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書店定点観測 #1

書店は時代を映すメディアではないでしょうか?
店頭には、出版社のいまイチオシの本が並べられています。
並べられている、というよりディスプレイされています。

いま世の中の人々が何に悩み、何を求め、何を考えているのかが本のタイトルと魅力的な装丁に姿を変えて映し出されています。

人々の内面的な渇望が顕在化したものが本であり、その集合体が書店であると思うのです。

一方で人々(消費者)も本を購入することによって自分たちの声を書店・出版社・作家側へ表明することになります。

その声を聴いて・・・つまり本の売れ行きを見て、書店・出版社・作家側はまた新たなニーズを発見し、新たな本作りを開始する・・・。

そういう相互作用によって、時代が作られるのではないでしょうか?

***

と、いう訳で「書店定点観測」と題してちょこちょこ書店の観察記録を書いてみようと思います。

大まかな構成要素としては、下記のイメージでやってみようと思います。

- いま、書物内で頻繁に使われているワード/フレーズは何か
- そこからどんなことが読み取れそうか
- 個人的に気になった本

では早速。。

トレンドワード、トレンドタイトル(2023年8/11版)

①「エッセンシャル思考」「最小の時間で」系統

タイムパフォーマンスという言葉が生み出されているように、
「時間がもっとも大切な資源である」という価値観が強まっていると思います。
注目したい点は、
「時間が大切だから時短を目指そう」
ではなく、
「時間は大切だからやりたいこと、やるべきことを選択して本当に大事なことにだけ時間を使おう」
と思考の型が移行していることです。

「かかる時間を短縮する」という段階を終え、

「時間の使いどころを精査する」という段階にきていると思います。

三種の神器どころか、掃除はルンバに任せて、食事はUbereatsで運んできてもらって、残り700メーターは電動キックボードに乗って移動して・・・
と時間を最大化する為のサービスや商品がここまで出揃った今日。
時間の使いどころを精査するという価値観が育ってきたことは必然ではないでしょうか。

こうした価値観の変化はプライベート時間だけでないはずです。
ビジネスにおいてもAIが台頭していけばいよいよ人間の仕事は減っていきこの変化の速度も加速していくのかもしれません。

あるいはそれすらどこかで頭打ちになり新たな価値観へシフトするのかもしれません。

このテーマについては今後も注目していきたいと思います!

②「睡眠の質を上げる」系統

これも突き詰めれば「時間が大切だ」
という価値観と同一ではないでしょうか。
「睡眠の質を高めたい」とはすなわち、
「起きている時間の質を最大化したい」ことの表れだと思います。

③「才能に気づく方法」系統

転職サービス関連のCMが嫌というほど流れているし、誰それが転職した、という話は日常会話の中でよく出てくるかと思います。
いまや転職は当たり前の時代なのかもしれない。

転職が当たり前の時代になるということは、
つまり人材の流動性が高まるという事であり、
つまり競争が激しくなるということであり、
つまり自身の競争優位性を確保しなければならないということでしょう。
そのためには才能に気づき、その才能を耕していく必要があるのだというロジックかと推測します。

更にこの状況に加えてAIが仕事を奪っていくとかいかないとか。

こうした激しい変化、外的圧力の存在を見据えると、一部の人だけではなくすべての人が自身の進路について考える必要がある時代なのかもしれません。
なんか、世知辛いなぁ。

ただし、才能という曖昧で、時に甘美な言葉に囚われてはいけないと思います。

混沌の苦しみは何かにすがりたいという気持ちを芽生えさせるのではないでしょうか。そしてそんなときは得てしてまやかしに目がくらみやすくなると思います。
才能なんてマボロシだというのが個人的な意見です。

