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カラマーゾフの兄弟にみるロシアの食文化【カラマーゾフの兄弟の研究レポート①】

カラマーゾフの兄弟を読んでいく中で、ロシアの食文化に興味が出たので、少し調べてみましたのでレポートします。

コーヒーと、ジャム?!

作中では、ジャムが良く登場します。
ただし、私が認識していたジャムとはどこか違うのです。

というのも、私は「ジャムはパンなどにつけて食べる、甘いペースト状のもの」という認識でした。

しかし、こんなシーンが出てきます。

アリョーシャがはいったとき、食事はすでに終わって、ジャムとコーヒーが出ているところだった。

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第一巻 p256

コーヒーの「パートナー」としてジャムが出てきているのです。

ところで、桜のジャムは?ここにあるんだよ。覚えてるかい、お前が小さな時分、ボレーノフさんの家で、桜のジャムを悦んで食べていたじゃないか?」

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第二巻 p40

ジャムを「食べる」と表現しています。
あんまり、ジャムを食べると言わない気がします。

また、「桜のジャム」もあんまり聞き慣れません。

どうやら、ロシアではお茶とセットでジャムを嗜むようです!
この飲み方、やってみたいですね~~。

ロシアとお茶

また、上記のシーンではフョードルとイワンはコーヒーを飲んでいましたが、作中で頻繁に登場するのが、お茶。
みんなしょっちゅうお茶を飲んでいますよね。

このお茶って、どんなお茶なのかがすごく気になっていました。

こちらのページに、ロシアのお茶文化について書かれていました。

ロシアにお茶が公式に伝わったのは17世紀前半、モンゴルからロシア皇帝へ献上された中国茶でした。

LUPICAホームページより
https://www.lupicia.com/magazine/2018/02/special.html

はじめは、中国から伝わったようですね。
たしかに中国とロシアは物理的に近いですからね。

ロシアでの喫茶スタイルは、導入部こそ中国式を模倣していましたが、やがてロシア式といえる独自の習慣が誕生しました。その中心となったのが「自ら沸かす」という意味を持つ、金属製の湯沸かし器サモワールでした。

LUPICAホームページより
https://www.lupicia.com/magazine/2018/02/special.html

その後、独自のお茶文化が発達したようです。
サモワールというポットを用いるようです。

これらのサイトも興味深かったです。

ロシア式の喫茶店を作ったら面白そうだな~と思います。

ウハー(魚汁)

作中でよく登場するのが「ウハ―(魚汁)」。
イワンと料理屋「都」で会ったアリョーシャが注文しています。

魚汁を下さいな、その後でお茶をちょうだいしましょう。僕、すっかり腹が空いちゃったのです。」とアリョーシャは愉快そうに答えた。

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第二巻 p40

「すっかりお腹が空い」ている時に食べるくらいなので、メインディッシュになり得るものなのかもしれません。

また、フョードルはアリョーシャが去ろうとする時、引き留めてこんなことを言います。

「いつかまた、近いうちに来んか、魚汁を食べにな。一つ魚汁を拵えるから。しかし今日のような奴じゃない、特別なんだ、ぜひ来てくれ!(後略)

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第一巻 p357

ここで注目したいのは、ウハ―(魚汁)の位置づけです。
食事に招く際の誘い文句として使われているのです。
つまり、ある程度当時のロシアの中で中心的なポジションにある料理だと推測します。
「○○でも食べに来てよ。」と。
現代日本に置き換えるなら、寿司とか、焼肉とか、すきやきとか、鍋とか、そういう位置なのかもしれません。

調べると、こういう料理でした。

ロシアのスープは肉のブイヨンがベースのものが多いのですが、「ウハー」と呼ばれる魚のスープもあります。鶏ガラと小魚でブイヨンを取り、そこにタマネギ、パセリ、セロリ、ベイリーフ、黒コショウなどを入れて香りをつけて、汁を漉こします。そしてニンジン、ジャガイモ、キャベツなどを加え、塩コショウで味を調え、最後に大きな魚の切り身を入れます。魚はサケや川魚やチョウザメなど。澄んだスープはあっさりした塩味です。

