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「法務」の勉強の始め方とブックリスト
はじめまして。IT企業で法務をしているよしだです。
今回は、自分が法律初学者で法務に入ったら、まずはどんな勉強をするかなというのを書いてみたいなと思っています。
私が法学部出身なので、実務ももちろん大切ですが、法学の基礎部分についても必要だと思っているので厚めに記載しています。
以下を全部やろうとすると大変だと思っておりますので、適宜身近な先輩や上司にも相談しながら、インプットとアウトプットの順番を決めていってもらえるといいなと思います。
なお、私は、橋詰先生の「法律書マンダラ」が好きで毎年アップデートを楽しみにしており、それにリスペクトを込めて今回こちらの記事を書いております(今年の分が消えてしまっていて悲しい…)。
法律編
まずは、法務について知ってみる!
目的としては、法務業務や法務パーソンの役割や大切なマインドセットを知るということです。先輩や上司が、どのような目的や想いで仕事しているのか、その土台になる部分を理解するために、法務業務について知ってみましょう。
私は自分の法務担当者として調子に乗ったりしないように、原点に立ち返られるように、以下に挙げたような本の定期的に読んでいます。
特に「希望の法務」は自分の中ではバイブルですごく大切にしている本です。
法務の役割や大切なマインドセットを知る本
法務の日常や役割などの全体像が簡単につかめます!
もはや哲学!いろんな人のいろんな解釈があっていい本だと思っています。
結構厳しいことも書いてありますが、本質的で法務の役割を理解し、どう行動していくのかを考えるにはすごくいい本です。
Q&A 若手弁護士からの相談199問 特別編―企業法務・キャリアデザイン・Q&A若手弁護士からの相談203問 企業法務・自治体・民事編(dtk・ronnorほか)
上の3つとは少し毛色が違いますが、QA形式で非常にわかりやすく、ひとり法務で悩まれている方には必須かなと。日常よくある悩みからキャリアまで広く書かれており、すごく参考になります。
次に、法学入門から入ってみる!
法学入門で、法律の読み方、解釈の仕方、法律の意味や構造、要件と効果を理解しましょう。ざーっと薄い本や法律の読み方本を読むのがいいかなと思っています。
法律の考え方、書き方や読み方、三段論法の考え方、法律は文言をまっすぐに当てはめるだけでなく解釈が入ることを意識して読んでみるといいかなと思います。
もし興味がありそうでしたら、法哲学なんかの本も手に取ってみてもらえると楽しくなってくるかなと思います。
「法学の基礎」「これからの正義の話をしよう」「法のデザイン」はすごく好きな本で何度も読み返した本ですね。
法学入門系の本は以下のとおりです。
全部いい本なのですが、全部読むのも大変ですよね、、、一応読んでみたらいい順序に並べております。
法学入門
情報法のリーガルマインド(林)
法学が好きだなと思った方へ
(番外編)法学の基礎(団藤)
(番外編)法のデザイン(水野)
番外編の3つは私が法学を好きになったきっかけのような本です。
ビジネス法務検定を受けてみよう
次は、ビジネス法務検定の勉強をしてみましょう!
企業法務1年生の頃にテキストに目を通してみましたが、企業法務で使う基本的な法律は網羅されているし、まとまっているので、企業法務の全体像を掴むにはすごくいいと思います。
3級、2級と合格するのを目指してみましょう!
ここから先、本を読むときや調べ物をするときには、絶対に六法を開いて勉強しましょうね(egovでももちろんOK!)。
条文をぺらぺらと引いて、条文とお友達になっていきましょう。ポケット六法やデイリー六法を選ばれた方は、線を引いたり、書き込んだり、いっぱい六法を汚してみましょう。
勉強した知識を活かして、法律相談対応と契約書のドラフトへ
法務業務の全体像や企業法務で取り扱う法律などが見えてきて、きっと一人で打合せに行ってみようか!というような感じになってくるかなと。
そのために、必要なことは以下の3つだと思っています。
①相談に乗れるように、法律相談の方法やコミュニケーションを学ぶ
②ビジネスと法律を接続する
③契約書の構造を理解し、上司の手助けを受けて契約書のドラフトができるようになる
法務の業務の大半が事業部とのコミュニケーションだと思っています。そのためにも、どんな風にコミュニケーションをとっていくのがいいのか、法務業務のパターンなどを抑えておくのがいいと思います。
また、契約書のドラフトを任されるようになってくる頃には、ドラフトができるように準備を進めないとですよね。
以下の本を参考に、相談対応から、契約書の構造を理解していきましょう。
結局は、場数と経験だとは思うので、以下のような本を参考に実践し、上司や先輩と打ち合わせに参加して、質問し、ダメだしされ、契約書もどんどん赤ペンを入れてもらいましょう!
