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花粉症といかに戦うか② 治療薬その2(小児を中心に)

 花粉症の治療薬について続けます。花粉の画像は環境省の花粉症環境保健マニュアル2022から取っています。ステロイド点鼻薬、抗ヒスタミン薬とご紹介してきましたが、今日はロイコトリエン受容体拮抗薬、点眼薬、奥の手の抗IgE抗体、そして使うことをお勧めしない薬剤について。舌下免疫療法、花粉アレルゲンの回避法については別記事にします。

3 ロイコトリエン受容体拮抗薬

 鼻づまり(鼻閉)は、マスト細胞や活性化した好酸球によって放出されたロイコトリエンによって起きます。そのため、ロイコトリエン受容体拮抗薬(キプレス®、シングレア®、オノン®)は鼻閉に効くとされます。抗ヒスタミン薬は鼻づまりには効きにくいため、鼻閉が強いタイプの方は、ロイコトリエン受容体拮抗薬がお勧めです。副作用が少なく安全に使用できます。小児適応はオノン®のみ 成人はキプレス®、シングレア®5mg錠、10mg錠も使えます。キプレス、シングレアのチュアブル錠は気管支喘息に適応であり、鼻炎には使えませんのでご注意を。

 ロイコトリエン受容体拮抗薬ではありませんが、鼻閉の選択肢として、ディレグラ®があります。抗ヒスタミン薬とプソイドエフェドリンの配合薬で12歳から使えます。ただ制限があり、基本重症者用と考えていいです。 鼻づまりが相当強い場合のみ2週間以内で使用し、よくなったら抗ヒスタミン薬単独に切り替えます。 長期の安全性はまだ確立していないので、長期使う場合は医師に相談して、副作用をチェックしながら内服します。

3-追補 子どもの鼻づまりはわかりにくい

 小さいお子さんでは鼻づまりはわかりにくく、気づかない場合もあります。

  • 鼻声

  • 自然に口を開けている・口呼吸している

  • スース―、ピーピー鼻の音がする

  • いびきが以前より強くなった・出るようになった

  • 口を閉じて息をさせると苦しそう

  • 呼吸が少し荒い

などがサインですが、わかりにくいことも多いので医師にご相談ください

4 点眼薬

 点眼薬は抗ヒスタミン薬が基本です。最近はしみない薬も多く、お子さんでも使いやすくなりました。1日2回で効果の高い薬もあり便利です。花粉は日が昇ったあとから昼前後、そして夕方あたりに多く飛散しますので、まずは外に出る前に1回、学校・職場から帰る時にまた1回などのように、かゆい時に合わせて使用するといいです。

 なかなか効かない、眼が腫れてつらい、勉強にならないなどの場合は、内服などしっかり継続したうえで、ステロイド点眼薬を使用します。ただし、ステロイドによる副作用、特に眼圧上昇が起きることがありますので注意が必要です。特に小児では眼圧が上がりやすいとされ、短期間の使用にとどめたいです。また、眼圧上昇に関しては個人差があり、特に敏感で上がりやすい方がいるようです。通常は点眼をやめると戻りますが、中には眼圧が正常に戻らない人もいます。

 一番よく使用されるフルオロメトロンは、眼内にまで浸透しにくく、眼表面局所の炎症には有効であるため、用いやすいですが、数週間使用する場合は眼圧の測定が必須です。時々使って効くという薬剤でもありませんので、医師のアドバイスのもと使用します。

 それでも改善しない場合は、より強力なステロイドや免疫抑制薬の点眼もありますが、必ず眼科を受診してください。

 豆知識ですが、点眼液に消毒薬のベンザルコニウム塩化物が入っている場合があります(パタノール®など)。 ソフトコンタクトレンズに吸着されることがあるので、点眼時はコンタクトレンズをはずし、10分以上経ってからつける必要があります。ベンザルコニウムが入っていない点眼を選んだ方がよさそうですね。医師にご相談ください。

5 生物学的製剤

 さらに重症な方に使用する皮下注射の薬もあります。IgEをブロックする抗体製剤(ゾレア®:ヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体)です。よく効きますが、欠点もあります。12歳以上で適応となります。

