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初めてづくしのお初釜

予備知識ゼロから茶道(表千家)を始めて
もうすぐ2年経つけど
まだまだ初体験ばかり




今年も年始早々に
「お初釜」を初体験
(去年はコロナでできなかった)

寄付。お茶室に入る前に身支度を整えるお部屋
寄付のお床
お茶室のお床
流し点のしつらえ
お正月らしいお道具



しかし
お初釜がどんなものかも
よくわかっていないのに

ひょんなことから
懐石料理の一部も担わせて頂くことになり
年末年始も落ち着かず
なんだかずっとソワソワドキドキ・・・

無事に終わった今
ようやくほっと一息ついています。


そんな初めて作った懐石
忘れないうちに書いておこうと思います。




コトの始まりは11月に開催された
先生が懇意にされていた
陶芸家の方を偲ぶ追善茶事

これが
私が初めて参加したお茶事

お声がけ頂いた時はさすがに緊張して
ちょっと身構えた私に
先生が笑顔で
「お茶を美味しく飲めばいいのよ
 気楽に楽しまれてね」
と仰るので少しほっとした

が!!!

先生が渡してくださった
タイムスケジュールを見て驚いた

なんと、お茶事は4時間!
気楽にお茶を飲むのに、4時間ですと⁉︎
口には出してないけど(多分顔には出てた笑)
「長っっ!!!」と思った。

え、4時間も何してるのかって?

えーと・・・
お茶を1杯飲んで
お昼食べて
またお茶を2杯飲むのですよ。

それで4時間。

それぞれにお作法があって
もちろん大切な意味もあって
実際参加してみると
時間がかかることも納得なのだけど

全く予備知識がないと
4時間という長さは
衝撃的なタイムスケジュールだった






おっと、つい前置きが長くなったけど
ようやく本題に入りますね笑

さてさて
このお茶事の途中で供されるのが
「懐石(かいせき)」

これは、食事の後に頂く
お茶事のメインディッシュともいえる
「濃茶(こうちゃ)」を
美味しく頂くためのお食事

濃茶はどろりとして、ものすごく濃い
空腹で頂くと胃に負担がかかるから
その前に懐石を頂いて
濃茶を飲む準備をするのです

全てはこの一服の濃茶のため




追善茶事の懐石は
近くのお店から運んで頂いたお弁当

お弁当には
お吸い物がついていたのだけど
如何せん、インスタント
まあ、味は言わずもがな

せっかくの美味しいお弁当が
台無し・・・

いや、お弁当も普通だったな
あとは量が多すぎて
食べ切るのが大変だった
(諸先輩方は半分は残していた)

とはいえ
せっかく用意して下さったものだし
そんなことは口が裂けても言えず




そして今回
お初釜の準備をするにあたり

「追善茶事のお昼はどうだった?
 正直に教えて欲しいの」
と先生が仰るので、正直にお答えしたら

「そうよね!
 あれはイマイチだったわよね!
 みなさんに聞いても
 美味しかったって仰るから
 玲さんに聞いてよかったわ♡」
と、先生とひとしきり盛り上がった後

(美味しくないって言ったの 
 私だけだったみたい笑)

「今回は
 お弁当の量は少なくていいから
 美味しいものを
 なだ万さんにお願いしましょう。

 お椀はインスタントで探しましょうかね
 寒い季節だから
 やっぱり温かいものが欲しいものね」
と、先生。

ここでつい
「良ければ私が作りましょうか?」
と、口が勝手に動いた。

美味しくないと言ってしまった手前もあるし
またインスタントってのも味気ない
そして何よりも
私も暖かくて美味しいお椀が
食べたかったから

先生は
「まあ、それはなにより贅沢で嬉しいことだわ
 でも・・・1/7で新年早々だし準備も大変よ
 無理しないで欲しいわ
 インスタントでも仕方ないわよ」
と仰るが