法務相談の方法や事業部とのコミュニケーション
いわずと知れた飯田さんの本。社内外とのコミュニケーションの取り方やインプットの仕方などすべてが参考になります。特にコミュニケーションの部分で参考にさせていただきました。
法務業務そのものの全体像をつかめる本です。これは法務相談を始めるタイミングや独り立ちをしていこうとする前に目を通しておけるといい本だと思います。
ビジネスと法律を接続する
事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック(塩野・宮下)
これは企業法務の道で生きていこうと思うとマストな本だと思います。Youtubeもあるのでぜひ合わせて勉強してください!(こちら)
攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書(渡辺)
こちらもマストですね。リーガルリスクマネジメントに関する非常にわかりやすい書籍です。実践するのはとても難しいのですが、ここにこだわっていくことで洗練された法務パーソンになっていけると思います。
契約書の構造理解とドラフト技術
まずは、上の2つから!契約書の作成プロセスやお作法がどういったものか、土台を作りましょう。
基本だけど、難しい本。法令と契約書を紐づけてくれるすごくいい本です。条文を引きながら、勉強してくと理解が深まります。
チェックリストが非常に便利なので、ぜひ活用ください。
参考:(M&Aの担当者の場合には)事業担当者のための逆引きビジネス法務ハンドブック M&A契約書式編(塩野・宮下)
こちらも講義があるので、M&Aの担当をする前にはぜひ!
参考:(法律雑誌)NBLの連載「契約書レビューの体系と実践」(菅野ほか)
民法と会社法を深める
法務業務の中でも民法と会社法は必須な法律だと持っていますし、土台になるもの、かつ、応用が利くものだと思っています。一方で、民法と会社法は、本も分厚いし、範囲も広いので、段々と深めていくのがよいと思います。
民法では、実際の取引や契約と法律がどう結びついているか、条文にある定義、要件と効果の考え方、請求権と抗弁などの主張反論の構造(要件事実)を理解しましょう。また、人の行動について、「意思表示」や「代理」など普段使っている言葉と法律で使われている言葉の違い、取引等における行動が法律上で定義され、それを解釈し、あてはめていることを意識できるといいかと思います(解釈が先か、あてはめが先かとかあるのですが、一回おいておきましょう…)。
ロープラクティス民法などの演習書を、ひらすら読んでみるのもおすすめしたいです(ロープラ以外に紹介できそうな、最新の演習書をアップデートできていないので、すみませんmm)。
会社法について、会社の設立、会社の運営、資金調達の基本的な種類、実体法と手続法があることを理解しましょう。株式会社は会社法に基づいて運営されているので、流れや手続きを意識して勉強してみましょう!
問題を解かなくてもいいですが、ケースには触れた方がいいと思うので、判例を見てみたり、演習書のようなものをみてみたり、具体的なケースを知って、シチュエーションを抑えてみましょう。
民法は実体法で、会社法は実体法と手続法的な部分もあるので、法律の勉強をするにはすごくいいと思っています。企業法務やっているとメインで使う法律の2つですしね。
とはいえ、一人で勉強するのも大変な気がするので、今の自分だと、もしかすると民法・会社法なら、司法試験予備校の授業を受講するかもなとも思います。
民法
基本:民法全(潮見)
事例:ロープラクティス民法
会社法
基本+事例:人間ドラマから会社法入門(高田)
基本:会社法(神田)
参考:会社法(田中)
事例:会社法を読み解く(中村)
(番外編)会社法実務スケジュール(橋本ほか)・会社法書式集(阿部井窪片山)※もしすぐにでもコーポレートアクションをしないといけないような事案にかかわっている方はこちらを絶対に参考にしてください。
法律相談業務・契約書のレビューの基本、民法や会社法を勉強したあとは?
法律相談業務・契約書のレビューの基本が終わったら、基本的には自分の所属する会社のかかわる周辺領域の法律実務を勉強していくことになります。
ここからは個別に分厚い本や、顧問弁護士にも相談しながら、勉強→アウトプット→周りに相談→顧問に相談→勉強・・・のループがひたすら回っていきます。
研修するためにインプットすることもあれば、プロジェクトにアサインされたためにインプットをすることもあると思います。
その都度、必要な情報を取得できるように、法令改正や書籍などの情報には敏感になっておくといいですね。私はXと法律雑誌から書籍の情報収集しつつ、本屋さんの法律書コーナーをうろうろします。
法令改正情報は各法律事務所のニュースレターやセミナー、商事法務のメルマガ、契約ウォッチなどを参考にしています。あとは、Business&Law、Lagal Ops Lab、BusinessLawyersなども参考になりますよね。
このあたりは、法務のいいださんのnoteでも紹介されてますね(「法務1年目に知りたかった、一人法務の情報収集のやり方をまとめてみる」)。
参考:普段私が参考にしている本・最近買った本など(IT法務メイン)
契約書のその他:秘密保持契約の実務・業務委託契約書の作成のポイント・M&A契約
会社法の仕事:会社法のハンドブックシリーズ(商事法務)・会社法法令集・上場会社法(宍戸)・取締役会事務局の実務・実務家が語る取締役会のいまと今後の展望(MUTB)・取締役・取締役会の法律実務Q&A(島田)・コーポレートガバナンスの実践などのシリーズ(松田)
