『ホットチョコレート』 -Behind

あっつい!!!

東京は梅雨明けした途端に夏が本気出してきました。
皆さま、体調など崩されていませんか?

今日は、ちょっと時間があるので

自分のために書いた物語の細かいところを解説する
つまり、Behind

をやります。

実は、わたしの将来やりたいことの一つに、文章教室があって。
文章教室っていうと硬っ苦しいんだけど、その人がその人自身のために小さな詩やお話を作るのをお手伝いするような、一緒にその場で作っていくような、そんなことをしたいんです。

多分初めて言ったかなぁ、これ。
ご時世がもっと良くなって気楽に人と集まれるようになったらやりたいです。

物語や詩を作るのに、”コツ”っていうものは実はなくって、自分の思い浮かんだままにそれをまずメモしたり断片を記録していくことから始めるんですけれど、それを読める文章として成立させるのはちょっとコツがいると思っていて。
そのコツさえ掴めば誰にでも書けるんです。

今日はそのコツまではいかないんですけど、どうやって書いていったかを解説しようと思います。

お題にするのは、先日書いたばかりのこちら。

わかりやすいように、コピペして横書きでやりますね。

1、書きたい物語の世界観を決める

今回はBTSの『Film out』という曲からのインスピレーションでしたので、もとの歌詞が恋愛なので、恋愛、しかも別れた2人というのを世界観として設定しました。


2、タイトルは決めても決めなくてもいい

『ホットチョコレート』 

タイトルはわたしの場合はいつも後決めです。
最初に決めてそれについて書くというのもありですし、もし絶対これにしたい!というタイトルがあればそれは使ったほうがいいです。

3、本文を書いていく

愛しているという言葉はあまり使いたくないのだと、彼は言った。そういうことをあっさりと言っては私のことを少しずつ傷つける、彼にはそんなところがあった。

彼に初めて出会ったのは、私が働いているコーヒーショップだった。その日は初雪が降った寒い日で、ギターケースを背負って店に入ってきた彼は、カウンターでじっとメニューを見つめると長い時間悩んだ後で、ホットチョコレートを注文した。
「コーヒーの方がお勧めですよ」
思わず私が言うと、彼はやっと私の方を見て
「あ、そっか、コーヒーショップですもんね。でも、寒いので甘いのが飲みたいです」
そう笑顔で言った。
そのどこか小動物のような笑顔は一瞬で私の心を溶かした。

どうして2人は別れたんだろう?
そんなことを考えていると「すれ違い」という言葉が浮かんできました。
すれ違い?どんなことですれ違ったのか?
それを冒頭でまず書いていきます。
ここで深く考えずに女性の一人称で書きます。
誰を主役にするとかはあまり深く考えずに、思いついたままに書くことをお勧めします。

その後、グッと描写を過去に戻して、初めて会った時の話を書きます。
恋愛に出会いは大切ですもの!(指ハート)

*おまけ:ARMYなら分かる要素として、ボンボヤ4で頼んでいたホットチョコレートなどを入れていきます。

僕が、愛しているという言葉より、好きとか好ましいという表現を使うのは、多分どこかで自分が愛されないかもしれないという不安があったからだ。
彼女が今、僕を愛してくれていると分かっていても、いつかは愛されなくなるという不安から、その言葉がずっと言えなかったんだと思う。

彼女に初めて出会ったのは、雨降る初夏の図書館だった。僕は歌詞のインスピレーションになりそうな本を探して、ロシア文学とフランス文学の棚の間を歩いていた。少しの湿度と本の香り。
ゆっくりと読書しようとやってきている人々。ページの捲れる音や軽い咳払い。僕は雨の日の図書館が好きだ。
彼女は窓辺の椅子に腰掛けて、少し気難しそうな顔で本を読んでいた。
そして彼女の前を通ったお年寄りが本を落としてしまった時、さっと立ち上がって拾うと「どうぞ」と笑顔で言って渡し、また椅子に戻ると元の気難しそうな顔で本の続きを読みはじめた。
その瞬間、僕は彼女に恋をした。

