【ハーブ天然ものがたり】白樺
植物界の切り込み隊長
北半球に自生するカバノキ科カバノキ属の落葉樹。
幹が白いのでシラカバと呼ばれますが、正式な和名はシラカンバです。
樹齢20～30年のあいだ樹皮は白いですが、それ以外は赤茶色をしています。
樹皮にはベチュリンと呼ばれる抗菌効果、抗酸化作用のある物質が含まれているほか、フラボノイド、タンニン、サポニンなどの有効成分も確認されています。
樹皮エキスにはヘルペス・ウイルスの増殖を抑制する効果があるとして、医薬品原料の利用計画も進んでいるそうです。
白樺はほかの樹々が育ちにくい瘦せ地（火山灰や砂の多い土壌、山火事の跡地や崩壊地など）でも根をはることができます。
まさに禿地を緑にかえる、植物界の切り込み隊長。
白樺が根をはり落葉する過程で土壌はゆっくりと肥やされ、いよいよ堆積物がふえて土地が豊かになってくると他の樹々、ミズナラやトドマツなども育ち始めます。
禿地で日差しが強い場所にいち早く進入し、緑の純林を生み出す白樺を「先駆樹種＝パイオニアプランツ」といいます。
強い陽光を好む白樺は陽樹とも呼ばれ、成長が速く、寿命は短く、ゆえに大木になることはありません。（日陰でも育つ木を陰樹といいます）
後続隊の大きく育つ樹々が成長し、日当たりが悪くなってくると、白樺は立ち枯れ、倒木となり、朽ちて次世代の養分になります。
冬と北のスピリット・キーパー
ネイティブアメリカンの教えに、ビジョン・クエストという儀式があり、この儀式をかわきりに自分の守護精霊に出会う旅がはじまるといいます。
メディスン・ホイールという口承されてきた教えは、東西南北の４方位と、１２区分した季節にそれぞれ守護植物、守護動物、守護鉱物、守護色があてはめられ、自分が生まれた月を旅の開始地点として、各方位のトーテムを訪ね、大地を共有する兄弟姉妹への知識を増やしていくというものです。
各方位から吹く風を観察し、風が運ぶメロディや物語をどうやって聴いていたのかを思い出す、あるいは各方位の守護動物や植物とのつながりに思いを馳せ、特定の位置からもたらされるインスピレーション、力強さを学んでゆく。まるで占星学のホロスコープを地球の大地に投影して、からだまるごとで象徴とのつながりを学ぶダイナミック・ジャーニーといった感じです。
白樺は冬至の日から約１か月「大地が生まれ変わる月」と命名された時期の守護植物で、守護動物はスノーグース、守護鉱物は水晶、守護色は白となっています。
メディスン・ホイールでは太陽が南への旅から戻ってきて、旅を再開する月と定義されています。
ネイティブアメリカンの人々は、白樺の葉、枝、樹皮をあますところなく利用し、重要なメッセージは、白樺の樹皮に書き記していたそうです。
樹液はそのまま飲むか、または楠の樹液とブレンドしてルートビアのような飲みものを楽しんだといいます。
樹皮と葉を乾燥させたお茶は、胃腸や肝臓、泌尿器の不調を整えるものとして飲用し、皮膚にも健康と美容のために塗布使用していました。
伝統儀式として有名なスウェットロッジは、小屋の床にハーブを敷きつめ、ハーブで作った聖なるパイプが用意され、熱した石の上にはハーブと聖なる木の葉がおかれ、水をかけるたびに香り豊かな蒸気を堪能できる、いまでいう簡易サウナのようなものです。
丸く造られたロッジは子宮を表していて、香気と蒸気の中で行われる儀式によって、子宮から新たに生まれ出ることを意味していました。
スウェット・ロッジで使うハーブはセージを中心に、パイン（松）、ジュニパー、シダーウッドなどが有名ですが、白樺の葉も使用されてきた記録がのこっており、白樺は体内にたまった静電気をとりのぞき、それは身にかかる災難を払ってくれる守護植物と信じられていたようです。
たしかに静電気がビリビリと、ヒトやモノに触れるたびに発生しているときは、運気も落ちているような気がします。
学生時代、真冬の晴天日に札幌の大通公園を歩いているとき、静電気で髪の毛が魔法使いサリーちゃんのパパみたいになっている友人のあたまに、どでかいカラスが止まったのを目撃した時は、気の毒やら可笑しいやらで腹筋がよじれるほど泣き笑いしました。
地元のローカルネタに静電気をためてしまうとカラスにおそわれる説があって、それはほんとだったねと、泣き笑いが止まらない友人をオカシナ慰め方で気遣ったわたしに、彼女は今でも静電気防止グッズの写真を送ってくれたりします。
