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非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第七話
こうみえてわたしく、かつてさる大名の姫でございました。当時屋敷にはそれは大勢の人質がおりました。家臣の姫などもまじえて貝合わせをして遊んだものです。平安時代の女房たちのように「偏つぎ」もいたしました。偏諱? さあ、それとは違うと思います。この字が読めますか。そう、いのこ。「遼東のいのこ」とは大して珍しくないものを、さも貴重な物であるかのように勘違いすることでしたね。かつて項羽と争った劉邦の妻の呂
もっとみるリベンジトリートメント ①
頭にきたのでリベンジすることにした。それから仕返しと復讐も。頭に汗をかいたのでリンスインシャンプーすることにした。それからコンディショナーとトリートメントも。
80文字
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非凡な貝貨 note創作大賞応募作品第六話
ばてれんの集まりでしょうか、大勢の人がいます。しゅんぽしおん、という言葉が聞こえました。一人ずつ発言する機会を与えられています。順番が回って来たら何をどう言えばいいだろう、内気な私は迷います。
「次の方どうぞ。どんな目に遭ったのですか」
喉の奥から声がほとばしります。
「父を彼に殺されました」
おおっ。大きくうなずく者、首を傾げる者(たったそれだけ?)
「その前に、あの人のせいで夫も失う羽目に」
非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第六話
いつでしたか姫たちと貝合わせで遊んでいたときに器量良しの花を引き当てたことがありました。ほかの参加者らの羨ましそうな顔に私は鼻高々でした。さて、後世の方々が勝手に悪妻とか賢夫人とか魔性の女などと決めつけるのは如何なものでしょう。槍玉に上がるのは女ばかりではなく、蔓延る悪しきルッキズムと批判されようと、サルやらタヌキと呼ばれていた人物をも天下の美男が演じ相手役も美人女優が選ばれるのはどうしたことで
もっとみる非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第五話 (海のピ・山のポ)
海のピースは太平洋
山のポラリス動かない
「今年はどこに遊びに行きたい?」
家族の夏休みをあれこれと夢想する。
「ねえママ、お祖父ちゃまはどうして温泉が好きなの? 私は海水浴のほうが楽しいと思う」 娘のいう『お祖父ちゃま』とは私の父でなく舅のことだ。海といえばどうしても故郷の大海原を思い浮かべてしまう。
「海、行きたいよね」
ため息のように漏らした言葉に懐かしい面影が重なる。
「ねえママ、もし
非凡な貝貨 創作大賞応募作品 第四話
「わしの勝ちじゃ」
兄氏真が得意げに蛤をひっくり返すと、果たしてそこには雅な和歌ではなくむさし、かい、おわり、みやこ、などと雑な文字が踊っています。兄は首尾よく「みかわ」を開いたのです。「参りました」
元信は悪びれず頭など掻いています。どう見ても手抜きか遠慮でわざと負けているのが見え見えでした。一方私たちおなごの貝殻は花の絵です。それぞれに意味があり「血筋」「器量」「才知」「男運」「寿命」などなど
非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第三話
出家した未亡人のはずなのにどうして赤子を? さぞご不審に思われたことでしょうね。あの子はもちろん夫との子でございます。こういえばおわかりいただけると思いますが、夫は自害も病死もしておりませんでした。ただ心身を病んで、墓で息を吹き返したとき自分を別人だと思い込んでいたのです。私が誰なのかさえわかっておりませんでしたし、おそらくその後にあの子の命が宿ったことも知らないままでした。噂では甲州征伐とやら
もっとみる非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第二話
あれは赤子を手に途方に暮れていたときのことでした。ちょうど従姉妹セナとその息子の訃報を耳にして怒りに打ち震えていたのです。おのれ信長。そして元康いえ家康でしたっけ?
さて、この子はどうしたものか。いっそ川に捨ててしまおうか? そこに一人の女が現れてもし差し支えなければその赤子こちらでお引き取りいたしましょういえ是非譲ってくださいませと迫ってくるではありませんか、そうなると逆に惜しくなりただでは
海のピ ②
海の日はうみのたビ、シーに行こう。飛びかうピノキオクジラにピーターパンの海賊船、豪華なクルーズ船、それが無理ならランドもありだ。海の出ピが痛いけど、健保に払うと思えばね、さあみんなで行こう、海のお城のホスピタル&ホスピス、納めておいて良かったね、ピーでも海のPremium(保険料)!
140文字
たらはかに様のお題に参加しています。
非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第一話
珍しい貝殻にかぎってすぐ見当たらなくなってしまうものですね。誰もが手元に残しておきたいと願うせいかしら。昔貝は貨幣として使われていたそうです。そんな遊びに興じるとはまるでお公家さんの姫君のようだわ本当にこの家の人たちときたら。母は貝合わせを楽しむ私たちに冷やかです。でもお方様はカイの出ではありませんか。誰かが軽口でも叩いたのでしたかしら。山猿の娘で妹などと陰で囁かれるのをきいたことがあります。
誘拐と妖怪 #毎週ショートショートnote
七夕伝説は必ずしもハッピーエンドと言い切れないが後味は決して悪くない。その理由の一つはジェンダー不平等感がないことだ。織姫は職業婦人であった。だが家庭に入り仕事を手離してしまい、そのせいで良くない結果を生んでしまう。女だって仕事を持ち、結婚後も続けるべきだと。そういう話なのだ。
それに引き換え、こんな民話をご存知ないだろうか。「瓜子姫」。(ウリコヒメはオリヒメに似ている)ヒロインは機織りをして