ここから男性目線の一人称で書き始めます。
というのも、インスピレーションの元が『Film out』なので、やはり男性目線の描写も欲しいなと思ってですね。

彼女が不安に感じていたことに対するアンサーを書いていきます。
もうこの時点で2人には「すれ違い」があることがわかります。
さらに、初めて出会った季節と場所が冒頭の彼女の記憶とは違うことで、読者に(あれ?どっちが先なのかな?)というほんの少しの疑問をもってもらいます。持たなくてもいいんだけどw

*おまけ:「愛しているという言葉より、好きとか好ましいという表現を使う」と言っていたのはJINくんです。ヤー、そんなこと言うのやめてほしい(好き)

「ホットチョコレート君」
私は彼のことを心の中でそう呼んでいた。
ホットチョコレート君は、その後も何回かカフェに来て、メニューの前でいつも長い時間悩んでは、結局ホットチョコレートを頼んだ。
いつも悩むのに必ず同じものを注文しては、丁寧に両手でテイクアウト用のカップを受け取って、笑顔でペコっとお辞儀をすると颯爽と店を出て行ってしまう。
そんなどこか不思議な行動をする彼に、気づけば私は夢中になっていた。
自分がシフトに入っている時に彼が店に来ると嬉しかったし、来ない日は同僚にそれとなく別の曜日に来たかどうか聞いたりした。

ここでまた、彼女の目線に戻します。
これで、物語のベースができます。交互に書いていくことに決めます。
ポイントとしては、ここで書き方を決める感じです。
最初っからどういう構成で書こうと決めると、その決め事に囚われて自由度が失われることが多いです。

そして、彼女がだんだん彼に惹かれていったことも書くんですが、ここでは読者の人にも一緒にこの彼を好きになってもらいたい!という著者の勝手な思いがあるので、彼の描写を多めにします。

*おまけ:当て書きではないけれどバンタン風味を入れているので、彼の描写もちょっとグクっぽい感じとテテっぽい感じの動作を入れています。

枯葉を踏む音が好きだ。
図書館へ続く銀杏並木をサクサクと音を立てて歩く。
雨降る初夏の図書館で会った彼女には、それから一度も会えなかった。
きっと今日も会えないだろう、そう思いながら図書館の中へ入ると、司書の女性と談笑している彼女が真っ先に目に入った。
楽しそうに本の話をしながら笑う彼女も、気難しい顔で本を読む彼女も、どちらもとても魅力的だった。
司書の女性が「またタルカフェでね」そう言って彼女に手を振った。彼女も「またね」と手を振ってそのまま図書館を出ていった。
カフェの名前を検索すると、僕が通っている音楽スタジオのすぐそばにあることが分かった。でも、もしもそこで彼女に会えたとして、なんて声をかける?「こんにちは!図書館でお見かけして話してみたいと思ったんです?」僕は頭を振るとカフェに行くという考えを捨てた。

そして彼女のことを忘れかけた寒い冬の日、確か初雪が降った日、温かいものが飲みたくて入ったカフェの注文カウンターに彼女が居た。
他に客はおらず、僕は店を出ることもできず、おずおずと彼女の前に進むとメニューをじっと見つめた。
メニューにはいろんなコーヒーの飲み方が書かれていたが、何一つ頭に入ってこなかった。
やっとの思いで口から出たメニューは「ホットチョコレート」だった。

季節の説明をするときなどは、実際に「夏です」「秋です」というのもいいですが、「枯葉」などの描写で伝えるのもお勧めです。

彼の心中を描写することで、彼が意外と引っ込み思案な性格であることなどを伝えていきます。(テーマはすれ違いなので、その要素を入れていく)

さらにここで冒頭の彼女のシーンと繋がります。
なぜ彼がコーヒーショップで「ホットチョコレート」を注文したのか?その理由が分かります。

そして、彼女は彼に初めて会ったと思っていたこの日が実は、彼にとっては初めてではなかったことが分かります。
(ここで読んでいる方にも時系列が整理される)

