シバエリ

現代美術家で文筆家、ついでにフェミニストの柴田英里です。 だいたい東京で息してます。 …

シバエリ

現代美術家で文筆家、ついでにフェミニストの柴田英里です。 だいたい東京で息してます。 人間について思うところを書くのか、書かないのかは未定です。

最近の記事

「性同一性障害特例法」改正を控えて ―透明化される生物学・構築された性と観念的な身体の問題

前回は『トランスジェンダーになりたい少女たち』の感想を書いていきました。 今回は、性同一性障害特例法をめぐる視点から、周司あきら・高井ゆと里『トランスジェンダー入門』、高井ゆと里編『トランスジェンダーと性別変更 これまでとこれから』の2冊を読んだ感想をまとめていきたいと思います。 また、これらの本の主張を読み解くことは、日本でなぜ『トランスジェンダーになりたい少女たち』の焚書騒動が起こったのかを理解する補助線になるとも考えています。 〈はじめに〉性同一性障害特例法の最高

    • 甘ったれの自己顕示と政治化する医療の間で ―『トランスジェンダーになりたい少女たち』感想

      遅ればせながら、アメリカのジャーナリスト、アビゲイル・シュライアーの『トランスジェンダーになりたい少女たちSNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』を読んだ感想をまとめたいと思い記事を書くことにしました。 この本は昨年12月に角川から『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』というタイトルで出版される予定でしたが、告知された際、「トランスジェンダー当事者に対する差別を扇動する」という抗議の声があがり出版見合わせになりました。 その後、今年4月に産

      • 弱者男性とフェミニズム(『弱者男性1500万人時代』を読んで)

        トイアンナ『弱者男性1500万人時代』を読みました。 「弱者男性」と呼ばれる人々の実態と彼らが抱えている問題について、独自の定量/定性調査と豊富な資料から網羅的にまとめられた本で、「弱者男性」という言葉を取り巻く状況に興味がある人の入門書としてとてもわかりやすい良書でした。 近年ネットを中心に可視化されつつある「弱者男性」にまつわる問題ですが、現状支援やケアはほぼなく、社会構造的に弱い立場におかれているにもかかわらず、「有害」扱いされたり、嘲笑の対象になっているのが特徴で

        • 【お知らせ】シンポジウム「表現者・ファンと炎上社会 ―女性と性表現2―」開催

          やっと情報が解禁できました。 2024年も「女性と性表現」シンポジウムを開催します!! 2021年、ジェンダーやフェミニズム、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)の観点から、多くの女性表象が批判・炎上・撤回されていました。 そうした中、性表現の領域で女性表現者・女性鑑賞者が実在し活躍してきたこと。その歴史や意義を提示し、インターネット上の活動として記録に残していくことを目的に、オンラインシンポジウム「女性と性表現」を開催しました。 シンポジウムは800名以上の方が参加

        「性同一性障害特例法」改正を控えて ―透明化される生物学・構築された性と観念的な身体の問題

        • 甘ったれの自己顕示と政治化する医療の間で ―『トランスジェンダーになりたい少女たち』感想

        • 弱者男性とフェミニズム(『弱者男性1500万人時代』を読んで)

        • 【お知らせ】シンポジウム「表現者・ファンと炎上社会 ―女性と性表現2―」開催

          「女性と性表現2024」開催決定! 期間限定アンコール上映会開催:2/20(火)〜3/17(日)

          2/20(火)〜3/17(日)まで、「女性と性表現2024」開催決定! 期間限定アンコール上映会を開催します! このたび、2021年に開催したシンポジウム「女性と性表現 ー表現者・ファンの視点から」の続編として、再度シンポジウムを開催することにいたしました。 その記念としまして、2021年に開催された「女性と性表現」の「現状編」「歴史編」をセットでご視聴いただけます。(ハッシュタグは「 #女性と性表現」 ) ▼「女性と性表現2024」開催決定! 期間限定アンコール上映会!

          「女性と性表現2024」開催決定! 期間限定アンコール上映会開催:2/20(火)〜3/17(日)

          コンビニに扇情的な表紙の雑誌があることは「差別」なのか?

