【掌編小説】記憶の香り
その店に行くには、城壁を右に見ながら、ゆるやかにカーブした道を進み、営業しているのかしていないのか分からない貴金属屋と、最近流行っているテイクアウト専門コーヒー店の間の道を左に入る。
貴金属屋の薄暗い店内をちらっと盗み見ると、ガラスケースのカウンターの後ろで店主のおじいさんがスマホを見ているのが見える。
その道を進んで3本目の通り、通りと呼ぶのもためらわれるくらいの、人が一人通り抜けられれば良いような道を右に曲がる。
その細い道は民家と民家の間にある。そのため、道だとわからな