女に二言はない
作ると言ったら作るのだ。




そして更に
「お正月だから八寸も出したいの
 これはお惣菜を買ってくるわね」
と仰るので

「それも作ります!」
と、また私の口が勝手に・・・笑

ちなみに『八寸』というのは
お酒のつまみとして出すもので
海のものと山のもの、二種を盛り合わせる。

更に更に
「みなさんお酒は呑まれないから
 代わりに甘酒を出そうかしら」
と仰るので

もう反射的に「作ります!」と笑

1年に1回のおめでたいお茶事
先生の気合いが入っていることも
感じていたから
役に立てるなら立ちたかったのだ




そこから先生と相談して
献立を決めた

(八寸)
海のもの→田作り
山のもの→チーズのチャツネ乗せ

(甘酒)

(椀物)
冬野菜の白味噌仕立て

チャツネは前に先生に差し上げたら
チーズに乗せる食べ方も含め
いたく気に入って下さって
今回の献立に採用された

和食っぽいものがいいのかと思いきや
こういうものでもいいのが意外だった

献立を決める時の先生は
とても嬉しそうで
「手作りのものが頂けるなんて
 なんとしあわせなことなのでしょう
 器はどれにしましょうね♡」
と、うきうきされていて

先生が選ばれた器、美しい♡



それを見ていて
私もとてもしあわせになると共に
せっかく作るのだから
とびきり美味しいものをお出ししようと
ものすごく気合いも入った。




作るお料理は
スーパーで揃う材料で作れるし
ささっと作れるものばかり

でも、せっかくなので
材料からこだわった

田作りは
美しく光る形の良い
カタクチイワシを探して
調味料もシンプルなだけに
厳選したものを
みりんは私のとっておき
福光屋さんの七年物



チーズも
私が今まで食べた中で
美味しかったものを調達

旬のみずみずしい林檎と
香り高いスパイスも用意

甘酒は
お気に入りの味噌蔵から
自然栽培の味の濃い麹を
取り寄せた

椀物は出汁が大事
かつお節は年末ギリギリに
築地の行きつけで削りたて調達



実(具材)は
鮮やかな金時人参と
我が家の畑の大根を使う
青菜は、出始めの菜の花






材料にこだわったのだから
もちろん丁寧にお料理する

イワシは
優しく空煎りしてから
崩れないようサッと味を絡めたら
艶やかでなんとも美味しそう

空炒りするとパリッと仕上がる
艶やか



チャツネも
じっくり時間をかけて
コトコト煮詰める

甘酒は
お米と麹だけで
ゆっくりじっくり発酵させて
甘さを引き出す

人参は
有次の抜き型で梅の形に抜き
大根も大きさを揃えて切る
それぞれ別々に
程よい硬さに茹でて

菜の花は
色鮮やかに歯応えを残して



出汁も優しく濾せば
黄金色に輝き出す




そして前夜
ひとしきり用意が終わったところで
はたと閃いてしまった

「お初釜は1月7日
 みなさん朝忙しくて
 お粥食べてる時間なさそうだから
 七草粥出したら喜ぶかな」

「おせちも作らないと仰っていたから
 うまく煮えた黒豆も添えようかしら」

閃いたからにはすぐ行動
先生にOKを頂いて
夜遅くに準備をする。

七草






そして迎えた当日

初めて立つ先生宅のお台所で
いつものようにスムーズに
仕上げと盛り付けができるか
微かに緊張もしていたけれど

手を動かし始めたら
いつも通りに動いてくれた



熱いものは熱いうちに
見ても楽しめるように
金粉を振りかけて
盛り付けも美しく華やかに






お膳を見たみなさんは
「まあ♡すごい♡」と感嘆の声を上げ
「美味しいわ」と
笑顔で、次々と口に運んでくださる。

この瞬間が
お料理の醍醐味。
作って良かったと思う瞬間。

時間をかけて作っても
食べるのは一瞬
そう思うと料理とは儚い

でもその一瞬を想像しながら
その一瞬を最高のものするべく
お料理する時間も
至極楽しいものだ。




年末年始の忙しい中で
準備をするのは
正直、時間的には大変だったけど

大切なお初釜という場で
お料理をさせて頂く機会を頂けたのは
本当にありがたいことで

こちらが恐縮してしまうほど
先生も喜んでお礼を伝えてくださり
作って良かったと心から思う。

お初釜の装い
干菓子
主菓子
表千家のお初釜には欠かせない
常磐饅頭
お初釜が終わったあと
先生が労を労って点てて下さった一服
体の隅々まで染み渡る美味しさでした。

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