NHK出版デジタルマガジンより
https://mag.nhk-book.co.jp/article/18558

これはなかなか美味しそう~~。
ロシアは寒いので、温かいスープが食べられてきたのかなと思いました。

コニヤク、ウォートカ、シャンパン

お酒も良く登場します。
寒冷地のロシアでは身体を温める為にも、お酒を飲むのかもしれません。

良く出てくるのが、コニヤク、ウォートカ、シャンパンです。
印象としては、普段から飲むお酒はコニヤクとウォートカで、お祝い事とか宴で飲むのがシャンパン、みたいな位置づけなのかなと感じました。

これらのお酒は、生を肯定するもの、俗世の象徴としての役割を担っている気がします。

自殺することを決意したミーチャは、死ぬ前の大宴会の為に、シャンパンを3ダースも買い込みます。

いいかい---僕が行くまでにシャンパンを、そうだなあ、三ダースばかり用意して、(中略)ちゃんと馬車に積め込んでおけってね‥‥‥

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第三巻 p22

モンパンシエ、ザクースカ、ストラスブルクのパイ

ミーチャが最後の晩餐として以下のような食べ物を発注しました。

チーズに、ストラスブルクのパイに、燻製の石斑魚に、ハムにイクラに‥‥(中略)それから、いいかい、お土産も忘れないようにな、菓子に、梨に、西瓜を二つか三つか。それとも四つ―――いや、西瓜は一つでたくさんだ。それからチョコレートに、氷砂糖に、モンパンシェに飴に――

「カラマーゾフの兄弟」岩波文庫 第三巻 p22-23

ザクースカとは、前菜とか、おつまみ、軽食などを指すようです。

ウォッカは冷やして飲むのが通の飲み方で、雪の中にウォッカのボトルを置いて冷やしたりもする。日本酒のお猪口のような小さなグラスに注ぎ、勢い良く飲み干したらザクースカと呼ばれる肴をつまんで食べる。ザクースカとは、前菜、酒の肴、つまみ、軽食などを意味するが、(後略)

RUSSIA BEYONDより
https://jp.rbth.com/articles/2012/09/22/39115

モンパンシェとは、こちらの記事によると「高級キャンディ」のことのようですね。

石斑魚(シーグ)とは、ウグイという魚のことのようです。

「ストラスブルクのパイ」については、調べてもあまり良く分かりませんでした。

ありったけのお金(1,500ルーブリ)を使って、死ぬ前にとびきりド派手にどんちゃん騒ぎをしようという時に注文するような品物なので、当時のロシア料理のフルラインアップなのでしょう。

現代日本ならどういうラインアップになるでしょうか?

ちょっと、ミーチャのセリフをお皿にして、料理を入れ替えてみます。

【元のセリフ】
チーズに、ストラスブルクのパイに、燻製の石斑魚に、ハムにイクラに‥‥(中略)それから、いいかい、お土産も忘れないようにな、菓子に、梨に、西瓜を二つか三つか。それとも四つ―――いや、西瓜は一つでたくさんだ。それからチョコレートに、氷砂糖に、モンパンシェに飴に――

【現代日本版】
寿司に、うなぎに、天ぷらに、すき焼きにアワビに‥‥(中略)それから、いいかい、お土産も忘れないようにな、饅頭に、葡萄に、メロンを二つか三つか。それとも四つ―――いや、メロンは一つでたくさんだ。それからショートケーキに、カステラに、シュークリームにソフトクリームに――

こんな感じでしょうか?(笑)

なんか、作中で出てくる食べ物って、やけに美味しそうに感じるのはなんででしょうか?

「ミーチャの最後の晩餐」とかいう名前で、どこかのレストランでメニューとして出して欲しいです(笑)

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