
最初の「監査基準及び監査基準委員会報告書に従って、ある程度すべての調書が作れる。」というのは、かなり大変なことなのですが、計画~監査の実施~結論までの流れ、そして調書化を一通りできるようになれば、実際にどこの監査法人に行っても、「即戦力」になると思います。
ある程度自由に働く上で、外部協力者あるいは副業可能な監査法人で自分のペースで働くという選択肢は魅力的なのですが、そのためには、「即戦力」であることは、とても重要です。
また、監査というのは「No Paper、No Work」と言われるように、最後は監査調書に残っているかどうかで判断される、極めて文書主義が強い業務なのですが、一方でクライアントとのコミュニケーションや折衝、品質管理担当パートナーや業務執行社員との協議や説明、監査チームマネジメントといったソフトスキル経験も得ることができます。

この経験を実際に、体験できるのは、「主査」あるいは「主査に近い立場」になりますので、この経験もできていると、今の監査法人を辞めたとしても、ある程度やっていける強い自信がつくのではないでしょうか。

「主査」なんて、ものすごく先だ、と思われるかもしれませんが、ファンドとか労働組合とか、小規模のジョブというものも存在するので、一人主査ジョブのようになってしまうかもしれませんが、経験を積む意味で、積極的に手を上げてみるのはいかがでしょうか。
ちなみに、私の最初の主査ジョブは、監査報酬3百万円のIPO準備会社でマンションの一室が会社のようなジョブでした。
新人スタッフと私だけで監査してましたが、審査パートナーから、いろいろと直接教えていただいたり、その後の監査経験の基礎になりました。

さらに、退職後を見据えて、特殊な業務や経験を求めるのもよいかもしれません。具体的には、以下の様な法人への監査経験です。

  • IPO準備会社

  • 海外子会社

  • パブリック(独立行政法人、学校法人、社会福祉法人など)

  • JA、その他組合

  • ファンド

といった経験です。
また、特定の業種に強くなることも良いと思います(製造業、IT、小売、建設業、金融等)。
上場企業の監査はメインでやっていないものの、上記のように、IPOやパブリック、特定の業種等にフォーカスした監査法人というのは、世の中に実は、たくさんあり、ニーズもありますので、今いる監査法人で経験できるのであれば、積極的に経験しておくことはよいことではないかと思います。

もう監査はやりたくない、と思ったら、どうするか。

監査をやりたくないと考える方へ

こういう方は結構いらっしゃいます。
監査をやりたくないと考える理由により、対応は分かれます。

監査の過酷な労働環境が要因である場合

監査の労働時間が長くすぎてきつい、あるいは、ハラスメント含め心身に影響を及ぼしかねない状況がある場合、上司(必ずパートナーです)に相談して、心身に影響を及ぼしかねない状況が解消できるように早急に相談しましょう。
そして、長時間労働の要因となっているジョブから外してもらうこと等具体的な解決策の提示を受けましょう。
パートナーの対応に不安がある場合には、必ず産業医にも相談をしましょう。
産業医に相談した場合、実は、産業医は心身に影響を及ぼしかねない状況を改善するための非常に強い権限を持ってます。
それでも改善の見込みがない場合には休職を検討し、最終手段としては、労働環境がすこしでもよい監査法人を探して転職することをおすすめします。

監査ではない、他にやりたいことがある場合

会計士の進むことのできる選択肢は、実はかなり多いので、少し考えて見ましょう。

  • 事業会社(経理、財務、IR、経営企画、内部統制、監査など、今までの監査経験を生かして、できることはとても多いです)

  • コンサル(上場企業等の監査経験を生かして、会社の内部統制や会計周りのコンサルは強みとして期待されると思います)

  • FAS(DDであれば、監査経験は全て生きると思いますし、VALにしても、のれんの評価とか、監査法人がどのような目線で監査をしてくるのかといったことを知っている経験は必ず生きてくると思います

  • 税務(税務の細かな知識はこれから勉強するしかないのですが、上場企業等の監査経験を生かして、ある程度会社の内部統制とか予算、財務とか大きな目線で助言できるのは会計士の強みと思います)

  • 証券会社(引受、審査など。IPO監査していた方であれば、監査法人での監査経験は必ず生きてくると思います)

  • 全くの別経験(いわゆる完全な転職ですね。この場合も、別経験✖監査法人経験、により希少性の高い人材になれる可能性があります)

要は、次に行く職場(たとえ、独立したとしても)でも、やはり、監査の経験が拠り所になるということなんですよね。
なので、今ある監査ジョブで経験できることを、しゃぶり尽くすくらい、しっかり経験しましょう。
その上で、自分が行くかもしれない分野で活躍する会計士(必ず誰かいます)に連絡をとってみて、話を聞いてみると良いのではないでしょうか。
監査法人のリクルーターが話しそうな、ただのいい話、では全く意味がなくて、本音の苦労話をしっかり聞くべきですね。
その苦労話を聞いても、それでも自分がやっぱりその分野に飛び込みたいと思ったなら、もう結論は決まっています。
監査法人にいながら準備をしつつ、タイミングを見計らって、その新分野に飛び込めばよいのではないでしょうか。
失敗しても、大丈夫です。
もし、失敗しても空前の人不足でもある監査の業界に戻ってくればよいわけですから。
なので、今いる監査法人で監査スキルをしっかり身につけておくというのは、非常に大事なことであるというお話でした。

結論

この記事を書いたのは、監査法人にお勤めになっている会計士の方とお話していて、なんとなく漠然と監査法人に所属しているのでは?と筆者が思ってしまったから、というのが理由です。

一方で、監査法人が嫌だからという、直情的な理由で、いきなり監査法人を辞めてしまう方も後をたちません。
それはすなわち、会計士業界や監査業界の損失であると考えます。

監査法人の中にいるとわからないと思いますが、監査法人にお勤めになられている会計士の方が当たり前のように経験している監査業務は実は非常に希少な経験なんですよね。

世の中で唯一、監査法人は企業が決算発表する前の決算財務報告プロセス全体の流れをオンタイムで見れている存在なわけです。

通常は、一部分から理解して最後に全体がわかるのですが、監査法人の方はいきなり全体から見ています。そんな人は監査法人の他にはいないわけです。
最後に、繰り返しになりますが、今いる監査法人で監査スキルをしっかり身につけておくというのは、将来どんな進路に進まれるとしても、非常に大事なことであるというお話をしたくて、そんな想いを伝えたいと考えて、記事を書きました。

監査法人で働き続けることにちょっぴり不安を感じ始めたシニアスタッフの方の不安は、少しは和らいだでしょうか。
そんな記事になっていましたら、望外の喜びでございます。


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