 難点は皮下注射であることと価格です(小児は自治体により助成があります)。体重・IgE検査の値から量・間隔が決まりますが、値によっては使用できない場合もあります。ゾレアの用量設定については、医療従事者向けサイトですが、下記のリンクをご参照ください。

 ご参考までに、3割負担で1回150㎎なら8,744円、300mgなら17,488円 です。最大で1回600㎎を2週間ごと、3割負担で1月69,953円となります。これでも価格は下がったのですが、まだまだ高いですね。通常の治療を行っても、日常生活に支障がでるほどきつい方はご検討ください。

6 オススメしない薬 

花粉症治療にはあまりお勧めできない薬があります。

I  ステロイドの筋肉注射
 筋肉注射し、長く効くステロイド薬があります。トリアムシノロンアセトニド(ケナコルトA®️)です。この注射薬1本に含まれるステロイドはプレドニゾロンに換算で一般的に使われる5mg錠で50錠(250mg)にもなります。注射されるとゆっくりと溶け出し、2週間から3週間も効果が続きます。つまりステロイドによる副作用が出るリスクが高いということです。また、体の中でステロイドを作っている副腎皮質が抑えられて、自分で作るステロイドがゼロになります。私は多彩な副作用があるステロイドは安易に使用すべきではないと考えます。

II  ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合薬(セレスタミン®️)
 ステロイドと鎮静性抗ヒスタミン薬の配合薬です。週単位で連用すると、ステロイドによる副作用・副腎抑制が起こります。

 配合されている抗ヒスタミン薬は、鎮静性抗ヒスタミン薬のなかでも鎮静性が強く、かなり眠くなりますので、自動車運転はできませんし、学習や仕事に支障をきたすことも少なくありません。あくまでひどい時に短期に使うもので、できれば使いたくありませんし、連用すべきではありません。

Ⅲ 血管収縮薬
 ステロイド点鼻薬はスタンダードな治療薬ですが、市販薬もある血管収縮薬は要注意です。

 鼻閉にすぐ効きますが、効果は短時間、何度も使うと効果の持続はさらに短くなります。長く使い続けると薬剤性鼻炎が起こって、かえって悪化する可能性があります。リバウンドして粘膜が強く腫れることもあります。あくまでその場しのぎと考えます。

I〜Ⅲの共通点はいったん効くように見えるが、悪化や副作用のリスクが高いこと。慎重な判断をお勧めします。

※おまけ情報です それって花粉症?

 今年はスギ花粉が非常に多いことが予想されています。こういう年は花粉症デビューの方が多くなると思われます。でも、これって花粉?それとも風邪?悩まれる方も多いのではないでしょうか。

 花粉症は特定の花粉に対するアレルギー反応によって症状が出ます。花粉症のような症状が出た場合、次の可能性があります。

✅やっぱりスギ花粉症
✅その他の花粉に対する花粉症(ハンノキ、ヒノキなどは時季が被る)
✅ダニ、カビなど他のアレルゲンに対するアレルギー症状
✅冷気、乾燥した空気、化学物質などの刺激による(アレルギーではない)非特異的な反応
✅風邪の初期

これらを区別するために以下の項目があるかチェックしてみてください。

✅外に出ると急にくしゃみ、鼻水が出る
✅鼻水はサラサラ・透明 (風邪の場合は初期のみでだんだん粘っこく、黄色になってくる)
✅目や鼻のかゆみがある
✅結膜が充血し、ぶつぶつしてくる
✅暖かい日、風の強い日、雨の日の次に晴れた日はひどい
✅雨の日は調子がよい
✅他の花粉症の人と同じタイミングで症状が出る
などあればあやしいです。病院に行かれることをお勧めします。

ハンノキの場合はスギより早く、ヒノキは少し遅れて症状が出ます。早く症状が出る方、症状が長引く方はあやしいです。血液検査でIgE抗体検査を行うことで判断可能です。

以上です。花粉症といかに戦うか③ アレルゲン回避に続きます。

花粉症といかに戦うか① 治療薬その1はこちら


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