紫桃

紫桃です。小説やエッセイなどを気ままに載せています 。

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  • エッセイ

  • 死について

    自分が直面した死や死生観について書こうと思う。

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    オリジナル小説

  • 高校数学教師の宗教

    高校の数学教師の宗教。この教師が自分の思考の根幹を作っていると言っても過言では無い。この教師に会っていなかったら私は絶対に今の私ではない。

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得体の知れないものを食べた話

町中華が好きだ。土方の人や工事現場の人、老婆や老父たちが吸い込まれていく、外見の小汚い寂れた町中華は絶対に美味しいことが確約されている。 近所にお気に入りの町中華がある。毎月1回はそこで昼ご飯を食べる。 その町中華は中国人の夫婦+バイトの女の子(or男の人)の3人で回していて、厨房に立っているのは主人の1人だけなのに料理が出てくる速度が爆速すぎる。めちゃくちゃ早く出てくる。 それと「知ってるはずの料理が知らない姿で出てくる」町中華でもある。 以前、「砂肝」を注文した。焼き鳥

    • 食べられるものが増えていく話

      「傍にいる人や一緒にいる人によって食べ物の好みや食べられる物が増えていくよね」「それってめちゃくちゃ面白いし幸せだよね」と、1月の某ライブのあと、渋谷で友達とハイボールを飲みながら話した。 本当にそう思う。 私は昔、珈琲が飲めなかったけど、大学のときに珈琲の美味しさを知って飲めるようになった。 私は元々、お酒がそんなに好きでは無かったし、飲み会でも永遠にソフトドリンクばかり、とりわけカルピスソーダばかりを飲んでいた。でも某アーティストのファンたちとライブ以外でも普通に会って

      • 大関ワンカップのおでんの出汁割り

        おでんの出汁割りが美味しいらしいと聞いた。そして、セブンイレブンのおでんが美味しいと聞いた。なので、掛け合わせたら美味しいのでは?と思ってやってみた。おでんの出汁割りをする日本酒のおすすめを聞いたら「大関ワンカップ」と2人から言われたので買ってみた。 結果、おでんの具はとても美味しかった。大関ワンカップも甘くて美味しかった。日本酒が飲めるようになって、日本酒を美味しいと思えるようになったからこそ出来たことで、非常に嬉しい。 ただ、「おでんの具」は美味しかったが、出汁が壊滅的に

        • 人生で一番綺麗な景色は、死ぬ間際に見るのかもしれない

          今まで見た中で一番綺麗な景色は何ですか? 夕日、空、花火、夏のプールの反射した水面。 人それぞれ色々あると思う。 私は死の淵でめちゃくちゃ綺麗な景色を見たことがある。 本気で死にかけたことが一度だけある。3歳上の兄が私の異変に気づくのがあと数秒遅かったら確実に死んでいた。 小学生のとき、親戚たちと海外旅行に行った先でウォータースライダー付きのプールがあった。海に近い大きなホテルに併設されていて遊具がついているプールでめちゃくちゃ楽しくて、一日中そこで遊んでいた。 私は全

        得体の知れないものを食べた話

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          ちはる 小説コンテスト 応募したもの まとめ

          キタニタツヤの「ちはる」の小説コンテストに応募したものをまとめました。 ⬆ 曲の流れと合わせて書いたもの。これはこれで好き。 ⬆おばあちゃんと孫の話。自分のお気に入り作品。 ⬆どうしても日記形式で書きたくて、頑張って書いた記憶がある。書いててめっちゃ楽しかった。日付が二十四節気になっています(こだわりポイント)。 ⬆人生の出来事を知らされる媒体(その人から直接LINEが来るのか、Twitterやインスタで知るのか)によって、その人との心の距離感が分かるよな、と思って書

          ちはる 小説コンテスト 応募したもの まとめ

          忘れられない、10月22日14時06分

          (2021年10月22日 記) 私の家には、5年前に亡くなった祖母から電話がかかってくる。 祖母の家から電話がかかってくると、私の家の電話機のディスプレイには、「バーバんち」と表示される。母がその電話に出ると、祖母と同じ家に暮らしている祖父や母の兄嫁たちの声がする。 80歳で他界した祖母は、癌の悪性リンパ腫の宣告を受けてから約12年生きた。私が20歳のとき、振袖の前撮りの帰りに着付けとヘアメイクをしたまま電車に乗って、がんセンターに晴れ姿を見せに行った数週間後。10月22

          忘れられない、10月22日14時06分

          地元の有名人

          どの駅にも有名人はいると思う。 前に渋谷に行った時、帽子をめちゃくちゃたくさん被って上に積み上げている人がいて、あぁ世界って広いんだな……と思った。友達によるとよく見かける人らしい。渋谷って世界が凝縮されていて面白い。 私の地元駅にも有名人がいる。 仮面ライダー、マリーアントワネット×2人、赤の女王、写真立てをズボンのウエスト部分に挟んで毎朝散歩しているお婆さん、いつ行ってもめちゃくちゃゆっくり散歩しているお爺さん。 (もしこれで「自分の地元かも」と、ピンと来た人がいたらT

          地元の有名人

          「ごめんね→いいよ」の方程式を破壊してみた結果

          夏休みが終わった、というニュースがやっていた。夏休み明けの小学校の教室で、教師が生徒たちに「みんな、夏休み楽しかったかな?」と問いかけていた。生徒たちは元気に「楽しかったー!!」と答えていた。 みんな元気だなぁと思うのと同時に、これは問いかけを装ってはいるけど「楽しかった」の返答しか想定されていないなとも思った。 「夏休み楽しかったかな?」に対して教師が想定しているのは「楽しかった!」のみであり、夏休みが楽しくなかった人がいることは想定していないのだなと思った。 母も同じニュ