          ポリタスの「コンビニの成人向け雑誌問題をあらためて考える(前後編)」を見ました。 ※前編は2024年1月27日、後編は2024年1月28日まで無料で見られるようです。 番組の構成をざっくり説明すると、登場するのはポリタス側の2人(水野優望・佐藤※仮名)とゲストである新日本婦人の会2人(池田亮子・西川香子)。 いずれもコンビニに扇情的な表紙の雑誌が陳列されることに反対の立場をとっており、陳列されていた雑誌表紙や新日本婦人の会の調査結果について語り合うというものでした。 お

          コンビニに扇情的な表紙の雑誌があることは「差別」なのか?

          社会正義とメディア効果論

          あけましておめでとうございます。 新年早々巨大地震や事故・事件が起こっていますが、 皆さまの今年一年が素敵なものになりますように。 前回の記事では、近年のフェミニズムやLGBT関連のイベントは、誰が、どのようなアジェンダ(議題)を、なぜセッティングしているのか、という点に目を向けました。 とりわけマス・メディア、マス・コミュニケーションの領域において、あるアジェンダが「誰によってどのような意図を持ち設定されたものなのか」を批判的に検証する視座及び研究は、「議題設定機能(ア

          社会正義とメディア効果論

          性の問題は包括できない 〜「包括的性教育」とか「SRHR」に対して思うこと〜

          少し前ですが、(公財)ジョイセフ、(一社)LGBT法連合会、#なんでないのプロジェクト、国際家族計画連盟(IPPF)らが共催する「〜みんなのSRHR座談会〜LGBTQのMy Body My Choiceを今こそ!」というイベントをオンラインで拝見しました。 SRHRとSDGsそもそも「SRHR」っていったいなんだよ!と思われる方が大半だと思いますので、簡単に説明します。 ジョイセフのHPによれば、SRHRとは、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関す

          性の問題は包括できない 〜「包括的性教育」とか「SRHR」に対して思うこと〜

          出版中止は知る権利の侵害 〜恫喝的なトランスジェンダーとアライの問題〜

          情報解禁後すぐに刊行中止となった角川『あの子もトランスジェンダーになった』本12月3日、KADOKAWAの翻訳チームアカウントがTwitter(X)にて、来年1月24日にアビゲイル・シュライアー著『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』を発売する予定であることを投稿しました(現在削除済)。 この投稿に関して、一部のトランスジェンダーアライなどから「ヘイトスピーチである」との抗議の声が多く上がりました。 これらの抗議の声を受けてか、KAD

          出版中止は知る権利の侵害 〜恫喝的なトランスジェンダーとアライの問題〜

          みんな口をつぐむ「トランスジェンダー」と「GID」、そしてフェミニズムの問題

          現在、多くのサイレントマジョリティは、トランスジェンダーの問題に対して、「よくわからないけど、とにかく触らぬ神に祟りなし」と感じていることでしょう。 「マジョリティがそう思うこと自体がマイノリティへの差別」と思うような人権意識が高い当事者やアライの方もいるかも知れません。 しかし、個人的には、想像力と他者への配慮が行き届いたアライさんよりも、「最新の流行をおさえているクールな自分」に酔っているアライさんの方が多いような気がしていますし、「マジョリティーの傲慢」としてシスへテ

          みんな口をつぐむ「トランスジェンダー」と「GID」、そしてフェミニズムの問題

          発情する「ホスト新法」。現代のフェミニズムにおける保守的なパターナリズムの問題

          このところ、悪質ホストをめぐる議論が活発になっている。 11月3日の警視庁の発表によれば、歌舞伎町・大久保公園周辺で摘発した売春の客待ちをする「立ちんぼ」の動機は、4割がホストクラブの支払い目的だったという。 11月20日には、岸田首相が国会で「ホストクラブ従業員による売春防止法違反、職業安定法違反等の違法行為の取り締まりのほか、風営法に基づくホストクラブへの立ち入り指導、消費者契約法等の関係法令の周知、相談対応の強化等の対策をしっかり行っていく」と述べた。 11月22