もとい、白樺はからだの循環を良くして毒素を排泄する目的で、スウェット・ロッジ内では葉のついた枝を束ねて皮膚をたたくのに使われました。
フィンランドのサウナでも、同じように白樺の枝を使う歴史があります。
白樺はパイオニア・プランツというだけあって、根の周囲では微生物が活性化します。
堆肥をつくるときには、白樺の木のそばに積むとよい堆肥ができるといわれているので、自家菜園など畑の周囲を掃く箒は、白樺の枝を束ねて作るのもよいかと思います。
先逝く人はきざはしに
わたしは北海道で生まれ育ったので、いちばん初めに覚えた木は白樺でした。
あちこちに生えていて、白い幹が印象に残り、目に留まるたび「あれなに？これなに？」と聞いていたからだと思います。
すこし田舎にいくと日当たりのよい場所に群生する白樺林はそこ・ここに見られます。
白樺林独特の爽快でひらけた空気感は、地上世界にやすらぎを見い出す原風景となり、変性意識に入るまえにあたまとこころを同期するトリガーとして頻繁にイメージ活用しています。
からだのこわばりや、意識のこわばりは、静電気と同じでいつのまにかため込まれ、ほぐれた時に初めてどれほど緊張していたかがわかる、ということがよくあります。
わたしが１７歳になったころ父が他界し、こころの内でその事実をきちんと臓腑におとすまで１０年以上かかってしまいました。
父は、いまではすっかり絶滅危惧種となってしまった勝新太郎のような豪胆で無鉄砲極まりない素行の人でした。
４０代の若さで亡くなりましたが周囲の人からは、ああいう人だったから早死にするのもフシギなことじゃないよね…という心の声がダダ洩れで、わたしもどこかでそんな風に感じていたかもしれません。
ある日のこと札幌から函館にむかう道中で、広く開けた白樺の純林を目にして、あいかわらずの独特な空気感に圧倒され、透明できれいだなぁ、白樺にしかつくれない、このひらけた空気感は、いったいなんだろう…などとひとりごちておりましたら、突然父のことを思い出しました。
「生命種はさまざまに役割があって、切り込む人、耕す人、維持する人、収穫する人、配分する人、いろんな宿命を背負って、いのちのタスキをつないでいくんだなぁ。
人も動物も植物も、役割があるんだなぁ。
地球で生きるって、そういうことなんだなぁ」
ふわりと降りてきたその思いは、それまで気づかなかったコチコチに固まっていた芯にふれ、と同時に１０年ぶりに力の抜けたからだの（意識の？）重さを、どさりとおいてゆきました。
こういうと変な感じですが、重力を思い出した、というような。
からだという器を思い出した、というような。
いまここに生きている感覚って、こんなに重かったっけ？と自問しつつ、久しぶりに皮膚で区切られた輪郭をありありと体感して、なんというか身の内との和解がようやく完了し、これでいっしょに再スタートできるね、というような気分だったと思います。
そこから声なき声に背中を押され、白樺のことをもっと知りたくなり、樹液を採取するワークショップに参加してみたり、白樺の樹皮はもちろんハーブや小枝をあつめて夕暮れの海岸で焚火をしたり、白樺林を探すドライブが週末のルーティンになったりして、自然に親しむことがふえてゆきました。
フィンランドのサウナで使用する白樺の若葉について調べているとき、植物には芳香成分があるということを知り、精油（アロマ・エッセンシャルオイル）に興味を持つに至ります。
近しい人の死はのこされた者に大きな謎を投げかけ、此方と彼方のきざはしとなり、いつか皆逝くあちら側への興味関心を喚起します。
先に逝くものたちはみな、「来た道、戻り道」を思い出せるように、道先案内人の役割を担っているのかもしれないな、と。
人はどこからきて、どこへいくのか。
父の死がわたしに授けてくれたもので、一番大きかったのは「地球人としての人生」を考えるきっかけです。
父の魂はどこへいったんだろう、人は死ぬとどうなるんだろう。
１７のころそう思いはじめて、いまだに謎は解けぬまま、植物やハーブに教授してもらう日々は続いています。
＊当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
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お読みくださりありがとうございました。
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