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リノベデザイナーになりたい人へ(#2.必須スキル 前編~実際の図面を公開~)

リノベデザイナーになりたい人へ

noteやInstagramを見て私を知ってくれた方から、リノベデザイナーという仕事についての質問をもらう機会が増えてきました。
今後数回に分けて、リノベデザイナーという職業に興味がある方に向けての記事を公開していきます。


  1. リノベデザイナーとはどんな仕事なのか

  2. 必須スキル

  3. 未経験からの近道

  4. 必要な道具や資格などの具体的な準備情報

  5. 報酬や受注方法

  6. 多様な働き方の可能性


リノベデザイナーになるために必要なスキルについて

第二回目の今回は、「2.必須スキル」についてをまとめていきます。
長くなりそうなので前編・後編に分けます。この記事は前編です。

リノベデザイナーに興味がある「建築職未経験の素人の方」に向けた記事なので、プロの方にとっては当たり前すぎて読む意味がないと思います。
リノベデザイナーになりたい人を応援したい!という気持ちで書いています。


↑過去に書いたこちらの記事を一部引用。

リノベデザイナーの任務とは

前回の「1.リノベデザイナーとはどんな仕事なのか」の記事でも書きましたが、まず私が言うリノベデザイナーという職業の任務とは、
リノベーション工事ができるように、設計デザインをして、必要な資料(図面など)を作成すること。です。
より具体的にすると、

  • リノベがしたい人(施主)の要望を引き出して、

  • どのような間取り・内装・設備にするかを提案し、

  • 希望の間取り・内装・設備にするために必要な仕様を決めて、

  • リノベ工事をするための図面や仕様書などの資料を作成し、

  • その資料を元に工事担当者とすり合わせを行い、

  • 工事中や工事完了時に計画通りかどうかの確認をする。

以上が私の言うリノベデザイナーの仕事です。

上記の任務を元請けのリノベ会社さんや施主様が安心して私に任せられるように、以下のスキルが必要だと思います。

7個の必須スキル(能力+知識)

  1. 現地調査をして現地で実測を行い、状況を把握できる

  2. 施主の要望をヒアリングして理解できる

  3. CADソフトを使って図面の作図ができる

  4. 設計するための建築基礎知識と予算感覚がある

  5. 住宅設備機器、建材、内装材などの商品情報知識がある

  6. 間取りや内装デザインの発想力(センス)がある

  7. 施主との打合せに必要なコミュニケーション能力がある

リノベデザイナーになるには、最低限この1~7のスキルが必要だと思います。それぞれどの程度の知識や能力が必要なのか、各項目細かく説明していきます。

ただ、働き方にもよるのであくまで私の場合、それとマンションリノベの場合という点だけご注意ください。

※長くなりそうなので、今回は1~4までを前編としてまとめます。

必須スキル1:現地調査をして現地で実測を行い、状況を把握できる

リノベはまず現地調査から始まります。スケジュールの都合で先に施主のヒアリングをすることもありますが、リノベ工事は現地調査をしないと何も始まりません。
ちなみに現地調査は「現調」と略して呼びます。

リノベデザイナーは工事の設計担当者ですが、工事の施工担当者は施工管理や現場監督と呼ばれる職業の人たちです。
現調は施工担当者(以下、施工管理)と協力して行うことが多いです。

現調では実測と状況確認を行います。

実測について

実測はその名の通りあらゆる場所を測ります。
赤外線でピ!ピ!と簡単に測れるレーザー距離計が便利です。メーカーは何でもいいのですが、とにかくこれがないと何倍も時間がかかります。

私は「ピ!って測るやつ」と呼んでます

レーザーでは測れない細かな場所は、メジャーとも呼ばれるスケールを使って測ります。(ちなみに建築業界ではメジャーと呼ぶことはなく、設計も職人もみんなスケールと呼びます)
細かな場所を測る目的なので、2mとか3mの軽いものが私は好きです。

こんなかわいいスケール見つけました

どんな場所を測るのかというと、
各部屋の壁から壁、天井高、段差、窓、窓枠、建具(室内ドアのこと)、梁や柱、廊下幅、開口幅、キッチンや洗面台の寸法、玄関ドア、収納内部の広さ、などなど。とにかく測ってメモした寸法を元にして図面を起こさないといけないので、そのために必要な寸法をどんどん測っていきます。