          発情する「ホスト新法」。現代のフェミニズムにおける保守的なパターナリズムの問題

          女性の表現は誰のもの? 「似非フェミAV」発売中止!?をめぐる問題【後編】

          月島さくら氏と稲森美優氏が主演のAV、『似非フェミニストの闇(媚薬)堕ち快楽性交!! 〜現役AV女優に起こった惨劇〜※』まわりが、発売前から騒がしい。 (※以下、「似非フェミAV」と記載) 前編では騒動の経緯と、 作品が発売前(全編公開される前)からクレームによってキャンセルされること AV新法をめぐる因縁 月島・稲森両氏を「男の傀儡」「自己決定による行動ではない」と扱うパターナリズム 「パロディAV」は「デジタル性暴力」なのか? 月島・稲森両氏の振る舞いを「

          女性の表現は誰のもの? 「似非フェミAV」発売中止!?をめぐる問題【後編】

          女性の表現は誰のもの? 「似非フェミAV」発売中止!?をめぐる問題【前編】

          月島さくら氏と稲森美優氏が主演のAV、『似非フェミニストの闇(媚薬)堕ち快楽性交!! 〜現役AV女優に起こった惨劇〜』のまわりが、発売前から騒がしい。 Twitterで一部のフェミニストたちが「似非フェミAV」に対し、カスタマーセンターへのクレームを呼びかけている影響がどの程度あるかは計り知れないものの、DMM(FANZA)やU-NEXT(H-NEXT)、Amazonなど、大手流通・配信サイトから(予約)販売・配信ページが消えている(2023年10月22日現在)。 また、

          女性の表現は誰のもの? 「似非フェミAV」発売中止!?をめぐる問題【前編】

          「射精責任」とは、女が「守られるべき妻・母・彼女」でいられる権利(後編)

          前編では、ガブリエル・ブレア『射精責任』の出版背景に関して思ったこと、実際に読んだ感想を中心に記述していました。 「男性のコンドーム装着と精管結紮術(パイプカット)による避妊」「男性は女性身体への責任を取って射精すること」「男性の責任ある射精による望まない妊娠と中絶の根絶」というブレアの提言は、本人が主張するようなプロチョイス(中絶権利擁護派)ではなく、限りなくプロライフ(中絶反対、胎児の生命尊重派)に近いものであること。 ブレアが「デザインと母性の交差点」をテーマに運営

          「射精責任」とは、女が「守られるべき妻・母・彼女」でいられる権利(後編)

          「射精責任」とは、女が「守られるべき妻・母・彼女」でいられる権利である(前編)

          ガブリエル・ブレア著『射精責任』を読んでみたガブリエル・ブレア著『射精責任』を読みました。 最初に、ものすごくざっくりした感想を書くと、読んでいて一番疑問に思った点は、なぜ、ここまで男性を憎みつつ、男性に全て責任を取らせようとするのかということでした。 恫喝的に「男が悪い」と強調されたような提言の数々が、これまで女性と胎児の権利のコンフリクトが争点であった中絶問題において不在であった男性を当事者として召喚し、責任を取らせるという意図と構造になっていることは理解できるものの、

          「射精責任」とは、女が「守られるべき妻・母・彼女」でいられる権利である(前編)

          【お知らせ】宮台真司さんとの対談イベント「クソフェミへの退場勧告」の第4回を実施します

          <対談イベント概要> 社会学者・宮台真司氏と、現代美術作家にして文筆家そしてフェミニストである柴田英里氏が、現代フェミニズムの全貌と問題点について徹底に対談する大好評のイベント第4回をオンラインでライブ配信します。(予約はこちらから) こちら、当初は昨年12月に予定されていたイベントですが、開催直前に宮台さんが襲撃され、やむなく中止となっておりました。今回、ようやく開催の準備が整い開催できることを、個人的には大変嬉しく思っております。 「クソフェミ」とはどのような現象な

          【お知らせ】宮台真司さんとの対談イベント「クソフェミへの退場勧告」の第4回を実施します