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地方人事の視点で振り返る「2020年」──コロナ禍で変わったこと、変わらないこと

企業活動に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症。

この2020年は「採用」から「働き方」まで、わずか1年でさまざまなことが変わりました。特にオンライン化の波がこれほど急激に訪れるとは、昨年の今頃は予想すらできなかったことと思います。

そこで年の節目を機に、『しがと、じんじ。』では今の変化を象徴するニュースや調査を、「ローカルで活動する人事」の視点で振り返ってみました。

おさえるべき重要な変化と、変えてはいけない本質的な部分の整理に、ぜひお役立ていただければと思います。

1. コロナ禍で求められる「柔軟な採用活動」


・オンライン採用の模索がはじまる

国内での感染が増えた3月以降、特に採用市場では、これまで当たり前だった「対面での面接」や各企業ごとの「就職説明会」の開催が困難になりました。

都会か地方かを問わず、あらゆる企業がオンラインへの対応を進めるなかで、どうすればいい人材とうまく出会い、自社との適性を見極められるか今も模索が続いています。

メリットとデメリットどちらもあるオンライン選考。この記事のような情報を元に、2021年以降もリアルな場と柔軟に組み合わせていく必要があるでしょう。


・「新卒一括採用」の見直し

コロナ禍で、大規模な「合同企業説明会」や「就職フェア」も軒並み中止に。そのため、従来さまざまな制約のもとに行われていた『新卒一括採用』のあり方が大きく問われることになりました。

この記事では、インターンシップの採用直結に関して「理工系の博士課程の大学院生」を皮切りに、対象を「修士課程や文系の大学院生に広げることも検討する」とされています。

すでに通年採用などの導入も増えつつあるなか、これまでのように横並びではない、より多様な選択肢の提示が各企業に求められていると言えます。


・不安を抱えつつも、柔軟な対応をしている大学生

大学3年生・大学院修士課程1年生を対象にした就活状況のアンケートです。「コロナ禍による採用規模の縮小」「オンライン就活への不安」などから、自身の卒業年度の就活戦線を「厳しくなる」と考える学生が大きく増えています。

一方で、オンライン型を含む『就活準備イベント』への参加率は94.7%(前年は会場型のみで87.8%)、参加回数はオンライン視聴を含め8.5回(前年は会場型のみで4.6回)と、オンラインを柔軟に使いこなしていることも伺えます。

特に地方の学生にとっては、交通費などの観点から、こうしたオンライン接点へのニーズは今後も続くと思われます。

2. テレワークなど「多様な働き方」の加速


・テレワークの急速な普及、メリットと課題

新型コロナウイルス感染症の 感染拡大による仕事への影響|厚生労働省

緊急事態宣言が解除された後の2020年6月に、厚生労働省が行った企業調査です。

『事業の運営、社員の働く環境に関連して実施した項目』では、テレワークを導入する企業が4月に47.1%、5月48.1%と急増(3月は19.8%)。「働き方改革が進んだ」「業務プロセスの見直しができた」などの効果や、従業員からの「通勤時間や移動時間の削減」「オフィスよりも集中できる」「無駄な会議が減る」といったポジティブな声も出ています。

他方で、「社内でのコミュニケーションが不足する」「勤務時間とそれ以外の時間との区別がつけづらい」などの課題はもちろん、業種や地域による実施率の差も顕在化。それぞれの業種による可否を見つつ、人事や経営者の対応が求められています。

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・テレワーク制度が志望度UPに貢献

20代の転職サイト来訪者を対象としたこの意識調査では、テレワーク制度の有無が志望度の上昇に結びつく(「上がる50.8%」「どちかかと言えば上がる30.8%」)ことが指摘されています。

一方、「毎日」のテレワーク実施を希望する割合は11.6%となり、「転職後すぐに、テレワークで働くのは不安」「テレワークばかりで出社の機会がないと不安に思う」などの声も。

一律な実施ではなく、「状況にあわせて対応していく姿勢」を、求職者がきちんと見るようになっていると言えるでしょう。


・進む多様な働き方。『終身雇用』以外の選択肢も?