最初の頃はめちゃくちゃ時間がかかりました。でも慣れるとコツをつかんで早くなります。立ったりしゃがんだりの運動で私はいつも筋肉痛になります。
昔は紙にメモしていましたが、最近はiPadのグッドノートやプロクリエイトなどのアプリを使って寸法をメモします。
大抵は不動産屋のサイトに載っているような間取り図があるはずなので、それに寸法を書き込んでいきます。

状況確認について

実測しながら状況確認もしていきます。施工管理と手分けすると効率的です。具体的に何を確認するかというと、
水回りの配管関係、換気関係、床素材と床の構造、壁や天井の構造、コンセントやドアホンなど電気関係の位置、給湯器の種類と年数、浴室は追炊き配管が可能かどうか、各箇所の素材と劣化具合、などなど。

確認漏れがないように事前にリストにしておくと安心です。現調時にそのリストを施工管理と共有して手分けすると楽ちんです。

必須スキル2:施主の要望をヒアリングして理解できる

リノベがしたい施主様はこうしたいああしたいというご要望が必ずあるので、それを上手に聞き出すのがヒアリングです。言葉をそのまま捉えるのではなく、なぜそうしたいのかまで理解しておく必要があります。

例えば、ウォークインクローゼットがほしい。という要望の場合でも理由を聞きます。ヒアリングしていくと、収納力がとれるならウォークインじゃなくてもいい。むしろ各部屋に個別のクローゼットがある方いいかも。となることもあります。
これを聞いておかないと、間取りを検討する時の選択肢が変わってきます。

私はいつも自分の家だと思って真剣に、自分のことのようにわくわくしながらヒアリングをするのですが、この初回の打ち合わせで信頼関係がつくれると、その後の打合せもとても楽しくスムーズに進みます。

必須スキル3:cadソフトを使って図面の作図ができる

リノベデザイナーになりたい方はここが一番気になるのではないでしょうか。設計といえば図面、図面と言えばcad。
私は無料のJw_cadを使っています。ジェーダブルキャドと読みますが、略してJW、ジェーダブと呼ぶことが多いです。

特徴として、とにかく作図方法がシンプルです。マウスを動かして線を書いていくのですが、いろんな機能があってそれを覚えると効率よく書いていくことができます。
マウスは右クリックが重要。私はクロックメニューはあまり使わず、キーボードに各機能を自分で割り当てて使いやすくしています。右手はひたすらカチカチカチカチ、左手はノールックでキーボードを叩く。両手が忙しいです。

ダウンロードページが簡素な作りなので心配になるかもしれませんが、ここからダウンロードします。

本屋行くとたくさん本が並んでいます。本を買う場合はCD-ROMが付いてくるようなのでそれをインストールすればOKです。

本を見ながらとにかくやってみるのがおすすめ

楽天ブックスリンク

実際どんな図面が書けるのか、どの程度の書き込みが必要なのか、私の実際の設計案件図面をこの記事の下の方で公開したいと思います。
ただ、すみませんが有料エリアとさせていただきます。
気になる方はこの記事の一番下の有料エリアまでスキップしてください。

必須スキル4:設計するための建築基礎知識と予算感覚がある

建築基礎知識

今回私がお話している内容は戸建てや店舗ではなくマンションのリノベをする場合という前提です。
マンションはよくスケルトンリノベーションという言葉を聞くように、住戸内をほぼすべて解体することができます。スラブという構造部分を触らないので、戸建てリノベのような耐震とか構造についての詳しい知識は不要です。ただ、ここは壊してはいけない、ここはこのまま残すべき、などの基礎的な知識は必要です。専有部分と共用部分についてもよく理解しておく必要があります。

その上で、配管、電気、モジュール、住宅設備機器、建具、仕上げ材、造作、などの知識が必要になります。

建築の基礎知識、というかマンションリノベの設計ができる知識。改めて考えると簡単に身につけられるものではない気もしますが、もし未経験から工務店に就職したとして、先輩について1年も学べばものになると思います。
もちろん実践的に学ぶ機会と現場にもちゃんと足を運ぶ機会があればの話です。何年も修行が必要な職人さんに比べると、リノベの設計は敷居が低い印象です。

