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おあいそ、お願いしまーす。

いきつけの寿司屋にて。もちろん、回るほうの。

そこにはNさんという、あんまり愛想のよくない店員さんがいる。
歳のころは40歳前後の女性。動きはキビキビしているが、いつもぶすっとしている。「いらっしゃいませー・・・」と声もけだるい。
忙しいとか、ヒマとか関係ない。いつも同じ。

最初は「なんて不愛想なひと」と驚いたけど、何度か通ってるうちに悪気もなさそうだったので、今はあんまり気にしなくなったつもり。

接客業のツラさも分かる(ていうかわたしも接客業だし)。
ただ、回っている寿司の鮮やかさと、Nさんのローテンションのコントラストが激しすぎて、全力でお店の楽しさを味わえないときもある。それはとても切ない。

しかし、それがこの間、入り口の発券機の前で案内を待っていると、レーンの向こう側でお客さんとにこやかに話すNさんが見えた。

「うおー、とうとう心を入れ替えたかー」

と、一気に気持ちが華やいだ。「今日はよい寿司が食べられるぞ」と思いつつ、別のスタッフに席を案内されながらNさんに目をやると、どうやら知り合いが来店しているようだった。

なんだ、と肩を落としたが、思いがけないタイミングでNさんの笑顔を見ることとなった。普通に笑える人なんだな。と思った。そりゃそうか。

なんか、モヤモヤした。
なんだろう、と考えたらこれは「ジェラシー」に近い感覚だ。
「わたしのほうがお金を遣っているのに!」と、夜のお店の太客のような気分だ。いつのまにか、わたしはNさんのオラオラ営業にドップリだったんですね。いつの日か、その笑顔をわたしに向けてくれる時はくるのかしら・・・。

そんなくだりをスマホにメモっていると、奥さんから「何してるの?」と訊かれた。
「オレ、メモ魔だからさあ」
と答えた。
奥さんは「ふーん」と興味なさげだった。
レーンに滑り込んできた皿を受けとりながら「わたし、エビ魔」と言って5皿目のむしエビを食べはじめた。

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