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短編小説、エッセイなど。一日一更新を目標にショートショート、54字、などを書きます。 …

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短編小説、エッセイなど。一日一更新を目標にショートショート、54字、などを書きます。 #毎週ショートショートnote #シロクマ文芸部 #54字の物語に参加中です。

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  • 「八人目の敵」

    フィクションです。

最近の記事

非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第七話

 こうみえてわたしく、かつてさる大名の姫でございました。当時屋敷にはそれは大勢の人質がおりました。家臣の姫などもまじえて貝合わせをして遊んだものです。平安時代の女房たちのように「偏つぎ」もいたしました。偏諱? さあ、それとは違うと思います。この字が読めますか。そう、いのこ。「遼東のいのこ」とは大して珍しくないものを、さも貴重な物であるかのように勘違いすることでしたね。かつて項羽と争った劉邦の妻の呂雉は恐ろしい女として知られています。彼女が寵妃の戚夫人にどんな仕打ちをしたのか。

    • リベンジトリートメント ①

       頭にきたのでリベンジすることにした。それから仕返しと復讐も。頭に汗をかいたのでリンスインシャンプーすることにした。それからコンディショナーとトリートメントも。 80文字 こちらに参加しています。

      • 非凡な貝貨 note創作大賞応募作品第六話

         ばてれんの集まりでしょうか、大勢の人がいます。しゅんぽしおん、という言葉が聞こえました。一人ずつ発言する機会を与えられています。順番が回って来たら何をどう言えばいいだろう、内気な私は迷います。 「次の方どうぞ。どんな目に遭ったのですか」 喉の奥から声がほとばしります。 「父を彼に殺されました」 おおっ。大きくうなずく者、首を傾げる者(たったそれだけ?) 「その前に、あの人のせいで夫も失う羽目に」微かなブーイング。拍手も聞こえます。しっかりしろ、負けるなよ!声援が飛んできます

        • 海の日を ②

          海の日を追いかけ続けおいつかれ 時季に灼熱アル中地獄  私は海。海こそが落日を最も輝かせると山や平野や市街地に向かいありもしない肩を聳やかすけれど、日に沈まれたあとで、余熱の残った頭を冷やしてあの人のほうが私を輝かせていたのだと気づく、波打ち際の泡立つ麦酒を傾けながら。 こちらに参加しています。

        非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第七話

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        • 「八人目の敵」
          11本

        記事

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第六話

           いつでしたか姫たちと貝合わせで遊んでいたときに器量良しの花を引き当てたことがありました。ほかの参加者らの羨ましそうな顔に私は鼻高々でした。さて、後世の方々が勝手に悪妻とか賢夫人とか魔性の女などと決めつけるのは如何なものでしょう。槍玉に上がるのは女ばかりではなく、蔓延る悪しきルッキズムと批判されようと、サルやらタヌキと呼ばれていた人物をも天下の美男が演じ相手役も美人女優が選ばれるのはどうしたことでしょう。物語がどんなに出鱈目でもイケメンアイドルや美少女さえ出ていれば一定数の視

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第六話

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第五話 (海のピ・山のポ)

          海のピースは太平洋 山のポラリス動かない 「今年はどこに遊びに行きたい?」 家族の夏休みをあれこれと夢想する。 「ねえママ、お祖父ちゃまはどうして温泉が好きなの? 私は海水浴のほうが楽しいと思う」  娘のいう『お祖父ちゃま』とは私の父でなく舅のことだ。海といえばどうしても故郷の大海原を思い浮かべてしまう。 「海、行きたいよね」 ため息のように漏らした言葉に懐かしい面影が重なる。 「ねえママ、もしもお祖父ちゃまが亡くなったら、」 「そんなことを考えては駄目よ!」 人はいつか必

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第五話 (海のピ・山のポ)

          海の日を ①

          海の日をおぼえていますか? えっ忘れたの? あれからほんの少ししかたっていないはずなのに、鰓呼吸なんてもうできないとは。 少ないほうの陸地の、わずかばかりの平地に住み着いて、人生の大半をそんなところでで過ごして終える生き方なんて。 海での日々なんて、もう記憶の外側にさえ残っていない。だって進化したんだもん。 でもさ、あたりを見てごらん。ホラ、海の民だよ。この地表をわが物にしようとしているよ。祖国を捨ててここにやって来たぼくらを追い払ってここに自分たちの王国を建国するつもりなん

          海の日を ①

          非凡な貝貨 創作大賞応募作品 第四話

          「わしの勝ちじゃ」 兄氏真が得意げに蛤をひっくり返すと、果たしてそこには雅な和歌ではなくむさし、かい、おわり、みやこ、などと雑な文字が踊っています。兄は首尾よく「みかわ」を開いたのです。「参りました」 元信は悪びれず頭など掻いています。どう見ても手抜きか遠慮でわざと負けているのが見え見えでした。一方私たちおなごの貝殻は花の絵です。それぞれに意味があり「血筋」「器量」「才知」「男運」「寿命」などなど。遊戯で勝っても実際で負けてはお話になりません。とはいえ、時おりセナの目のなかに