          「ごめんね→いいよ」の方程式を破壊してみた結果

          魔法使いの弁当屋

          電子レンジって知ってますか? そうそう。物を入れてタイマーをセットしたら「チンッ!」って鳴って、あったか〜くなる、あれです。文明の利器です。 冷めたご飯も温められるし、冬場は電子レンジで温めるタイプの湯たんぽも温められるし、目や肩を温めるあずきのやつも温められる。電子レンジって本当に便利。 地元の商店街に昔からやってる弁当屋がある。そこは弁当もサンドイッチも全部がめちゃくちゃ美味しくて大好きなのだが、ただ、全てにおいて無音の弁当屋なのだ。 いらっしゃいませ、とかもない。店長

          魔法使いの弁当屋

          「いい感じ♡」の「♡」に込められた殺意

          いい感じ♡なことが世の中には多すぎる。 いい感じ♡とは、私の高校時代の数学教師(人生においての大恩師)の名言なのだが、何か嫌なことや辛いことがあったときや、「はぁ?」って思った瞬間に「いい感じ♡」と心の中で唱えるとちょっと楽になるよ、という訓である。「いい感じ」ではなく「いい感じ♡」である。「♡」が大切なのだそうだ。 「いい感じ♡」と唱えながら「殺す」と思うと効果的らしい。「○ね」ではなく「殺す」なのが自発的で、とても恩師らしい。 (この恩師はめちゃくちゃ変わり者でエピソー

          「いい感じ♡」の「♡」に込められた殺意

          自分の日常=他人の非日常

          私は自分のことを「めちゃくちゃつまらない人間」だと思っている。 出来るだけ波風のないように、日々に刺激はいらないから何事もなく(特段嬉しいことも特段悲しいこともなく)、感情の起伏を作らずに日々をやり過ごしていく。それが私の人生の第一目標であったりする。 誰かに好かれることも嫌われることもなく、そこにただいるだけの存在としてありたい。いてもいなくてもいい。壁になりたい。それが理想値である。 こんなマインドで生きているから自分の意見を通すことが今までほとんどなかった。誰かとどこ

          自分の日常=他人の非日常

          「二度と会わない他人」の気楽さ

          人と酒を飲むのが好きだ。酒を飲んだ状態の人間からしか聞けない話(ぶっちゃけ話もそうだけど、めちゃくちゃ真剣な話とかも)を聞くのが好きだ。 友達と飲むのも好きだけど、1人でふらっとBARに行って飲むのも大好きだ。 知らない人と仲良くなってその場でめっちゃ喋って、はい解散、というサッパリした関係値がとても心地いい。日常においては絶対関わりたくない変な人もいるけれど、その変な人ですら、酒の場であれば「面白い人だな」という認識に変わる。多分その場限りの飲み相手だからそういう認識に変わ

          「二度と会わない他人」の気楽さ

          視覚情報特化型人間

          人の名前をすぐ覚えられる人って、本当に特別な能力を持っているんだと思う。 私は初めて会った人に「はじめまして、○○です〜」と言われた名前を一秒で忘れる。今さっき名前聞いたのに「この人、何さんだっけ?」ということがよくある。 「今聞いたばかりなのにもう忘れたのか、馬鹿か?」と思われそうで聞き返せなくて、名前が分からないまま話していることがよくある。(さすがに何回も会ったり遊んだりしている人の名前と顔は覚えているけども) 老化か?と思って、自分の過去を振り返ってみたけど、老化

          視覚情報特化型人間

          「自分が嫌いな人には嫌われてもいい」と切り捨てる強さ

          「誰かに嫌われないようにしよう」と思って生きていた。たとえ自分がその人のことを嫌っていても、自分はその人から嫌われないようにしようと思っていた。「思っていた」という過去形は正しくないかもしれない。「思っている」という現在形が正しいかもしれない。 嫌いな人や苦手な人と、どうすれば仲良くなれるか、仲良くなれなかったとしても「無関心」になってもらうレベルの落ち着き具合までいけるといいなと思っていた。それが一番穏便に済ませられる方法だと思っていた。 大学生のときにバレンタインのチョ

          「自分が嫌いな人には嫌われてもいい」と切り捨てる強さ

          味が好きなのか、温度が好きなのか

          「美味しい」と思ったものが「その味が好き」に直結するとは限らないなと思う。 というのも、私は一年くらい前まで紅茶が大好きだった。暇さえあれば紅茶を飲んでいた。ティーポットやティーカップやソーサーを集めて、どこかに旅行に行く度に紅茶の茶葉を買っていたりした。 だが、ある日、悲劇が起こった。 紅茶を飲んだら猛烈に歯がしみた。水を飲むと激烈にしみた。とんでもなくしみた。 小学生のときからずっと通っていて歯列矯正もやってもらった、自分と同じ苗字で徒歩5分の距離にある便利な歯医者に駆

          味が好きなのか、温度が好きなのか

          サンタクロースのはじまり

          冷たい夜だった。一段と寒い夜になると、朝のラジオが言っていたのを思い出す。 今日もお花は一本も売れない。一本も売れないまま家に帰っても、お父さんとお母さんはいつも私を笑顔で迎えてくれる。 「寒かったでしょう?お疲れ様、いま温かいスープを入れてあげるからね」 そう言って、私の身体も心も、温かくしてくれる。でも私は、それに後ろめたさを感じずにはいられない。お花を一本も売れなかったのに。お金を一円も稼げなかったのに。 いつも花を売りに夜の町へ出て行って、一本も売らずに帰ってくる私

          サンタクロースのはじまり