で、この辺りでタイトルを『ホットチョコレート』にしようと決めました。

*おまけ:「タルカフェ」の”タル”は「月」という韓国語で、JINくんのソロ曲「Moon」 からとっています。
また、初雪の日にデートするとずっと長く付き合えるというジンクスが韓国にはありますので、それを入れています。

物事に何か進展が起きるのは、圧倒的に第三者の介入だと私は思っている。私がホットチョコレート君のことを同僚に聞いたがために、私が彼に気があると思った同僚が、彼が来た時に突然、私と少しお茶を飲んでくれないか? と話しかけたのだ。
私も彼も「なんで?」という顔で同僚を見た。
すると同僚はしれっとした表情で、彼のギターケースに付いていた可愛いキャラクターのキーホルダーを指さすと、「彼女、そのキャラのファンなんだ」と言った。
彼は罠にかかったうさぎみたいな顔になっていたが「ぜひ」と言ってくれた。
そうして私と彼は、私の働くカフェで向かい合わせに座り、会話することになった。
真正面からちゃんと見る彼は、驚くくらいとても整った顔をしていた。いつもちょっとだけ行動がおかしいから、それに気づいていなかった。
私たちは、似たような音楽や文学が好きなこと、雨の日の図書館や川沿いのサイクリングが好きなことなど、同僚が(さすがに戻って)と目配せしてくるまで一時間以上も話していた。
そして、当たり前のように連絡先を交換し、彼のライブを見に行く約束をした。

物語には起承転結があったほうが分かりやすいので、ここで転をしていきます。
2人が付き合うようになったきっかけになる出来事を書いていきます。

*おまけ:ギターケースのキーホルダーのイメージはRJ。驚くくらいとても整った顔という描写は、この時はグクをイメージして書きました。でも、ギターはユンギも想像できるし、好きなものの内容はナムさんのサイクリング好きからだし。もはやバンタン詰め合わせですw

ずっとホットチョコレートばかり頼む僕を、彼女は不思議に思っていたかもしれない。
でも、他のメニューを試してみたくても、なぜか気づくとホットチョコを頼んでしまう自分がいた。
それほどまでに僕は彼女を前にすると緊張していたのだ。だからある日、彼女の同僚が急に、「彼女と一緒にお茶を飲んでくれ」と言った時には、この人は一体何を言っているんだろうと脳が混乱した。
たぶん、数十秒は言葉を発せなかったような気がする。それでも、こんなチャンスは二度とないと思って、ぜひと言ってテーブル席に座った。
真正面から見る彼女は、初めて見た時に本を読んでいた姿と同じ、知的で真面目そうで、でもその瞳は面白いことをいつも探していた。
そして何より、僕に好感を持ってくれているのが分かった。僕たちは彼女の同僚が呆れ果てるまでお喋りをした。

ここで彼と彼女の回想している時が重なります。
ある意味正式な”出会い”がここなので、そこを考慮して重ねていきます。

【始め有るものは必ず終わり有り】
昔の人は本当に正しいことを言う。正論ばかり言う。正論は時に意地悪だとさえ思う。
私と彼の始まりは、それはそれはとても美しいものだった。ギターを弾きながら歌う彼は本当に綺麗で、夢の中から出てきたようで、一分の隙もなかった。
その姿を見たときに、ただ話が合って可愛いなと思っていた彼に、私は一瞬で恋に落ちた。そして彼も同じ気持ちでいることに私は本能的に気づいていた。
それからの私たちは、カフェで彼が楽譜を書きながら私の仕事が終わるのを待っていたり、雨の日の図書館で待ち合わせをしてそれぞれ好きな本を探して見せあったり、川沿いの道をサイクリングしたり、雑貨屋で私が気に入ったグラスをお揃いで買ったり、普通の恋人たちが過ごす当たり前の四季を過ごした。
一緒に過ごす時間が多くなればなるほど、私は彼が「愛している」と言わないことが気になりはじめた。小さなライブハウスで歌う彼に、熱狂的なファンが沢山いることも気になりはじめた。
でも、その独占欲と我が儘を彼に悟られないことを、私は一番気にした。
そう、とても注意深く、私は彼のことを愛した。愛したつもりだった。