          非凡な貝貨 創作大賞応募作品 第四話

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第三話

           出家した未亡人のはずなのにどうして赤子を? さぞご不審に思われたことでしょうね。あの子はもちろん夫との子でございます。こういえばおわかりいただけると思いますが、夫は自害も病死もしておりませんでした。ただ心身を病んで、墓で息を吹き返したとき自分を別人だと思い込んでいたのです。私が誰なのかさえわかっておりませんでしたし、おそらくその後にあの子の命が宿ったことも知らないままでした。噂では甲州征伐とやらに訪れた明智軍に潜入したのだとか。そして武田家は滅んで、直後に本能寺の変がありま

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第三話

          山のポ ①

           その山の周りはぐるりと「セポンイレポン」「ポミリーマーポ」「ポーソン」「ポニストッポ」といった変わった名前の便利な店に取り囲まれていた。おかげで押し寄せる観光客による車道の真ん中での決めポーズ自撮りが後を絶たない。テレビ関係者も 「ここはあそこのチェーン店ですか、それとも似た名前の独立系ですか?」 とわざわざ取材に訪れてはおにぎりなどを買って帰るのだった。陰では全店結託して話題づくりの地域おこしをしているとまで噂されていた。 「その説はあながち間違いではなさそうだ。だが、こ

          山のポ ①

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第二話

           あれは赤子を手に途方に暮れていたときのことでした。ちょうど従姉妹セナとその息子の訃報を耳にして怒りに打ち震えていたのです。おのれ信長。そして元康いえ家康でしたっけ?  さて、この子はどうしたものか。いっそ川に捨ててしまおうか? そこに一人の女が現れてもし差し支えなければその赤子こちらでお引き取りいたしましょういえ是非譲ってくださいませと迫ってくるではありませんか、そうなると逆に惜しくなりただではお渡しできませんと答えたくなるのが親心。でも相手も強気で決して悪いようににはなり

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第二話

          海のピ ②

          海の日はうみのたビ、シーに行こう。飛びかうピノキオクジラにピーターパンの海賊船、豪華なクルーズ船、それが無理ならランドもありだ。海の出ピが痛いけど、健保に払うと思えばね、さあみんなで行こう、海のお城のホスピタル&ホスピス、納めておいて良かったね、ピーでも海のPremium(保険料)! 140文字 たらはかに様のお題に参加しています。

          海のピ ②

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第一話

           珍しい貝殻にかぎってすぐ見当たらなくなってしまうものですね。誰もが手元に残しておきたいと願うせいかしら。昔貝は貨幣として使われていたそうです。そんな遊びに興じるとはまるでお公家さんの姫君のようだわ本当にこの家の人たちときたら。母は貝合わせを楽しむ私たちに冷やかです。でもお方様はカイの出ではありませんか。誰かが軽口でも叩いたのでしたかしら。山猿の娘で妹などと陰で囁かれるのをきいたことがあります。 「奇貨居くべし」 従姉妹の関口セナがつぶやきました。 「ああ、春秋戦国時代の話で

          非凡な貝貨 note創作大賞応募作品 第一話

          海のピ ①

          「お電話ありがとうございます。こちらトラットリアアルマーレ海岸店でございます。順番にお伺いします。お届け先ご住所とお客様のお名前ご注文の品名をお願いします。あれれ切れちゃったよ。店長、うちに『海のピ』なんてメニューありましたっけ? ピではじまるのといえばピラフとピロシキとピザとピーチパイくらいですよね? 『海の』をつけて海産物入りで頼むとか。あ、でもピロシキなんてメニューはやってなかった。うん、ピラフかピザから山の具材除いてオリジナル作ればいい。あいにくエビ・カニは切らしてて

          海のピ ①

          夏は夜 ②

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          夏は夜 ②

          誘拐と妖怪 #毎週ショートショートnote

           七夕伝説は必ずしもハッピーエンドと言い切れないが後味は決して悪くない。その理由の一つはジェンダー不平等感がないことだ。織姫は職業婦人であった。だが家庭に入り仕事を手離してしまい、そのせいで良くない結果を生んでしまう。女だって仕事を持ち、結婚後も続けるべきだと。そういう話なのだ。  それに引き換え、こんな民話をご存知ないだろうか。「瓜子姫」。(ウリコヒメはオリヒメに似ている)ヒロインは機織りをしている。天邪鬼(天の川に似ている?)に騙され誘拐され酷い目に遭わされる。あまりにも

          誘拐と妖怪 #毎週ショートショートnote