正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう電通の新たな制度。同社は現時点で副業を禁止していますが、新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になるとされます。

「業績悪化を見越した、人件費の削減(リストラ)では?」といった批判も一部にはありましたが、こうした多様な働き方の推進は、そもそもコロナ禍に関係なく、国全体が進める方向です。

高齢化が進む地方では、「定年制の見直し」や「シルバー人材の積極的な活用」などは急務です。今回は東京に本社を置く企業の事例ですが、こうして『終身雇用』以外の選択肢を持つことが、長い目で見て企業のためにも、個人のためにもなる可能性を人事としてはぜひ考えていただければと思います。

3. 見直される「地方ではたらく」価値


・地方副業ニーズの高まり

3大都市圏に住む20~40代の転職サイト会員を対象にした調査です。副業に興味がある人のうち、「地方の企業・団体での副業に興味がある」と答えた人は76.4%

新型コロナウイルス感染拡大前と比べてその興味が「強くなった」と回答した人は49.4%となっており、コロナ禍での働き方の見直しなどが、地方に目を向けるきっかけとなっていることが分かります。

挙げられている「スキルや仕事の幅を広げたい」「地方に貢献したい」といった声に対し、その選択肢を用意できるか、地方人事の手腕が問われていると言えるでしょう。


・「働き方」「暮らし」を見直したい移住希望者の増加

5月末に行われた移住フェアに関するニュース。主催者の方が「もともと移住を考えている人がコロナウイルスの影響で背中を押された」「多くの人がワークライフバランスを見つめ直す機会になっている」と指摘するように、こうした動きが今あちこちで広がっています。

同時に、記事内でも多くの話題が「働き方」「仕事」に割かれているように、受け皿となる地方でどのような仕事の選択肢があるのかは、移住における最も重要な関心事です。

『しがと、じんじ。』を運営するいろあわせでも、滋賀への移住を支援する『滋賀移住計画』や滋賀県と連携してのオンライン合説『しがジョブLIVE』などを開催していますが、こうした移住希望の方々に適切な情報を届け続けていくことは、今後ますます重要と考えられます。


・2020年10月の『転入超過県』が11→23に。東京は転出へと逆転

人口移動の傾向が、今年はっきりと逆転現象したことを示すニュースです。例年は最も転入が多い東京都(2019年10月は+2657人:全国1位)が最大の流出地域(2020年10月は−2715人:全国47位)に

他方で、転入が転出より多い道府県は昨年の10(東京都を含め11)から23に増加。少なくともこのコロナ禍で、地方移住が実際に加速していることが現れています。

全体の人口が急速に減るなかで、こうした傾向が今後どう変化していくのかは不透明です。ただ、地方という選択肢が「働き手や暮らし手に一定の魅力を示してきている」ことは、ローカルを足場にする人事としてはぜひ認識していただければと思います。

採用や働き方の“本質”は変わらない


ここまで、コロナ禍での変化を中心に、9つのニュースや調査を振り返ってみました。みなさんはどう思われたでしょうか?

今年の春、不安を抱えながらさまざまな対応をしたことを思い出したり、大きなトレンドの変化を改めて感じたりした方もいるでしょう。一方で、「よくよく考えてみると、あまりやってることは変わってない」と思われる方もいるかもしれません。

実は「多様な働き方が必要であること」も「地方移住のニーズ」も、すべてコロナの前から指摘されてきたものです。「オンライン発信」や「テレワークの導入」に早くから着目し、取り組んでいた企業もあります。

その意味では、どのような手段をとろうとも「結局は今いる社員やこれからの求職者の目線に立ち、やるべきことをやり続けるだけ」という点は何も変わっていません。そうした誠実な企業が選ばれるようになっていることも、今すでにある流れです。

もちろん、その流れがコロナ禍で加速した側面はあります。また、以前紹介した『履修履歴の活用』のような、これまでにない動きも見逃すことはできません。

そうした情報を人事の方はきちんと捉えつつ、2021年以降も引き続き、目の前の従業員や応募者の方々に向き合っていただければと思います。


(しがと、じんじ。について)

“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。

※ このマガジンでは、人事担当者や経営者の方々に役立つ情報の発信を、定期的に行っています。

※ 興味を持たれた方は、こちらのフォームからお気軽に問い合わせください。活動情報などをお送りします。

(編集:佐々木将史/北川雄士)

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