私は施工管理の経験はないので、本当に基本的な建築知識しか持っていないと思います。設計だけならそれでやっていけます。
簡単に言うと、こんなものを造りたい!と図面に書いて伝えるのが設計で、じゃあどの職人にいつどんな材料で造ってもらう?を考えるのが施工管理です。

例えば棚を造る場合、
こんな寸法、こんな素材、こんな色、こんな位置に造ってねと指定するのが設計。
どこから材料を仕入れて、いつどこで誰が加工して、設置場所にどんな下地を用意して、どのように取り付けるのか。を考えて手配するのが施工管理。

頭の中にある完成イメージを、実際に手を動かして造ってくれる人に伝わるように、図面や資料にして伝える。設計は実際手を動かして現場で何かつくることはない。でも設計の指示がないと誰も動けない。何も始まらない。

役割担当的に、なんだか偉そうな立場だなという印象を持たれるかもしれません。
実際、現場に行って「お疲れ様です、設計の柴田です」と挨拶すると、監督さんや職人さんたちみんな気を使って優しく対応してくれます。邪険に扱われたり意見を無視されることはないです。偉そうな態度でいてはもちろんダメですが、しっかり意見や指示をして設計としての責任感ある態度は見せた方がいいです。じゃないと、せっかく苦労して作業してくれているからと、仕上がりの違和感や間違いに目をつぶったり、職人さんの意見に言いなりになったりしてしまうので。どうしてもこうしたいんです!どうにかならないですかね?と頼りにすると、現場にいるみんなで一緒に真剣に考えてくれます。名案が浮かんだ時の現場の一体感が好きです。

現場の話になってしまいましたが、設計にとっての必要知識と施工管理や職人さんの必要知識は違いがあるという話です。もちろん、最低限という意味なので、施工に関する知識もあった方がいいに決まっています。そのあたりは何をどこまで極めていきたいか、自分次第だと思います。

予算感覚

予算内で工事を行うにはある程度の予算感覚が必要です。設計が見積書を作る場合もありますが、一般的には見積作成は設計の業務ではないことが多いと思います。

何に予算が多くかかって、どこをどう変えると減額になるのか。プラン作成時や打合せ時に必要な知識です。物の値段を覚えるというよりも、作業費(建築では手間といいます)がどのくらいかかるのかという感覚が大事です。

職人さんは人工(にんく)という一日の作業費で手間がどのくらいかかるのかを表します。1人工は1日にできる作業量のこと。人工は人によって単価が違います。設計はその単価を記憶する必要はないですが、人工が多くかかりそうな作業とか少なくて済む作業を把握しておくといいです。
見積書を見て作成者に質問したり相談しながら経験を積めば、自然と感覚は身につくと思います。

実際の図面を公開

必須スキル3:CADソフトを使って図面の作図ができる
の項目でお伝えした通り、実際に私が作成した設計図面を公開します。

▼このマンションリノベ案件の図面を公開します。
(有料エリアに竣工後写真一覧を載せています)

▼工事前のBEFORE写真

公開する図面リスト(合計11枚)

  • 既存平面図

  • 改修後平面図

  • 改修後平面図(解体後修正)

  • 電気配線図

  • 電気配線図(解体後修正)

  • 展開図3枚

  • 展開図3枚(解体後修正)

解体後修正とあるのは、既設配管の位置や天井の梁の位置などが予想と違ったため、解体してからプランを変える必要が発生したためです。
施工管理担当者と一緒に現地調査をして配管位置など予想しますが、あくまで予想なので解体してみないと確定できません。解体後に急ぎでプラン変更とそれに伴う図面修正を行いました。あとは予算の都合上少しプランを変えたりもしました。
何がどう変えたのか、よければ間違い探しをしてみてください。

一番下に竣工写真一覧を載せました。図面と写真を見比べてみると面白いと思います。
この程度の図面が書ければいいんだな~と参考にしてもらえたら嬉しいです。

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