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美術と工芸の違い

連載の第一回は、「美術」と「工芸」の違いについてのお話です。

まず、美術とは、視覚的な美しさを追求したものであり、芸術の一種です。芸術の細かな説明はここでは省きますが、美術だけでなく、音楽や演劇、文学なども含まれ、より広い意味を持ちます。美術は、宗教や社会運動と共に育ち広がってきたものですが、近代以降は、個人の表現という側面が強まってきました。

工芸品も「美術工芸品」と称されることがあり、美的価値があるという点で、大きくは美術の一種ですが、一般的には、美術品というと鑑賞目的が強く、絵画や彫刻のことを指すことが多いです。

工芸品は「暮らしの道具」

一方で工芸品は、実用性が重視され、「暮らしの道具」であることが基本です。例えば、漆器の汁碗であれば、どんなに加飾が施されたものであれ、汁椀として使用することを想定して作られています。今では、芸術的価値の高くなった抹茶椀や九谷の赤絵作品などは、時に実用性を度外視した作品もあり、それらは美術品と呼ばれることもありますが、鑑賞的な美しさも併せ持ちながらも、使うことで育っていくのが、工芸品の最大の魅力なのです。

・芸術
絵画、彫刻などの美術に加え、音楽、演劇、文芸などを含む創作活動全般。

・美術
視覚的な美しさを表現した活動および作品。絵画や彫刻のことを指すことが多い。

・工芸
機能性と美しさを含んだ、暮らしの中の道具作り。陶磁器や織物、漆器、金工、木工など、多岐に渡る。

「Art」という言葉

英語では「Art」という言葉がありますが、この単語は、芸術作品だけでなく、精神性や生き方も含みます。洋書では、人生の指南書のようなものに「Art of living」というタイトルがつくことがあります。

日本では、「アート」というと、美術的な意味合いが強いように思いますが、最近は少しずつ解釈も広がり、それこそが、社会人としての学びの一つとして捉えられるようになった理由かもしれません。「Art/アート」を学ぶことは、視覚的な感性を養うことだけではなく、人生観や物事の本質を感じ考えることであり、それらは経営や事業の基本と通ずるところが多くあります。

私は工芸の事業を海外で行なっていますが、工芸品について学んでいくと、人々の暮らしや営みについて、自然と興味が湧くようになります。また、工芸は、その土地の文化を映し出すものでもあり、地方の暮らしや海外の文化についても学ぶことができます。暮らしの中の道具でありながら、そこにその土地ならではの美を宿すという考えはとても素敵なもので、私が工芸を学び続けている理由もそこにあります。

工芸においては、「民藝」という思想が存在し、多くの作り手が影響を受けている大切な考え方があります。それについてのご紹介は次回に行いたいと思います。

文:柴田裕介(HULS GALLERY)


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