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シブヤフォント、それは福祉施設✖︎学生✖︎企業の真っ向勝負

お久しぶりです、シブヤフォントのアートディレクターーのライラです。今日はちょっと前の話を。

去年の2022年12月4日都内某所にてシブヤフォント毎年恒例の新データ発表会が行われました。

発表会となんだか楽しい感じだがそれはまさに真剣プレゼンそのもの。共に約半年かけて新データを制作した桑沢研究所の学生20名と10の施設(通称:障害福祉作業所)のメンバーからなる10のチームは企業を目の前にガチプレゼンし勝負。

参加企業はシブヤフォントの取り組みに賛同しコラボしたいファッション、スポーツ、飲料、印刷などさまざまな業界から集まってくる。

6年目にして毎年参加企業も増え地元や地域を支える中小企業から日頃耳にする大手企業までさまざまな業界の方とコラボをしてきた。5年前の自分だったら現実ではないように思える。

発表する学生x施設の各チームは8分の持ち時間で共に制作したパターンとフォントのデザインをプレゼンした。制作秘話含めデザインの裏に秘めたストーリーとコンセプトを伝える。学生はデザインの意図を、施設の支援員はストーリーやインパクトを。

2時間に渡り各チームがそれぞれの思いや考えを企業審査員の前で3ヶ月弱共に作り上げたデザインをそれぞれの観点からアピールし企業が独自の観点でそれぞれプレゼンとデザインがいいと思ったチームを企業名の賞で授与する。学生と施設にとっては豪華な賞品付きで名誉ある企業から偉大なる評価を受けれる機会。企業にとっては一つ先に商品やサービスに使えるデザインを吟味できる機会。どっちも真剣勝負だ。MCとして近くでありながらどこかこの光景をず天井から俯瞰してみている自分がいる。そしてさまざまな気づきがある

発表会に来ていただく企業はファッションや飲料、スポーツなどさまざまなジャンルの方々。選考会に参加する条件としてはシブヤフォントの使用を前向きに考えている企業としている。みんな自身のブランドビジョンをもっており、シブヤフォントのパターンやフォントのデザインがどう自社の商品やブランドアイデンティティーと価値と兼ね合うかを真剣に吟味する。そして一番可能性を感じるチームに賞を授与する。

一見「違う」世界同士に見える「施設x学生」と「企業」ぶつかり合うと面白いことが起こる。

デザインのビジュアルだけでは評価されない

各チームの発表を聞き企業の皆さんはどんなポイントをみているのか。商品を扱う企業さんが大半なのでもちろんデザイン性はとても重要。またその年のはやりや傾向にも文官な側面はあるかもしれない。しかしシブヤフォントではそういった見た目よりかは何をテーマにとか、何を思って、どんなプロセスでそのパターンやフォントをつくったかというストーリー性がかなり重視される。というのもそのストーリー性こそが企業のブランドアイデンティティと紐つくのだ。

例えばワークセンターひかわの「海」というパターンは名前の通り海を思わせる激しい波が撃ちかうようなビジュアルに仕上げパワーみなるデザインはどんな逆境にも立ち向かうという企業のスタンスと一致し「ALVARK 賞」をもらった。

「海」by Sakura Kako(ワークセンターひかわ)& 虞 吉鴻

また発表者はプレゼンで作り手の顔を必ず見せデザインについて話し語る。アーティストとしての特性や作品の特徴、制作の風景だけでなくその作品に宿るエネルギーや可能性を語りかけ審査員や会場を惹きつける。

この「海」もプレゼンで問いかけます

「深海ってどういう場所を思い浮かべるでしょうか?綺麗な深海色に神秘的な赤色。その純粋な色使いがとても魅力的で、そして作者本人しか見えない純粋な海がここにあります。」(虞 吉鴻)

実際に書いたメンバーさんは海をイメージしたかはわからないが、それを見事学生が解釈しデザインに落とし込んだ。勢いよく筆を走らせた絵を書いている本人現場を知っているこそそう解釈できたものだ。

デザインの想い思いのまま伝える学生

ここで思う。かっこいいとかかわいいとかデザインの見た目は大事だが、やはり企業としてはなんで「わざわざ」シブヤフォントで作られたデジタル素材を選ぶのか。デザインもあるがそれより一つ一つに宿るヒューマンストーリとエネルギーなのかもしれない。

一つ一つの発表に耳を傾ける審査員のみなさん

この言葉を聞いて賞を授与し採用を決定した企業(後日公開)もチームの言葉に自ら挑む冒険を想像したのだろう。だから共感をし使いたいという揺るぎない判断ができたのだろう。