広告やキャンペーンの仕事:広告法(電通法務)・デジタル広告法務(池田染谷)・インターネット広告法務ハンドブック(若松)・広告法律相談125問のシリーズ(松尾)・景品表示法の法律相談
個人情報の仕事:個人情報管理ハンドブック(TMI)・詳解 個人情報保護法と企業法務(菅原)・個人情報保護法コンメンタール(石井ほか)・令和2年改正 個人情報保護法の実務対応-Q&Aと事例-(第二東京弁護士会)
データの利活用の仕事:データ利活用のビジネスと法務(TMI)・データ利活用とプライバシー個人情報保護 最新の実務問題に対する解決事例108(渡邊)
Fintech関係:詳解デジタル金融法務(佐野)・デジタルマネービジネスの法務(TMI)・資金決済法(堀)・電子商取引・電子決済の法律相談(渡邊)
クラウドサービスの仕事:クラウド情報管理の法律実務(松尾)・利用規約・プライバシーポリシーの作成・解釈(松尾)・良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方(雨宮・片岡ほか)
AIやシステム:ITビジネスの契約実務(伊藤)・生成AIの法的リスクと対策(福岡)・AIの法律(福岡)・ガイドブック AI・データビジネスの契約実務(斎藤ほか)・紛争解決のためのシステム開発法務(松尾)・新版システム開発紛争ハンドブック(松島・伊藤)
知財・商標、著作権やコンテンツなどのブランド保護:商標法の法律相談・クリエイターのための権利の本・コンテンツビジネスのと著作権法の実務・技術法務のススメ・知財実務のセオリー・知財実務のツボとコツがゼッタイにわかる本
コンプライアンス:企業不祥事を防ぐ(国廣)・法務リスク・コンプライアンスリスク管理実務マニュアル(阿部井窪片山)・コンプライアンスリスクに対するリテラシーの高い組織をつくる・インテグリティ:コンプライアンスを超える組織論
おわりに
私は、勉強や本が好きなので買って読んだりしてますし、リサーチ用にLEGAL LIBRARYも契約していたりします。どんだけ勉強しても不安になりますし、本を読んでも答えがある訳ではありません。
個人情報保護法のガイドライン・電子商取引の準則・各種パブコメなんかも調べないとですしね(そのためにSmartRoppoも使ってます)。
私は法律をぜーんぶを覚えて理解するなんて無理だと思っています。
いっぱい読む本あっても情報過多になって非効率だと思うので、自分にできる範囲で、会社のお金を使いながら、情報も絞って、勉強していくのが、効率的だし、きっといいと思います。
とはいえ、より突き抜けた専門家の弁護士に頼るにもインプットが必要だし、社内でもプロとして案件の対応をしています。なので、勉強は続けていかんと仕方ない。けど、どうせなら楽しくやっていくのがいいと思っています。(私はもくもく本を読んで、調べているだけでも楽しいので、お得ですw)
一人で続けていくのがすっごく大変だと思うので、先輩に相談したり、社外の仲間を見つけて、コツコツ楽しみながら勉強をしていくのがきっといいように思います。
あと、私はチームの弱点を補えるといいなと思って、日々インプットとアウトプットを続けています。これから先も、ずーっとインプットとアウトプットを繰り返していくことになると思うので、無理なく自分のペースでやっていきましょう。
私もこつこつやっていきたいと思います。
おまけ(ビジネススキル編)
法律の話をメインで記載してみましたが、法務担当者もビジネスパーソンです。ビジネススキルとは切っても切り離せないですよね。法務スキルとビジネススキルのようなものが、うまくつながってくると働きやすくなってくる気がしています。
ビジネスの基礎的なブックリスト書いてくれている人がたくさんいると思うのですが、最後に少しだけ触れておきたいなと思います。
私は、①文章を書く力②報連相する力③スケジュールやプロジェクトの調整力④問題解決するというマインドとスキル⑤自社の事業理解が大切だと思っています。
私が読んでよかった本を、それぞれご紹介いたします。
番外編で、私の心の支えになった本もおいておきます。くれぐれも無理をしないで、楽しく仕事をしていきましょう。
スキル全般:遅考術・入社一年目の教科書・コンサル一年目が学ぶこと(大石)・仕事の教科書(北野)・コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト(高松)・もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる法
文章を書く力:超箇条書き(杉野)・入門考える技術・書く技術(山崎)・日本語の作文技術(本多)・弁護士が書いた究極の文章術(木山)・伝わる・揺さぶる! 文章を書く(山田ズーニー)
スケジュールやプロジェクトの調整力:トヨタ公式 ダンドリの教科書・業務改革の教科書: 成功率9割のプロが教える全ノウハウ・システムを作らせる技術・システムを外注するときに読む本
問題解決:世界一やさしい問題解決の教科書・イシューからはじめよ・問題解決・構造化トレーニング・武器としての図で考える習慣
自社の事業理解:四季報や業界地図、社内の営業資料、決算資料、統合報告書、事業部門の販売フローと決裁基準、社内規程など
番外編:愛するということ(フロム)・他社と働く・僕は君たちに武器を配りたい等の瀧本哲史の本すべて・こころの処方箋・こころの天気図を含む河合隼雄の本・シンニホン・苦しかったときの話をしようか・ストレスフリー超大全
ーおわりー
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