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『シャッターチャンスが2度ほしい!』メインページです。 欲しいと思えるカメラが発売され…

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『シャッターチャンスが2度ほしい!』メインページです。 欲しいと思えるカメラが発売されるまでは文章が、その中でも小説と思しきものが主体になると思われます。 全てが無料の試験期間を設けた後、然るべきタイミングで有料化しようと目論んでいますが、切り替え時期は全くの未定です。

最近の記事

草取り。(その6)

ふっ……と我にかえると、私は知らない世界に居るようだった。 ここには、光も音もないようで、何も見えず、何も聞こえてこない。そればかりか、上下や左右や前後という概念すらないようで、かろうじて、頭の側が上、足の側が下、右手側が右で、左手側が左、そして、お腹の側が前で、背中の側が後ろ、という意識くらいは持てるものの、地面はないし、空だってなく、また、重力に相当するものもないようで、私はどうやら漂っているようなのだが、実際はそうではないかもしれず、本当はピタッと静止しているようでも

    • 草取り。(その5)

      「時は来た……!」 きっぱりとそう言った母を見て、私は、この人はいつだって、ふざけているのか本気なのかわからない、大体この大袈裟な格好だって……と考える内、なんだかたまらなく可笑しくなってしまい、笑いをかみ殺すのに一苦労していると、母は、その微妙な"間"に耐えられなくなったのか、 「それだけだ………!」 と言い放って、その場からそそくさと逃げ出し、草を掻き分け掻き分け、早々に敵陣深くへと潜り込んでいった。そして、おもむろにしゃがみ込んだかと思えば、一騎当千、一面に広がる

      • 草取り。(その4)

        作業の前には必ず儀式が行われる。虫除けスプレーを身体中に吹きかけるのである。しかし、であれば、この重装備は一体なんなのだろう。こんなにもシューシューシューシュー虫除けスプレーを吹きかけるのであれば、こんな重装備は必要ないのではないか? そう考えた私は、率直に母に尋ねたのであった。が、この時の私は、それが回り回ってあんな事態にまで発展するとは、夢にも思っていなかったのである。 「母上、ひとつ聞きたいことがあるんだけど。」 「なぁに?」 「私たち、今大量に虫除けスプレーを吹

        • 草取り。(その3)

          少し前、今回と同じこの格好で、同じく草取りをしている時に、宅配便のお兄さんと鉢合わせてしまったことがあったのだが、この格好で作業をしている2人は、その内に自分たちがどんな格好をしているのかを忘れてしまうものだから、 「お届け物です!」 と言って、こちらに向かってくるお兄さんに対して、そのまま立ち上がって、軽く手を振る感覚で右手の鎌をぶんぶん振りながら、 「はーい! お世話になりまーす!」 という、後から考えてみれば恐ろしさと恥ずかしさで立ったり座ったりしてしまうような

        草取り。(その6)

          草取り。(その2)

          ふと時計に目をやると、時刻は午後2時半といったところで、気温のピークを、少しだけではあるが過ぎており、ちょうど頃合いだったので、 「母上、今日は雨降ってないし、私も手伝うから、やっちゃわない?」 私がそう切り出すと、 「でもさアンタ、最近ちょっと体調悪そうよね。大丈夫なの?」 なんて心配されてしまったものだから、私は内心、ぐらぐらと、酷く動揺してしまった。実際のところ、自分でも先行きなんて全く分からないのである。翌日の状態ですら、確信をもって述べることなんてとてもでき

          草取り。(その2)

          草取り。(その1)

          梅雨のさなかではあったが、この年はいつになく暑かった。暑かったのだが、天気はといえばやけに梅雨らしく、雨が続き、そうでなければ曇りで、晴れないのである。こうも雨や曇りが続けば、空気はもう、たっぷりと湿気を含んでしまって、重さを増し、隙間のない雲から透けてくる心許ない光ですら、体感温度をあっという間に上げてみせた。これはそんな、雨こそ降ってはいないものの、『いやあ、これはもう、降ってたほうが快適なんじゃないだろうか?』、とすら思える、とても蒸し暑い日のことである。 「はぁぁぁ

          草取り。(その1)

          はじめに。

          そもそも、論文や小説にほとんど必ず付いてくる『はじめに』や『まえがき』というのは、ほとんどの場合著者の言い訳であり、元来必要のないものであったろうし、必要があったところで、それは全てを書き終えた後で執筆するものであって、本来は、ブログの書き始めの、最初の挨拶としては相応しくない。 しかしながら、他に器用な方法も思い付かず、何食わぬ顔で『はじめに』以外を最初の記事として書き始めるのも気持ちが悪く、仕方がない、書くしかなかったのだ。 この場所の主題は『シャッターチャンスが2度

          はじめに。