パートナーとの関係を良好に保つ感度の上げ方
離婚はネガティブなことではない。現に私の周りには離婚した人がたくさんいるし、離婚予備軍を合わせると相当な数にのぼるのではないかと思う。
複数回離婚している強者もおり、別段驚いたりはしない。それよりも何故また結婚するんだろうとそちらの方が不思議である。
きっと離婚に懲りず結婚する又は結婚したいというのは幸せなパートナーシップを築きふたりで幸せになりたいからではないだろうか。
次の相手こそ切れない赤い糸で結ばれた王子様やお姫様に違いないと信じているのだ。
だけどどうすれば、死ぬまで仲良く一緒に生活していくことができるんだろう。実はそんな素朴な疑問に答えてくれる本があった。
その本のタイトルは「世界は贈与でできている」。もちろん恋愛本ではない。
この本を読み始めるまでは、アダム・グラントの「ギブ&テイク」に書いている様な成功する与え方について書かれているのかなぐらいに思っていた。
底辺のギバーと成功するギバー。底辺のギバーにだけはなりたくない。
むやみやたらと与えるのは搾取されるデメリットがあるわけで、戦略的なgiveが必要なのだと思い込んでいた浅はかな自分が恥ずかしくなった。
そんな私に新しい気付きと視点を与えてくれた「世界は贈与でできている」によると、贈与とはお金で買えない物であり、そこに見返りを求めることはできないと定義している。
見返りを求めての贈与は等価交換であり贈与ではないという。贈与とは誰かから受け取った返礼としてなされるものであり、自己利益のための贈与は偽善だと。
贈与者は評価されることも褒められることもないアンサングヒーローなのである。
与える側は気付いてもらうつまりは受け取ってもらえるように祈るしかなく、全ては受け取る側にかかっていると言える。
ということは贈与のスタートは受け取る側から始まるというわけだ。
受け取る側の感度が低いとどれだけ与えても全てスルー。贈与は全く成立しないということになる。
この感度の低さこそが離婚の原因になるのではないかと思うのだ。
与える側もアンサングヒーローでなければならないのに、「どれだけしてやったと思っているんだ! 鈍感で気付かないバカに違いない」と毒づく。
こうなるとどっちもどっち。自分は正義で相手は悪となる。お互いが恩着せがましく、感度が低いのに、そのことには気付かない。
これは結婚生活だけでなく仕事などの人間関係にも言える事だと思う。
だけどどうすれば、受け取る感度をあげることができるのだろうか。
その事についてもこの本に書かれている。
感度を上げるには、変則性(アノマリー)に気付くことであると、マンガ「テルマエ・ロマエ」を引用しわかりやすく教えてくれている。
入浴すると古代ローマから現代の浴室にタイムスリップしてくる主人公ルシウス。
日本の風呂場に置かれているものは古代ローマにはないわけで、驚き勘違いいの連続が笑いを誘い、今私たちが当たり前に思っているものを当たり前ではないと教えてくれるのだ。
そのルシウスの驚きこそがアノマリーだと著者は言っている。
ルシウスは、現代を生きる僕らに何が与えられているのかを教えてくれます。それらは、僕らが受け取っていた贈与なのです。ルシウスの目にはそこにあるあらゆるものが、あるはずのないもの、あってはならないもの=アノマリーに映るのです。そして、そんなアノマリーだからこそ、彼の目にはそれが自分宛の贈り物に見えてしまったのです。
当たり前に気付くことこそが、感度をあげる唯一の方法なのだ。
そして思うのだ。今は受け取る感度をあげるための絶好の機会ではないかと。
コロナによって当然そこにあるべきものだと思っていた生きることや健康であることが、全てひっくり返されてしまった。
だからこそ当たり前が当たり前でないと気付く時なのではないかと。日常空間にあふれている他の人の愛や優しさを受け取るまたとない機会。
パートナーシップも同じことが言える。付き合い始めた当初は感度が高く、贈与されたものをもれなくキャッチする。今までなかったものが与えられるので気付きやすい。
そして、その愛や優しさにいたく感動する。私も夫と付き合っていた頃、夫の優しさにどれだけ心をふるわせたことだかわからない。
確か優しさに感動し涙した記憶があるのだが、涙まで流しておきながら一体全体何に感動したのか思い出せないのである。
夫の優しさが私の中でコモディティ化してしまい当たり前であり当然のものになってしまっていたのだ。
当たり前になったものに感謝はせず、取り上げられると文句をいう。
このことは多くの夫婦やカップルに言える事ではないだろうか。
現代に生きる僕らは、何かが「無い」ことには気付くことができますが、何かがあることには気付けません。そして、もし失われてしまえば心底困り果ててしまうことに気付くことができないということです。
著者の言う通りである。
夫婦やカップルが仲良く手を取り合って生きていくには、与えられている今あるものに目を向け気付くことが大切なのだ。
そしてパートナーに全てを求めるからこそ、ないものにばかり目がいくとも言える。
搾取的思考をやめ、今あるものに気付くことこそがパートナーとの関係を良好に保つ秘訣なのではないだろうか。
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