④「数値化せよ、数字で考えよ」系統

ビジネスでは、データに基づいて考え判断することが重要だというのがスタンダードな考え方になっています。

データが重要になってきた、というより、
データが取れるようになってきた、だからデータを活用しない手はない。
というのが正しい実態ではないでしょうか。

例えば広告。
チラシを配ったとしてもそれを何人中何人が読んでくれたかはデータをとれない。
一方でインターネット広告は何回表示されて何回クリックされたかどうかといった指標をはじめあらゆる効果をデータとして測定できる。

勘だとか感覚だとかは許されず、データ化し(数値化し)、データで考える。

シビアな世界ですね。。
またしても世知辛い。。

どんどん窮屈な世の中になっていっている気がするのは私だけでしょうか。

⑤「お金の増やし方」系統

積み立てNISAが象徴的だと思いますが、いまや「貯金ではなく資産運用」が新しい常識になりはじめているように思います。
(というよりそう誘導されてきた。)

「一生懸命働いてお金を貯めればよい」という単純な価値観では不十分になり、更に自分で増やさないといけない・・・。

なかなかしびれる展開になってきましたね。
この点においても世の中は複雑化している気がします。

トレンド本①「君たちはどう生きるか?」

宮崎駿監督の最新作映画の原作(の漫画版)。

私はまだ映画を観ていません。

日本の歴代の爆売れした本ランキングを調べたことがあるのですが、この原作本がそこにランクインしていた記憶があります。

時代を超えて長く売れるものは何か普遍的な価値を持っているのだと想像します。

「生きる」という人間にとって最も本質的なテーマでありながら、もっとも漠然としたテーマを主題にするのって難しそうです。

生きるという哲学を扱った日本の名著×日本アニメーションの巨匠
という組み合わせは注目です。

トレンド本②「反応しない練習」

仏教をベースとしたメンタルコントロール的な本かと想像します。

メンタルヘルス関連の本も最近良くピックアップされている気がします。
その要因は、例えば下記のようなことが考えられると思います。

①「メンタルヘルスそのものの重要性が」認識されるようになってきている
②「社会が」ストレスフルになってきている

要因の分析は単純には成しえませんが、いずれにせよメンタルヘルスを保つことへの需要は高まっているかと思います。

個人的に気になった本

(1)『齋藤孝の冒頭文de文学案内』(齋藤孝さん)

齋藤先生は明治大学文学部教授で、「声に出して読みたい日本語」など文学と身体論を基盤として多数の著書を書かれています。
私淑しております。

冒頭文は作品の導入でありながら作品の印象を大きく左右する一文ですよね。
例えば、

「恥の多い生涯を送ってきました。」

永遠に残る日本語ですね。。
齋藤先生のセレクトと解説をぜひ読みたいです。

(2)『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(堀江貴文さん)

堀江さんほどあらゆる分野に精通した知識人はなかなかいない。
医学の専門家、科学の専門家、経済の専門家・・・。
そういう専門家はいるが堀江さんはそのそれぞれの専門家たちと対等に対談し得る。

それどころか、単なるアカデミックな議論に終始するのではなく、実業家の目線として実社会に/実生活にいかに活用するか?というレベルまで意見を昇華させる。

という訳で堀江氏は現代日本を牽引するオピニオンリーダーであることは疑いようのないことであり、その未来予測は大変気になるところだ。

私は未来予測を実利的に活用しようという発想はなく、未来への好奇心を掻き立てられるという点で気になった本だ。

(3)『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって 寿命を使い切る』(和田秀樹さん)

一瞬、ギョッとするタイトルです。
何故ギョッとするのか?
死は生きている人間にとって目を背けたいテーマだからだと思います。
しかし死は生と表裏一体であり、死を見つめることは前向きに生きる為に必要なことだと思います。

目次だけチラっと見たのですが、
「日本人は死を恐れすぎている」
という言葉があり、ハッとさせられました。

最近読んでいる「生の短さについて」(セネカ)と関連する内容である気がして、興味深く感じました。

まとめ

書店は時代のいまを読み取れる場所でありたくさんの発見があり好奇心を掻き立てられます。
また、買った本は別途読書感想文を書いてみようと思います。

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