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〇〇さんの通訳は聞きやすいね、って言われたい。

同時通訳を聞いた話

最近、Zoomで英語⇔日本語の同時通訳を聞く機会がありました。

同時通訳を聴く立場になるのは久しぶりで、それも韓国語ではなく英語からの通訳だったので、とても新鮮な経験でした。

通訳や翻訳を生業にしている方々であれば、常に『良い通訳とは何か』『良い翻訳とは何か』という問いを胸に抱いて仕事をされているものと思います。これはいろんな観点から議論できるクエスチョンであり、そのシチュエーションに応じて求められる通訳の形は変わってくるので、答えはけして一つではありません。

今回は数人の講演者がそれぞれ準備したスピーチ(英語)を同時通訳を通して聞くという状況。何人かの通訳者さん(全員日本語ネイティブ)が交代で入っていました。
せっかくの機会なので「聞きやすい通訳ってなんだろう」という問いのヒントを得たいなと思いながら聞いてみました。
自分が思ったポイントを整理してみたいと思います。

聞きやすい通訳とは

個人的に「聞きやすいな」とか「上手だな」と思うポイントはこの3つです。
1.発声・滑舌がプロっぽい
2.語彙が豊富
3.フィラーが少ない

1.発声・滑舌がプロっぽい

いわゆるアナウンサーみたいな話し方というんでしょうか、あのプロっぽい感じをなんていうんですかね。
必ずしもアナウンサーじゃなくても、
・デパートの美容部員
・飛行機のCA
・ラジオDJ
などなど、そういう職業の方のお仕事中の話し方って「プロ感」あるじゃないですか。聞いていて心地いい感じ。通訳者も、やっぱりそういうプロっぽいアティチュードと話し方ができると「この方は上手だわ!」って思われるポイントになるんじゃないかと思います。
プロっぽさに含まれる要素だとは思いますが、「滑舌」って同時通訳においては特別に意識することが結構大事。同時通訳は話し手の声を聞きながら自分も口を動かしている状況なので、どうしても聞く方に意識が集中して、自分の発話に意識が向かなくなることがあります。そのため、自分の母国語である日本語で通訳しているにも関わらず、発音が曖昧になったり、噛んでしまったりすることはよくあること。
外国語の発音だけじゃなくて、日本語の滑舌も普段から練習しておくことは重要だなぁと改めて思いました。

2.語彙が豊富

実際に聞いていてすごく気になってしまったのが、何度も同じ述語が繰り返し出てきたところ。
〇〇〇が重要です。そして、△△△が重要です。また、◻︎◻︎◻︎が重要です」という感じで、かなり短い間隔で「が重要です」が3回出てきたところで、違和感を感じました。
日本語の作文って、重複を嫌う傾向がありますよね。これは韓国語に比べても、日本語に強く現れる特性だと思います。(韓国語もあからさまな重複は避けますが、日本語の方がよりセンシティブな気がします)
基本的には同じ助詞は繰り返さないように工夫したり、単語も他の言い方があるならできるだけいろんな言い換えをしてみたり、その単語を繰り返さなくて良いように文章の構成を組み替えたりすると、より読みやすいかつ聞きやすい文章になる、というのが、日本語の難しいところでもあり面白いところでもあります。
先ほどの「が重要です」の繰り返しも、例えば「〇〇〇が重要です。△△△も重要です。◻︎◻︎◻︎もまた、重要なのです。」みたいに、助詞でリズムをつけるやり方がまず、考えられると思います。
また、「〇〇〇が重要です。△△△も大切です。◻︎◻︎◻︎も、重視すべきです。」みたいな形で、単語自体を変えて表現するような工夫の仕方もありますよね。
外国語の単語や表現を勉強するだけでなく、母国語の引き出しもたくさん持っておいて、それを瞬時に出し分けることができるように日々精進したいものです。

3.フィラーが少ない

フィラーというのは、「えーっと」「あー」「んー」などの、言葉に詰まった時や考えながら話しているときに出てくるアレのこと。自然に会話している状況であれば、誰しもフィラーが混じった発話になるものですが、上手なスピーチにはフィラーがないものですよね。通訳も同様で、やっぱり聞いていてもフィラーが少ないと聞きやすいなぁと思いました。
フィラーが多いと一文がすっと耳に入りにくいというのもありますし、自信なさげに聞こえてしまうという作用もあります。通訳さんが話の内容を「えーと」「んー」と言いながら一生懸命理解しようとしている、というのがリスナーに伝わってしまうと、聞く方からしたら「大丈夫かな?ちゃんと正確に通訳してくれてるのかな?」と不安になりますよね。
これはある意味、プロっぽい話し方に含まれる要素かもしれませんね。

マイクの感度に注意

通訳自体とは別の話なのですが、Zoom通訳のリスナーとなって実感した点がひとつ。
マイクの感度が良すぎると、紙にメモするペンの音やマウスをクリックする音、ため息をつく音、唾を飲み込む音が聞こえてしまっていることがある、ということです。ペンやマウスの音はまだ良いですが、モッパンASMRみたいな音が聞こえてしまうのはそんなに気持ち良いものではないですよね。

普通のヘッドセットで、ZOOMのマイク音量とノイズ抑制を自動調整に設定していればそういうことはないものと思いますが、マイク入力が最大になっていたり、ノイズ抑制が低く設定されていたりすることがあるかもしれないので、通訳に入る直前には毎度オーディオ設定の確認をしておくのが大事だなぁと思いました。

伝われば良し、のその先へ

おそらく通訳者さんならみんなやっておられるのではと思いますが、
私は普段から音声認識のアプリを使って自分の通訳を録音+文字起こしして、セルフチェックをしています。いつも反省点だらけで本当に毎回落ち込むんですが(笑)、フィラーなどの自分の悪い癖を見える化して、なんとか実践中にも意識して直そうと努力しています。(なかなか上手くはいきませんが…) 

ただ私の場合は韓->日よりも日->韓の通訳をする方が圧倒的に多いので、日本語をちょっとおざなりにしがちな所があります。実際、録音して聞いてみるとむしろ韓国語で通訳しているときの方が聞きやすいトーンの声が出ていたり、フィラーが少なかったりするんです。日本語は母国語だからこそ、発話に意識を向けずに聞く方にばかり集中してしまうからだと思います。

今回は久しぶりに日本語の通訳を「聞く」立場になってみて、日本語出しのときのセルフモニタリングの大事さを感じると共に、母国語のブラッシュアップにもっと時間と労力を費やそうと思わされました。
とても良い刺激になりました。😀


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