最終的には「すれ違い」「別れ」が着地点の物語なので、幸せな描写の中にも少しの不穏を入れていきます。
そして彼女が彼を真剣に愛していたこと、守ろうとしていたことをバーンと書いちゃいます。
起承転結の”転”と同じように、登場人物の心情の吐露が一回はあったほうが緩急がつきます。

*おまけ:グラスを買ったという描写は『Film out』の”並ぶ二つのグラス役割果たすこともなく”へのオマージュ

「どうして愛してるっていう歌詞を書かないの?」
彼女にそう聞かれたことがあった。
その時は愛しているという言葉はあなたにだけ使いたいのだと言いたかったが、照れ臭くて言えず、実際、彼女に対しても愛していると言ったことがないことに気づいて、そっけない返事をしてしまった。
愛していると言えないのは、彼女にいつか愛されなくなることが不安だったからだ。
小さなステージに上がる僕を、熱心に見つめてくるのは彼女ではなくファンの子たちで、彼女はどこか冷めたような、そう、初めて図書館で彼女を見つけた時みたいな、真面目で気難しそうな顔をして僕を見つめていた。
きっと彼女は僕が思うほど、僕のことを好きじゃないのかもしれない。僕たちの間にはそうやって少しずつ行き違いが生まれていった。
愛されなくなるかもしれない恐怖から、僕は彼女に別れを切り出した。

ここでまた冒頭の描写に繋がります。
そして、ずっと書いてきた彼の臆病で恥ずかしがり屋で繊細な性格と、彼を想うあまりに本音をぶつけられずに冷静を装い続けた彼女の性格が、2人の関係を終わりへと導いてしまったことが分かります。

彼と別れて三年。好きな飲み物はなんですか? その質問に、私は「ホットチョコレート」と答える。それを聞いた人は大抵、甘いものがお好きなんですね、と笑う。
この間、偶然テレビを見ていたら、彼が同じ質問に同じ答えをしていた。私の愛したホットチョコレート君、あなたが歌う姿をこうやってまた見ることができて、私はとても嬉しいよ。

短編(掌編)小説なので、もう一気に終わらせるために、時間を送ってしまいます。ちょっとこれは荒療治というか、丁寧ではないです。
お勧めはしません。

ここで、彼女は”偶然”テレビを見ていたら、という風に、格別に彼のことを未練に思っているわけではない風で言いながらも、好きな飲み物を(おそらく男性に)聞かれた時に「ホットチョコレート」と答えてしまうくらいには彼のことがまだ忘れられないでいる矛盾を示します。

彼女と別れて三年。好きな飲み物はなんですか? 雑誌やテレビのインタビューでその質問をされる時、僕はカフェのカウンターの前に立ち、緊張しながら彼女にホットチョコレートと言ったあの雪の日の自分に一瞬で戻ってしまう。そして笑顔で答えるんだ。
「ホットチョコレートですね」と。

終わり

今では有名になった(らしい)彼も、同じようにまだ彼女のことが忘れられないでいることが分かります。
初めて会ったのが「初雪の日」ということもあるので、著者としては、この後どこかでまた運命が交差していくんじゃないかなーという余韻を残しております。

はいっ!終わりです!!!

ゼェハァ…(ちょっと疲れた)

ごめんなさい、後半雑になりました。
えっと、こんなふうに自分の書いたものに解説をつけたことがないので、ちょっと疲れたwww

需要があるのかさっぱりわからないですが、楽しかったです。
楽しんでいただけた人がいたら嬉しいです。

文章教室はきっとこんな風にはやらないけど、いつかできたら楽しいかなーと思っています。

ではでは、また!

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