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いま、採用で注目したい『履修履歴活用』とは?(前編)

『履修履歴活用』『GPA』——こうした言葉を聞いてピンとくる人事の方は、どのくらいいるでしょうか?

実は今、学生の採用選考で新たなトレンドが起こりつつあります。それは、「課外活動も大事だけど、もっと大学での学びを評価につなげよう」という動きです。

実際、どのような取り組みが始まっているのか。背景や狙いにどんなものがあるのか。そして、現実問題として人事担当はどうこれを取り入れていけばいいのか。

2回の記事にわけて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

「学業の成績を重視する」企業の増加


学生の本分は「学業」。

そんなことは分かっていながらも、従来の採用現場では「大学での学び」以上に、部活やバイトなど「課外活動」の経験がフォーカスされてきました。“ガクチカ”(学生時代に力を入れたこと)として企業もそこを聞くし、学生もそれを強調する、というのが実態だったわけです。

ところがこの数年、「もっと学業を重視して見よう」という動きが生まれています。下の図は、『2019 年新卒採用における履修履歴活用実態調査結果』(履修履歴活用コンソーシアム)からの引用で、2018年卒と19年卒の学生が「学業を重視されている」と感じた割合です。

いまだ過半数が「なし〜1割程度」であるとはいえ、全体的にかなりの増加傾向であることが表れています。

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また、選考で「学業を重視されている」と感じた理由ですが、成績証明書の提出だけでなく、学校での学びについて「具体的に質問された」と答える人が増えている。つまり、「学校で何を学んだのか、ちゃんと企業が聞くようになっている」ことがわかります。

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さらに、同じ調査で、人事として見過ごせない結果も出ています。それが次の図の、学業について聞く企業の「印象」を尋ねたものです。

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2018年で70%以上、2019年で(よりストレートな質問文に変わっても)約半数が「はい」と答えるのに対し、「いいえ」はわずか。学生が一番時間をかけているのはやはり学業であり、「自分が学校で何を頑張ったのか、何を勉強してきたのかはきちんと聞いてほしい」という声がかなりある、ということなんです。

ただし一方で、「どちらでもない」と答えた数が多い点も見過ごせません。ここには、学業を見てはほしいものの、数字やアルファベットが一人歩きしてしまうことへの学生の不安も表れています。(この問題については後述します。)

『履修履歴活用』が進む背景


なぜ今、採用に「学業の成績」を取り入れるようになっているのか。

変化の背景にあるのは、「人材を生み出すサイクル」を何とかしよう、という大きな動きです。今の企業は学生の課外活動ばかりを見る、なので学生は課外活動をするために学校に行かない、学校に行かないから学ばない。結果として優秀な人材が育っておらず、企業の競争力が下がり続けている。

この循環の悪さに、特に危機感を持っているのが文科省です。平成24(2012)年に同省が出した答申では、各国との比較で日本の高等教育への公的支出の少なさ、科学技術投資の少なさ、さらに学生の学習時間の少なさなどを示し(下図)、特に大学の「質的転換」の重要性を指摘しています。

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文部科学省『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』より

要は、国際競争力の低下を止めるために、日本の大学を「ちゃんと学んで、社会に対して人材輩出をしていく高等教育機関」にしたい、ということですね。

なので、平成26(2014)年から始まった『大学教育再生加速プログラム』では各大学に、ディスカッション、ディベート、アクティブ・ラーニングなどを強く推進させています。「言われたことをちゃんとやる」だけではない、変化の激しい時代にも活躍できる高度人材・専門人材を、きちんと育成しようというわけです。

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文部科学省『大学教育再生加速プログラム』アーカイブページより

さらには、企業に対して「学生が何を学んだのか」を見える化するよう推進しています。人材の「質」をきちんと企業が見極め、採用し、イノベーションにつなげられるようにする。これによって全体のレベルアップを図ろう、というのが狙いなんですね。

評価指標『GPA』とは


では、実際にどうやって大学生の「質」を可視化していくのか。指標の一つとして導入されているのが、『GPA』(Grade Point Average)です。

簡単に言えば、各単位の成績を数値化し(GP)、その平均をとったものですね。

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実はこれ、文科省の平成29年度の調査によると、すでに国内大学の92%が採用している仕組みなんです(国立大学では100%)。当然ですが、今の学生はみんな、自分のGPAをきちんと把握しています。

ただし、制度としてはあるものの、GPAが「積極的に採用で使われている」とまでは言えません。導入理由の調査でも、「民間企業など、学外の組織や大学関係者からGPAでの評価を求められる機会が多いため」と回答した大学は14.9%にとどまっています。

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文部科学省『国内大学のGPAの算定及び活用に係る実態の把握に関する調査研究』より

これには、GPAそのものの歴史が浅く、「あまり企業の人事担当者に知られていない」ことも影響しているでしょう。今後『履修履歴活用』が進むにつれて、これを採用選考で求める企業は増えていくはずです。

実際、すでにGPAを取り入れている人事の方に話を聞くと、「学業への取り組み姿勢を客観的に数値化できている」「GPAが高い場合、理解度の速さが伺える」などのポジティブな意見が挙がっています。

とはいえ、問題がないわけではありません。

「定量的に出てくる数値をどう見ればいいのか」と迷っている人事さんもいます(ここには、冒頭の学生調査にもあったように、「学業を見てくれることは歓迎するけれど、単純に数値を評価されたくない」という声も絡んできます。)また、そもそも「学業の成績と仕事は別物」と考える企業もあるはずです。

次回、こうした問題をもう少し堀り下げながら、企業の、特にローカルで活動する人事担当者が具体的に何を、どう変えていけばいいのか見ていきたいと思います。

(後編に続く。)

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook


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“滋賀ではたらく魅力を再発見する”『しがと、しごと。』プロジェクトの一環で運営される、ローカルで採用活動に取り組む人事担当者のコミュニティです。

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(編集:佐々木将史



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