施設の支援員も発表にチャレンジ

また、今回は施設自身ももっと創造能力を発揮してもらいたいメンバー(利生者)選んでもらい、学生に必ずパターンもしくはフォントにしてほしいと要求する様にお願いしました。特にワークささはたの「nekotosakana」はその象徴である。2人のメンバーさんが関わり、動物などの絵が得意なAさんと 毎朝欠かさず色の点を書いているBさん。強度行動障害ももっており、普段施設で席について何かを継続的にやることが苦手で支援員も何か本人にできることはないかろ模索していた。一見不可能に見える条件かもしれないが、それでも支援員は「Bさんの線は面白いし使ってくれることで親御さんも喜んでくれる」と強い意志で使用して欲しいと頼んだ。そしてできたデザイン。すかさずワークささはたこのデザインをトランプにして自主製品として発表。それをみたBさんの親御さん「うちの子がこんなことができるなんてすごいです!」と。このストーリーは誰もの心を掴んだ。

「nekotosakana」by ワークささはた& 岩﨑 那海


だからシブヤフォントのデザインは強いのだと思う。エネルギーなのか歴史なのか、まだ私でさえ言い切れない「何か」がデザインの1つ1つに宿っている。

困難や悔しさから野望が生まれる

「ラブ・ゴーズ・オン」 by Ayaka(ワークささはた)&大熊 芹菜

今年度はワークささはたチームが各企業が出す賞を総なめした。とくに 「Love Goes ON (ラヴ ゴーズ オン)」を始めシンプルでかつ迫力のあるグラフィカルなデザインの高さに企業はさまざまな使い道を想像した。 ハートの形はシンプルだけどアーティストのタッチ含め強い意志が感じられる仕上がり。またありがとう、や大好き!といった気持ちがかっこかわいいデザインに乗せられていた。企業目線からしてとても使いやすい


賞はその場で集計され賞状に達筆な区役所職員が直筆で記入

審査員と共に、どの賞をどのチームに上げるか。「チームがかぶってもいいんですか?」という質問にわれわれシブヤフォントはすかさず「はい、もちろん」と答えた。参加賞や皆勤賞などない。全てはデザインの質で判断して欲しかった。そうすることで学生のみならず施設自身も自分たちのデザインがどうみられているか、何が足りないのかがもしかしたら俯瞰できるからと思ったのだ。「みんなこんなにがんばったのに、、、」そういう人もいっぱいいるかもしれない。一見冷たい判断かもしれないがそれが世の中の現実だし、そうしないと今後いいものはできていかない。時には厳しい現実を知ることも大事なのだ。どんな立場であれ。

ALARK賞をいただいたチームひかわ

待っているだけでは社会は助けてくれない

今年からのシブヤフォントの制作は桑沢デザイン研究所の前期授業だったため12月に行われる発表会への学生の参加は任意になった。そのため参加学生全員の参加は難しかった。とはいえ20人中15名の学生が参加。中には施設の支援スタッフだけでプレゼンするチームもあった。自分たちに魅力を現場が伝えることは至難の業。発表会を終え「どうだった?」と賞をもらえなかった施設スタッフに別々に聞くと、皆はそろって「私たちがうまくアーティストや取りくみや魅力をつたえきれなかった」「もっと攻めればよかった」と。

この言葉を聞いてわたしは嬉しくなった。つくられたもの・デザインされたものを現場に「提供」するだけでは現場なんて変わらない。違った観点やスキル(この場合デザイン)とともに現場で動き・気づきが生まれ変化が始まる。全国の現場のみんなに言いたい。自分たちも共にコラボする人とともに動かなければ未来なんて作れないし不満に思う現状も変わらない。大袈裟に聞こえるかもしれないけど、まず大袈裟に思うことがまず大事なのかもしれない。「くやしい」「おしい」「もっとやれた」。その悔しさこそ原動力になる。どんな立場のひとも。 


最後に記念写真でパシャリ

データは1月からシブヤフォントのホームページにてリリースしています。

ありがたいことに年度はじめからたくさんの企業やイベントとのコラボレーションが実現してます。2022年度のデータもどこかでそのうちお見かけするかもしれません。

また、シブヤフォントの SNS (InstagramとFacebook)で毎週金曜日はこれらの新作パターンとフォントとともにデザインに関わったアーティスト紹介をしています。それぞれの柄に宿る制作意図や人々のストーリー、ぜひご覧ください。

一般社団法人シブヤフォントアートディレクター ライラ・カセム

インスタグラム:@shibuyafont

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